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婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~  作者: みみみ.com


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EP:28☆乙女はヤキモチ妬くんです!


レオ様にお庭から手を引かれてお屋敷に戻った私は、廊下にある大きな窓に頬杖を着いてぼんやりと窓の外を見つめていた。


じーっと、レイヴン公爵邸の大きな門を見ながら、ぽつりと呟く。



「ギル様、帰ってくるの遅いなぁ……」



そんな私の呟きは廊下にすぅーっと、吸い込まれていった。



はぁー……こんなに遅いなんて、そんなに楽しくお喋りしているのかなぁ……



そんな事を考えていると、ため息がとまらない。


モヤモヤとしながら、ギル様を待つ時間はあまりにも苦しくて、それは果てしなく続く永遠のようだった。



それからどれぐらいの時間が経っただろうか……飽きずにひたすら、門をじっと見つめる。


すると、ずっと待っていたレイヴン公爵家の馬車が入ってきた。



「あっ!ギル様だっ!!」



恋する私は、あんなにもモヤモヤしていたのに、ギル様が帰ってきたかと思うと嬉しくて顔が緩む。


張り付いていた窓からさっと離れると、早く顔が見たくてるんるんで玄関に向かった。



玄関に向かうといつも通り、圧倒的なオーラを纏うギル様が歩いているのが見えた。



神々しいなぁ!!かっこいい〜っ!!

驚かせちゃおっかなぁ〜!!



なんて、思いながら後ろから、体当たりだー!とギル様に一直線に走っていく。



「ギル様ぁぁ!!!おかえ……え?」



嬉しくて駆け寄った、その時だった……


ふわっとギル様からにおうのは、どこか上品な女性らしい香りだった。



いつものギル様を纏う安心するような心地のいい大好きな匂いじゃない……。


……女の匂い……っ!!!!



その瞬間、るんるんだった気持ちが、一瞬で急降下していく。



ねぇ……どんだけ近くにいれば女の匂いなんてつくわけ……?!?!?



その匂いについて考えれば考えるほど、ムカムカとしてきた私は、自分が今男装執事姿で「リオ」だと言うことも吹き飛んで、ふるふると体が震え出す。



「……ギル様……」


「あぁリオか、どうした?」



私の声に気づいたギル様が私に振り返る。


私は怒りと嫉妬で震えながらギル様に近づくと、女の匂いを放つ上着に手をかけた。



「は?……なにをしている?」



上着に手をかけた私に驚いているギル様を無視すると、思いっきり上着を引っ張って剥ぎ取った。



「こんな女の匂いがする上着なんてこうしてやるわぁぁー!!!!」



とても高級そうな上着をぐしゃぐしゃにすると近くにあった窓に思いっきり投げた。


窓から飛び出していった上着を唖然とした顔で見つめるギル様。



「お、お前……は?」



驚いているギル様を無視して私は、涙をこらえて睨みつけながら叫ぶ。



「ギル様の浮気者おおおぉぉぉーっ!!!!!最低最悪です!!」



私の大声が廊下に響き渡った。


そして、綺麗な青い瞳を丸くさせてるギル様に最後に言い放つ。



「ギル様なんて大嫌いっ!!!」



そして、私は思いっきり玄関の扉を開くと涙をこらえて走って逃げた。



バカバカバカバカ!!

ギル様のバカ!!!!



後ろからは、焦るギル様の声が聞こえてきた。



「おい、待て!!!リオ!!!」



お屋敷を飛び出して、庭園の奥へと逃げ込んだ。


綺麗なバラが咲き誇る植え込みに、身を隠すように座り込んで涙を拭った。


頭の中はさっきの女の匂いでいっぱいだった。



なによ……頻繁にお茶会に出かけると思ったら、あんなに女の匂いなんてつけて帰ってきちゃってさ……


どんだけ仲良くなってるのよ……


私の事なんてもう忘れちゃったの……?



悔しくて悲しくて胸がちくちくとして、流れる涙を袖でゴシゴシと何度も拭った。




すると、うずくまる私の視線の先に綺麗な靴が近寄るのが視界に入る。



「リオっ、そんな顔してどうしたの?」


「……へっ」



ハッとして顔をあげると、そこにはプラチナブロンドの髪の毛を揺らして綺麗な顔で私を見つめるアル様が立っていた。



「ア、アル様……どうしてここに……?」


「今日はギルのお茶会の護衛だったからねぇー、馬車の荷物の整理をして屋敷に戻ったらリオの怒ってる声が聞こえたからびっくりしたよ」


「……き、聞いてたんですか?!」


「そりゃあ、あんな大きな声で怒ってれば聞こえるよ……ふふっ。


お取り込み中だったから、扉の外で待ってたんだけど、リオが走っていくから追いかけてきたんだけど……泣いてたの?」



そう言って首を傾げて優しく笑うアル様は、私の目線に合わせてしゃがみ込んだ。


そして私の顔にそっと手を添えると目元をすっと撫でた。



「リオに涙は似合わないよ……すっごく悲しそうな顔してる」


「な、泣いてないですっ……!!」


「ふふふっ、涙をつけて何を言ってるの?」



アル様は、少しだけ切なそうに笑うと私の目元の涙を拭うとすっと手を離した。



「……ねぇ、リオをそんなに悲しませるのに、ギルのどこがいいの?」


「そ、それは……」


「いちいちリオのことを悲しませたり不安にさせたり……ギルのことで悩むなんて時間の無駄だよ……ねぇ、リオ?」


「……うぅ……なんですか?」



アル様が私の手を優しく握ると、アル様の胸元に手を誘導される。


不思議な顔をする私の目を見つめてにっこりと笑う。



「……やっぱり、俺にしときなよ」


「……え?」


「俺だったら絶対に不安にさせないし泣かせないよ?君が暴走してもなんだって全部笑って許してあげるし受け止めてあげるよ?


……ねぇ、これでもあいつがいい?」



アル様の瞳は、とても綺麗で真剣で……、胸元にある私の手にはドキドキとアル様の胸の鼓動が伝わってくる。



けれど……、私の脳裏に浮かぶのはやっぱりギル様で……


私は俯きながら小さな声で本音をこぼす。



「……むかつくけど……やっぱりギル様が……好き、みたいです」


「……はぁ」



私の言葉を聞いた瞬間、アル様は切なそうにため息を吐く。


そして、私の手を一瞬だけきゅっと握ると力なく笑って、ゆっくりと私の手を離した。



「……俺の前でそんな風にあいつのことを好きだなんて言わないでよ……。悔しいなぁ……」



アル様は、微妙な顔をしながら何かを考える素振りを見せると、何かを思いつき悪戯っぽく目を細める。


そして、私の顔を覗き込んできたアル様。



「そうだ、リオ。むかつくなら、仕返しに行かない?」


「え……?仕返し……ですか?」



キョトンとする私に、さっきまで切なげだったのに、なんだか楽しそうにくすっと笑うアル様。



「実はね、次のお茶会の予定も俺は護衛なんだよねぇ……リオも俺の付き添いってことで一緒に来るかい?」


「えっ!!私も行っていいんですか?!」


「いいよ、あいつがどんなことをしているか直接見ればいいよ。


……それとも、怖くて見られない?」



アル様は挑発するように、意地悪に笑うと私を見つめる。



私の答えは決まっている。


……やってやる!!!

直接この目で確認してやる!!!



私はアル様の挑発にメラメラと燃えてきた。



「……絶対に行きます!!!!」


「ふふっ……いい意気込みだね?じゃあ、次のお茶会まで二人の秘密、だね?」



アル様は悪戯にふっと笑うと、最後に私の頭を優しく撫でて、立ち上がる。



「じゃあ……楽しみにしててよ。もう泣いたらダメだよ?リオが笑顔が一番可愛いよ……じゃあ俺は行くね、またねリオ」



そして、いつものように優しく綺麗に笑うと手をひらりとふって去っていった。



私はさっきまでの悲しい気持ちはどこへやら……。挑戦状を叩きつけられたような気分になりメラメラと燃えていた。



やってやる!!!!


浮気をしているのかしていないのか、私がこの目でしっかりと見てやるんだからっ!!!


覚悟しててよねっ!ギル様っ!





───その頃、お屋敷に先に戻ったアル様は誰もいない窓辺でぽつりと独り言を呟いていた。



「……あーぁ、俺も本当しつこいよねぇ。


ギルと王女様の姿を見て、リオがギルから俺に乗り換えてくれないかなぁ?

……なんて、最低だよね……。


あんなに可愛い顔でギルが好きだなんて言われたら……妬けちゃうじゃん」



一人窓に寄りかかりながら、胸の中に渦巻く嫉妬と戦うアルの独り言が、薄暗い廊下に消えていくのだった。



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