EP:20☆リオの限界とロキさん!
ギル様の部屋を出ると私は着替えのために自分の部屋に向かって歩いていた。
顔がまだ熱い気がして歩きながらおでこを触ると、なんだかまだ熱かった。
「おでこにキスのせいだ……」
男同士だとそれぐらい普通なの……?
まぁ、レオ様にしろと言われれば喜んでハグしておでこキスできちゃう……
もしかして……そういう事?!
私が可愛い弟に見えてるのね〜っ!!なるほどね〜っ!あぁ見えて私と一緒で弟みたいな子が好きなタイプなんだぁ〜っ!
「考えすぎちゃって頭がズキズキしちゃったじゃんっ!でももう解決〜っ!」
解決した私はるんるんで部屋に戻ると、シワシワになってしまった服を脱いで新しい執事服に着替える。
最後に鏡で全身を確認した。
けれど、鏡に映った自分の顔にギョッとする。
鏡に映る私は、目がとろんと潤んでいて、顔が真っ赤になっていた。
「えっ……顔赤過ぎない?おでこキスのせい?え?!私もうドキドキなんて…してないよね?!あれ?少しドキドキというよりドクドクしているような……
……まぁいっか!」
自分の異変に深く考えず、私はいつも通り気合を入れる。
「よしっ!今日からギル様復活したし、私もお仕事開始ねっ!とりあえずギル様の朝食取りに行かなくちゃね〜」
元気よく廊下に出て食堂にむかうと、なんだか頭が更にズキズキと痛む気がした。
いたたたっ……あれれ……。
ここ数日自分の部屋で寝てないからかなぁ?
流石の私も疲れてるのかも……。
頭を抑えながら疲れてると自覚した瞬間
「……あ、あれ……」
もうすぐで食堂だと言うのに足元がグラグラとする。
「あ……や、やばい、かも……」
ここ数日、ギル様を絶対元気にするぞっ!!と、アドレナリンが出まくってた私は、部屋に戻らないどころかまともに寝てなかったことを思い出す。
その瞬間、私の視界はぐにゃりと歪み、目の前にある食堂や厨房たちが二重に見える。
やばい……アドレナリン切れたか、も……
目の前がぐるぐるとしてきて自分が立っているのか、なにをしているのかさえもわからなくなる。
そして、視界が真っ暗になっていった。
「……あ……おわった」
☆.*˚
ロキside
厨房でいつも通り朝食の準備を終えると、廊下からガタンッと音が聞こえて、次第に騒がしい声が聞こえてきた。
「──リオ殿!リオ殿!!大丈夫ですか?!」
「どうしたんだい?朝から騒がしいけど……」
気になった俺は廊下に顔を出すと、そこには数人の執事に囲まれた床で、顔を真っ赤にさせて倒れているリオくんがいた。
リ……リオくん……?!
「あ……ロキ殿!!リオ殿が急に倒れられた!」
俺は慌てる執事たちを退かし、リオくんの元へ近寄るとその体を抱き起こした。
荒い呼吸を繰り返し真っ赤な顔をしているリオくんの体は、ものすごく熱を持っているのがわかった。
はぁ……やれやれだね……。
ここ数日、公爵様の看病を一生懸命頑張っていたからなぁ……。
無理しすぎだとは思っていたけど、ツケが回ってきたようだね。
俺の口からはため息がこぼれた。
俺は、自慢ではないけれど、とても女性たちに人気がある。そのせいか、リオくんを初めて見たときにすぐに気づいていたことがあるんだよね。
リオくんは女の子だろう、ってね。
俺からしたら男になんて全然見えないからねぇ……、なんと言っても顔が可愛いよね。
この屋敷の男共はまったく気づいてなくてその鈍さに本当にビックリするよ。
たくさんの女性を見てきた俺からしたら、可愛いらしい顔に華奢で細い骨格、いつも騒がしい君がバタバタと走り回ると体のラインが見える度に、柔らかそうなその体は男では無いのなんてすぐに気づくさ。
まぁ、こんな所で男装してまで働いているんだから訳ありなのは一目瞭然だったから黙っていたけれど……
それにしても……
……この状況は、とてもまずいね……。
うーん……さてと、どうしようか?
俺はとりあえずリオくんの体を抱き上げる。
腕の中で眠るリオくんの体のあまりの軽さと華奢さに、驚きつつやっぱりね……と確信する。
「俺が部屋まで運ぶよ。君たちは公爵様にリオくんの代わりに朝食を運んでくれるかい?
あと、まだ倒れたことは周りに黙っていてくれないかな?俺から伝えとくから」
「かしこまりました。ではロキ殿あとはよろしくお願いします」
リオくんの部屋に向かいながら、考える。
さすがに女の子のお世話をする訳にはいかないよなぁ……、信用できそうな口のかたそうなメイド…………
思考を巡らせていると、一人だけちゃんと仕事ができて信用できるメイドがいることを思い出す。
そして、俺はそこら辺にいるメイドに声をかける。
「あ、そこの君、悪いけどメイドのミアをリオの部屋に呼んでもらえるかい?俺が呼んでるって伝えて?急いで寄越してもらえると助かるな」
「は、はい!かしこまりました!」
ニッコリと笑うと顔を真っ赤にさせたメイドがバタバタと走り去っていった。
メイドたちのそんな反応もいつもの事で気にすることなく、再びリオくんの部屋に歩みを進める。
そして部屋に着き、そっとベッドにおろすと、息が荒く顔を真っ赤にして、熱にうなされているリオくん。
そんな表情を見て少しだけ胸が痛む。
「いつも元気なリオくんも、風邪ひくんだねぇ……」
そう呟くと、リオくんは
「うぅ……あつい……くるし……」
「ごめんね?もう少しだけ我慢できるかな?メイドを呼んでるからその子に着替えさせ……」
聞こえてるか分からないけれど、苦しそうなリオくんに声をかけた、その時だった。
リオくん……いや、彼女が自分の頭に手を伸ばすと苦しそうに茶色の髪の毛を引っ張る。
何をしてるの?と思った、次の瞬間
彼女の頭からは淡いピンクの髪の毛が、はらはらとベッドに散らばって広がった。
「……っ」
元々可愛いらしい顔には、はらはらと落ちるピンクの髪の毛がとても似合っていた。
いつもの茶色のショートカットも元気な感じで可愛いけれど……、なんだろう……長い髪の毛のせいかな?さらに女性らしさが増した彼女は驚くほど可愛いらしい。
さすがに髪の毛まで隠してたなんて思わなかった俺は、リオくんの変貌っぷりに驚いていると彼女は苦しげに顔を歪ませたあと、微かに目を開いた。
その表情はとても魅力的で、目がとろんと潤み浅い呼吸を繰り返しながら小さな唇が開く。
「うぅ……ん……あつい……」
いつもの元気いっぱいな彼女からは想像できないほどに、色気溢れるその姿に胸がドキッと音を立てた。
数多くの女の子を見てきた俺が?冗談だよね?
俺は子供っぽい子はタイプじゃないはずなんだけど……
元々リオくんの顔は可愛いくて好きだけど、あくまでそれはタイプとかではなくて、可愛いらしくていじめたいってだけだったんだけどなぁ……
君はそんな表情もできるんだ?
流石にその顔は反則……困るなぁ……ふふっ
「リオくん……そんなんだと本当に食べられちゃうよ?……俺への嫌がらせかな?」
眠る彼女の頬に手を伸ばし、そっと触れる。
やばいなぁ……こんなはずじゃなかったんだけどね……。
すると
───コンコンッ
扉を叩く音に、ハッとして手を離した。
「…どうぞ」
「ロキ様、お呼びでしょうか?……って、あれ?……ここはリオ様の部屋じゃ……か、彼女はどなたでしょうか……?」
ミアは、ベッドで眠る彼女を見て目を見開きびっくりしている。
「ミア……静かに……。これはリオくんの本当の姿だよ。他のみんなに絶対に言ってはいけないよ?ね?」
俺はミアに微笑み、人差し指を唇に当ててニッコリとそう告げた。




