EP:13☆料理長のロキさんっ!
アル様のあの恐ろしすぎる笑顔を思い出し、私は廊下を走りながら必死に考えていた。
呑気に今日何して遊ぼうかなぁ
なんて思ってたけれど、眠ってすっかり忘れてた。私は昨日「殺すからね」と言われてたんだった。
このままだと、本当にアル様に命を奪われちゃうとか?!
どうしよう!となる頭をフル回転させ、私は前世の記憶からとある素晴らしい解決策を導き出した。
そうだ……っ!同じ釜の飯を食べれば、みんな仲良しって前世でおばあちゃんが言ってた気がする!
うふふっ!おばあちゃん……なんていい言葉を授けてくれたのかしらっ!
これはいける!と、今は亡きおばあちゃんに何度もありがとうと心の中で感謝をした。
よし、そうと決まればアル様と仲良し大作戦決行よっ!
目指すは美味しいお料理が集まる厨房ねっ!
スキップしながらるんるんで厨房へと突撃すると、この屋敷に来た頃に出会った、中性的な見た目の美男子のロキさんが立っていた。
この人は若いけれど、このレイヴン公爵家の料理長をしている。
サラサラの淡いアメジスト色の髪の毛を後ろで緩く一つに結び、目元には色っぽい涙ボクロがある。
すらりとした高い身長からはモテそうなオーラがぷんぷんと漂っていて、屋敷のメイドたちからは絶大な人気を誇っている。
ロキさんは私がバタバタと入ってきたことに気づくと、カウンターに肘をつき綺麗な顔をこちらに向けてにこやかに色っぽく笑った。
出会った頃から全てを見透かしてるような顔をしているロキさんには、女バレしそうで少し警戒している。
「リオくん、どうしたの?お腹でも減ったのかな?」
「ロ、ロキさん……っ!」
「今日も可愛いねぇ、リオくん」
私を品定めするようにじっと見つめてきては、色っぽく笑うその大人の色気には、私のモラハラセンサーが発動する。
モテる男には、要注意!!!
そんな今日も私には大事なミッションがあるというのに、ロキさんは私で遊ぶようにさらに顔を近づけて、耳元で色気のある声を響かせる。
「……女の子みたいで食べちゃいたいなぁ」
色気たっぷりに私を見ると涙ボクロのある目を緩ませる。
「……な、何言ってるんですかっ!ぼ、僕は食べ物じゃないですっ!!!」
「ふふっ、女の子ってのは否定しないの?」
やっぱりこの人、女って気づいてる?!
あたふたと焦る私を見てロキさんは、すべてを見透かしてるような瞳を細めてクスクスと笑う。
「ど、どう見ても僕は、お、男ですっ!!」
「くすっ、本当に面白いねぇー……、ところで、慌ててたけど今日は一体どうしたの?」
クスクスと笑うけれど、一番嫌な話題からは離れてくれたロキさん。
この様子じゃ、なんとかバレてないみたい……よかったぁぁぁ。
と胸の中で安堵すると、さっそく本題を切り出した。
「実は……アル様と仲良くなりたいんです。それで、アル様が絶対に喜ぶすっごく美味しい料理の作り方を僕に教えてください!お願いします!ロキさん!!」
「アル様と仲良くなりたい、ねぇ……。リオくんはアルと仲が悪いの?めずらしいね」
ロキさんは綺麗な淡いアメジスト色の髪を揺らし、不思議そうに首を傾げた。
「僕は命を狙われてるんですっっ!!」
「ふふっ…本当に?リオくん、なんか悪いことでもしたの?」
「し、してないですよぉっ!!とりあえず!助けてくださいよぉっ……!」
私は必死すぎてロキさんの引き締まった腕にしがみつくと、涙目でロキさんをこれでもかと見つめる。
ロキさんはそんな私に目を見開く。
そして、その綺麗な瞳を細めると私の頬にそっと手を添えて、色っぽい声で囁いた。
「……リオくん、その顔は……俺以外の男に見せたら本当に危ないよ?」
「え?何言ってるんですか……?」
「はぁ……まぁいいや……、とりあえずしょうがないね、可愛いリオくんの頼みだから、あいつの好物を教えてあげるよ」
キョトンとする私に、ロキさんはやれやれと笑みを浮かべると話を続けた。
アル様は、ミートパイが好きだとアル様好みの秘伝のレシピを教えてくれることになった。
そこからの私は、生き残るために必死に調理に没頭した。
パイ生地を一生懸命こねると、包丁でお肉や野菜を細かく刻んだ。
その時に何度も指を包丁で切ったり、火を使う時は火傷をしたりしたけれど、なんとか完成させることができた。
出来上がる頃には、私の両手の指には、あちこち絆創膏が貼られていた。
「よくがんばったね、上出来」
ロキさんも出来上がったミートパイを見て優しく笑ってくれた。
これで美味しく食べてもらえれば、きっと仲良し決定ねっ!!
同じ釜の飯を食べると仲良くなれる!!
私は完璧な作戦だと満足していた。
すると
「おい、リオ。こんなところで何してるんだ?」
入ってきたのは、大好きなレオ様だった。
「あっ!レオ様、いいところにきましたねっ!これ僕が作ったんですよ!料理長のロキさんに手伝ってもらって、すっごく美味いミートパイができたんです!」
「はぁ?お前が料理……?」
自慢げにバスケットを見せる私に、レオ様は怪訝そうな顔をする。
私は出来立てのミートパイを一口サイズにちぎると、レオ様の口元へ強引に押し込んだ。
「ほらほらっ!食べてみてください!美味しいですか!?」
「っ!?おっ!おい!!勝手に突っ込むなよって……うん?…もぐもぐ…っ」
レオ様は怒りながらも、私に無理矢理押し込まれたミートパイを食べてくれると、ごくりと飲み込んだ。
そして、驚いたように綺麗な青い瞳を見開く。
「……美味い……。悔しいけど、美味いぞこれ……」
「わぁぁぁい!よかったぁぁ!!」
レオ様に褒められて、嬉しさのあまり思いっきりぎゅうううーーっと抱きついた。
「わっ!?おま……!!だから抱きつくなって……っ!」
「よーしっ!これで準備万端ね!レオ様、ちょっとアル様を捕まえに行きますよっ!みんなでピクニックよーーっ!!」
「へっ?はっ?!……おい!聞けよっ!!」
レオ様の手をぎゅっと力強く掴むとぐいぐい引っ張り、私はお弁当の入ったバスケットを抱えながら元気よく厨房を飛び出した。
私たちを見送るロキさんが
「あははっ、本当に嵐みたいな子だなぁ……アルのやつ、どんな反応するんだろうか」
と、楽しそうにクスクスと笑っていた。




