EP:12☆アル様からの監視っ!
リオside
「ふはぁぁぁあ……!!!た、助かったぁぁあ……!!!」
ギル様の部屋から飛び出すと廊下のど真ん中で、私は自分の胸を押さえて思いっきり息を吐き出した。
本当に生きた心地がしなかった……あのままだったら……私の男装執事ライフは終了するところだった……。
「本当にアル様が呼びに来てくれて良かった……」
アル様に何度も心の中でありがとうと感謝していた、その瞬間
ぐいっと背後から強い力で腕を掴まれた。
驚いて振り返ると、そこにはさっきまでギル様の部屋にいたはずのアル様が立っていた。
「……へっ?!ア、アル様……?」
今の今まで感謝していた相手なのに……
その美しい顔には笑顔が一切なくて、見たことないほど冷たく恐ろしい顔をしていた。
「え……えと?な、何か……っ」
なにやら怒っている様子のアル様は、私の言葉を無視して手を引き、もの凄い勢いで廊下を歩き出した。
な、なにごとー?!?私何かした?!
ど、どこ行くのー?!?!
あまりの強い力で少しだけ手首が痛いけれど……痛いなんて言えない雰囲気に
ぐいぐいと引き摺られるようにして連れてこられたのは、私の部屋だった。
───ガチャンッ…パタンッ
扉が閉まると同時に、目にも止まらぬ早さであれよあれよと驚く暇もなく
私はアル様の力強い両手によってそのまま壁に激しく押し付けられた。
───ドンッ……!!!
「ひゃあっ……っ!?」
背中に走る衝撃に、ビックリして目を見開く。
目を開くと、私の目の前には冷たい瞳をしたアル様の美しい顔……。
「あ、あの……アル様……僕はメイドに呼ばれてるんじゃ……?」
見たことないほどに恐ろしいアル様に、震える声を絞り出す。
すると、アル様はフッと冷たく笑う。
「そんなの嘘だけど?」
「へっ……」
冷たく笑うアル様はあまりに恐ろしくて、私の顔は一気に真っ青になった。
う、嘘……?なんのために……?
色んな疑問が浮かぶけれど、さすがギル様の側近騎士と言うぐらい、纏う空気がやばい。
完全に人を殺しそうなやばいやつだ。と、背中がゾクゾクとする。
「あのさぁ、君。まぢでどこの回し者?」
アル様は私のすぐ耳元に顔を寄せると、低く冷たい声で淡々と私に言い放つ。
「ギルを誘惑して、この公爵家で何を狙っているの?
……次、何か怪しい真似をしたら……わかってるよね?……殺すからね」
シャキン……ッと鋭い金属音が二人の空間に響いた。
「……へっ?」
次の瞬間、私目掛けてアル様の剣が容赦なく振り下ろされた。
う、嘘でしょ?!?し、死ぬ……っ!!!
死を覚悟しながらあまりの恐ろしさに、震えながら目をぎゅっと瞑ると
ガンッ……!!!
私の顔の真横から激しい音が聞こえ、恐る恐る目を見開くと、壁に深く突き刺さる剣が顔の真横でギラリと光る。
あまりの恐怖と剣の威圧感に、私はそのままふらふらと床へ腰を抜かしてへたり込んでしまった。
前世のあんなにトラウマだったモラハラ男が可愛いく見えてしまうほどの衝撃と恐怖がそこにはあった。
床に腰を抜かして震える私を冷たく見下ろし鼻で笑うアル様は、突き刺した剣を壁から引き抜く。
そして、最後に酷く冷めた声で
「……覚悟しててね」
それだけを言い残すと、アル様はすらりとした背中を私に見せると、静かに部屋を出ていったのだった。
アル様が部屋を出ていった後、長い間その場に座り込み放心状態だった。
あまりの衝撃に、夢だったんじゃないか?と考えるが
壁をそっと見上げるとそこには、しっかりと深く刻まれた生々しい傷跡が残っていた。
ひぃぃい!!夢じゃない!!
「…な、何あの人……怖すぎるんですけど……っ!」
フラフラとなんとか立ち上がると、疲れきった私はカツラと執事服を脱ぎ捨てた。
いつもの下着姿のままベッドにどさっと倒れ込み、ふわふわの枕に顔を埋める。
え?もしかしなくても、私って……もの凄くアル様に嫌われてる……!?
真顔で「殺すからね」と言い放ったアル様の冷たい瞳と声が頭から離れない。
私はただ、ギル様の八つ当たりを阻止しようとしただけなのに……
完全にギル様を、誘惑する危険な回し者だと思われてるじゃん……。
なんだか納得できない私は枕に顔を埋めて文句を言い放つ。
「私は本当にただみんなをモラハラから守ろうと思っただけなのにぃぃっ!!
私がいなくちゃアル様だってモラハラ攻撃されて大変だったのよ?!気づいてないの?!」
枕に顔を埋めながら、ジタバタとベッドの上で怒りをぶつける。
けれど、ジタバタすると余計に疲れてきた私は欠伸が出てきた。
「………………まぁ、そのうち私の有難みがわかるよねぇー……ふわぁぁあ……ねむ…い…」
枕に怒りを発散した私はウトウトしてきて
そのうち、みんなに感謝される日がくるかもぉ〜
なんて脳天気なことを考えながら、いつの間にか呑気に深い眠りへと落ちていくのだった。
☆.*˚
ぐっすりと眠り翌朝を迎えた。
───翌朝。
私は欠伸をしながらも、むくっと起き上がると今日もカツラと執事服を装着して、男装執事リオになる。
そして、ギル様の執務室へと向かっている途中で、部屋の前ですれ違った使用人に
「公爵様は今朝早くから、急な公務で数日間お屋敷を空けられるそうだよ」
と告げられた。
えぇ……ギル様いないんだ……。
普通お屋敷開けるって私に、直接言わない?
私だって専属執事なのに……。
でもまぁ……昨日の今日でギル様と顔を合わせるのは、正直気まずかったので少しだけホッとしたけどね……。
気持ちを切り替えるために、手を伸ばしてうーんと伸びをする。
「よしっ!ギル様がいないなら遊び放題ってことだし、今日はなにしようかなぁー…」
自由の身ということで、これから何をしようかと、長く広い廊下を一人歩いていると。
ゾクッ。
な、なんだろう……背中がゾクゾクする。
背後から冷ややかな視線を感じた私は、背筋が凍りついた。
ま……まさかね?
恐る恐る振り返ると廊下の向こうでアル様が、普段通りの優しそうな笑顔を浮かべてこちらを見ていた。
私……!!監視されてる?!
ひ、ひぃぃぃっ!めっちゃ見てる!なにあの笑顔!!逆にめちゃくちゃ怖いんですけどぉおおぉ!!
わ、忘れてたけど、昨日殺されそうになったんだったぁあぁ!!
私はアル様から逃げるように、早足でその場を立ち去った。




