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婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~  作者: みみみ.com


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EP:11☆ギル様は不機嫌?!



リオside



アル様とレオ様と三人で並んでお屋敷の廊下を歩いていた、その時だった。



前方から、圧倒的なオーラを纏った、綺麗な黒髪を靡かせる美しい男性が歩いてくるのが見えた。



げっ……ギ、ギル様!もう公務から戻ってきたの!?



三人で並んで歩いている姿を、その綺麗な青い瞳がじっと捉える。


ズカズカと長い足でこちらに近寄ってくるギル様は、眉をひそめると綺麗な顔を少しだけ面白くなさそうに変えた。



「……お前たち、そんなに仲が良かったか?」


「ギル様おかえりなさいませ!」



私が元気に挨拶をすると、ギル様はアル様とレオ様に視線を配り



「こいつを少し借りるぞ」



とだけ告げ、私の手首を大きな手がグイッと掴む。


そのままぐいぐい引っ張られた私が、連れてこられたのは執務室のすぐ横にあるギル様の私室だった。



ちょ……え?!

なっ…なになになに?!私なんかした?!



全然意味がわからなくて慌てていると、ガチャリと扉が閉まる。


すると、私に振り返り綺麗な青い瞳が私をじっと見つめてくる。



「あのレオが短時間でここまで懐くとは……一体何をした?リオ」



ギル様は私を部屋の壁際までジリジリと追い詰める。


そして、なんだか不機嫌そうな冷たい瞳で私を見下ろしてきた。


突然のふたりきりの空間で追い詰められた私は、心臓がバクバクと激しく音を鳴らす。



「な、何もしてないですよっ!ちょ…ちょこっと、そ、その……そう!お外の空気が綺麗だねってお話ししただけです!」



レオ様とサボったのがバレたらまずい!!と、必死に言い訳をする私の手首を、ギル様は強く握りしめた。



すると、私の手首をつかみ一瞬不思議な顔をするギル様は、私の袖口から覗く白くて細い手首を凝視すると、確かめるように親指でそっと撫でた。



「……やけにお前の腕は細いな?リオ」



ひ、ひぃぃぃぃぃ……っ!!骨格でバレちゃう……っ?!



このままだとまずい!と慌てていると


ギル様は私から視線を逸らし、朝のようにすっと手を離すと離れていった。



……た、たすかった?な、なんだったの今のは……



そして、なぜだかギル様はまた一人で頭を抱えると深刻そうに何かを考え込んでいるようだった。



はぁぁぁあ……なんかよくわからないけど助かったみたい……。

生きた心地がしなかった……。



胸を撫で下ろしながら、私はさっきから深刻な顔で頭を抱えるギル様をジッと見つめる。



そして、その様子に私は、とある心当たりが頭に浮かんだ。



この感じ……ギル様って、お仕事から今帰ってきたばかりよね?

もしかして……疲れて私に八つ当たりをしてるんじゃ!?



私の頭の中に、前世のモラハラ男のことがよぎる。



たしか……そうあの人も仕事でイライラして帰ってきた時は、いつも不機嫌に当たってきたはず。



まずい……このままじゃ非常にまずいっ!



こんなに不機嫌なギル様を野放しにすれば、屋敷のみんなにモラハラアタックで、八つ当たりをしかねないっ!



そして、私は拳をきゅっと握る。



前世の私のようになってほしくない……専属執事としてみんなを守るのよっ!!!



正義感がメラメラと沸き起こってきた私は、意を決してギル様を見据える。



「ギル様っ、疲れた時にはマッサージが一番いいですよっ!専属執事の僕にお任せください!」


「……は?何を言って……」


「いいから、いいからっ!ほらほらベッドへどうぞ!」



私は驚いて固まるギル様の背中を、ベッドに向かって全力で強引に押し込んでいく。



殺られる前に殺るって言葉があるでしょ?それと一緒で、文句を言われる前にやってやれ!!ってことだよね?!



「は?!…おいっ!リオ?!」



焦るギル様を無視して、文句なんて受け付けません!と、無理やりベッドの上にうつ伏せに寝かせると、私はその上にえいっと跨った。



ふぅ……ここまでくれば成敗したも当然よっ!!





☆.*˚





ギルside



「は……?お前、何を考えて……」



突然のことに思考が停止した。



俺のいない間にアルとレオと仲良くなっていたこいつが面白くなかった俺は、少しからかってやるつもりだったが……


細くて白い華奢な手首が目に入ると、どうしても男のものに見えなかった。



その瞬間女?と頭によぎると同時にリリィに重なるこいつ。


リリィに見えると共にまた朝のように理性が崩れそうになる俺は、手を離して離れた。



それなのに……こいつはなにをしている?


信じられないことに俺をベッドに寝かせると俺の上に跨ってきたのだ。



「動き回ったらダメですよ〜っ!じっとしててくださいねぇ〜!ほぐしていきますよっ!」



俺の葛藤を知らないで、上から降ってくる声は、なんとも楽しそうで脳天気な声。



こいつを見てると何から何まで、リリィに似ていて未だに見つからない彼女を思い出しため息が出る。



「えいっ、えいっ!どうですかギル様?気持ちいいでしょっ!」



楽しそうな弾ませる声を俺にかけながらその小さくて細い両腕で全力で体重をかけて押し込んでくる。




そして……また酷い違和感が込み上げる。



俺の背中に乗るその身体は、あまりにも軽すぎる。


さらに、衣服越しに背中を押してくる手は手首と同様にあまりにも小さくて細い。



そして、俺の背中にまたがる足は男と違ってまったく筋肉が付いておらず、柔らかさがある……。



ここまで柔らかいわけがない……よな?



そして、もう何度目か分からない疑問が繰り返される……こいつ本当に男か?



さらに背中の上で呑気に笑いながら、一生懸命に動くリオからは、甘く心地のいい匂いがふわりと漂ってきた。



俺の愛しいリリィと同じ甘い匂い。



女のような感触とふわりと漂う甘い匂いを嗅いでから、俺の脳内は完全に混乱しだしていた。



俺はリオを意識しているのか?


それとも……こいつがリリィにあまりにも似ているから……なのか?



脳天気なこいつから甘い匂いが鼻をかすめる度に、理性を保つためこいつは男だと自分に何度も言い聞かせる……


だけど……どうしてもリリィがチラついて理性がぐらぐらと崩壊しだす。




そして……遂に


俺の理性の糸がぷつりと音を立てて切れる。



「……リオっ!!」


「ふえっ!?わああっ!?」



俺は背中に乗っていたリオの手首を掴むと、そのままベッドの上に激しく押し倒した。



ドサッ……!!!



リオをフカフカのベッドに押し倒す。



驚いたように目を見開いたリオの顔が、俺のすぐ真下にあった。


こうしてみれば、その身体の線は男とは思えないほど細くて華奢だ。


リリィの面影と、目の前の少年の姿が重なり合う。



俺の心臓がドクドクと激しく音を立てる。



押し倒されたリオの顔は、一気に真っ赤に染まっていく。



やはり……この赤い顔……似ている。



俺はリオの両手首を片手でベッドに縫い付け、その耳元に顔を寄せると優しく囁いた。



「……お前は……本当に男か?」



理性を失った俺は、頭の中の葛藤をそのまま口にする。



「……だというなら、男だと言うのに、俺はお前に対しておかしくなってしまったのか……?」



俺の下で真っ赤な顔をして慌てるリオがリリィに重なり、俺はフッと笑って見下ろす。



このまま、こいつの中身を確かめてしまえば……



リオの執事服に手を伸ばした



その時だった。




───コンコンッ、ガチャッ。



「ギル、ちょっといいかい?


………っておや、取り込み中だったかな」



その声に顔をあげると


部屋の鍵を開けて入ってきたのは、貼り付けたような笑みを浮かべたアルだった。



……こいつ


「……ちっ……アル」



俺はリオの上からゆっくりと身体を退かすと、アルを睨みつける。


解放されたリオは、ガバッと起き上がってベッドの隅へと逃げていく。



「リオ、下で君をメイドが呼んでいるよ。急ぎみたいだから、早く行っておいで」



アルがリオにそう伝えると、リオは俺の顔を見る余裕もない様子で顔を真っ赤にさせたまま



「は、はいっ!失礼いたしますっっ!!」



と逃げるように部屋を飛び出していった。



───バタンッ


と重い扉が閉まる。



その音を聞いたアルは、あからさまに呆れ果てた顔をして、俺の座るベッドの上にドサリと座り直し、俺を冷ややかな目で見つめてきた。



「……なぁギル。いくらリリィ嬢が見つからなくて焦っているからって、流石に血迷いすぎじゃないかい?相手は男のガキだよ。一体何をしているんだ……」



あと少しで……正体がわかるかもしれなかったのに……こいつ……。


わざと邪魔しに来たな……。



「…ちっ…うるさい。お前には関係ない」


「はいはい……邪魔して悪かったよ」



そう言ってまったく悪びれてないアルは、ヒラリと手を挙げると颯爽と去っていった。



あいつも何を考えているかわかんない男だ。



はぁ……あと少しだったのに……クソッ。



俺は誰もいなくなったベッドにドサリと倒れると腕を顔に乗せ、一人小さくため息を吐いたのだった。



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