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バケモノ女子s  作者: 一乗寺らびり
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第32話:古代文明文字

「ここが我が帝国が誇る、古代文明専用の記録室だ」

 皇帝に案内され、俺たちはコンピュータが大量に設置されている部屋に通されていた。異世界の記録室というと、漫画とかで見るような大図書館のイメージがあるが、さすが機械の国、コンピュータで記録を管理しているようだ。

「すっごーい……こんなところ、初めて入った」

 セリナが興味深そうに辺りを見回している。コンピュータが珍しいようだ。

「それで、その古代文明の記録とやらは?」

「全てデータベースに保管してある。少し待っていてくれたまえ」

 皇帝は一台のコンピュータを操作し始める。コンピュータは俺の馴染みのあるパソコンよりも、少し古い年代のもののように見えた。モニターが分厚く、丸みを帯びている。確か、ブラウン管というやつだったか。

「これが古代文字だ。各所にある遺跡の壁に掘られているものを、写真に収め保存しているのだ」

 皇帝に促されコンピュータの画面を見ると、石のような壁に何やら文字が掘られている写真が写っている。

「どう?ショウタ、読める?」

「……うん、読める。これには『原初の神イヴ』って書いてある」

「なんと!?」

 皇帝が驚いたように声を上げた。

「『原初の神イヴ』は、我々がようやく解読した一文に出てきていた単語だ!本当に読めるのだな!」

 突如、皇帝は俺の手を取り、真剣な眼差しで見つめてきた。

「ショウタ・ミナヅキ!是非とも我が帝国で、その力を役立ててくれないか!?」

「え、え!?」

「アルフォード帝が悪用し、アルフォンス帝が拒絶した古代文明の技術!だが私なら、きっと我が国の民のために、平和的に使うことができる!頼む!私に協力してくれ!」

 皇帝は、頭を下げて懇願してきた。この人は、本当に国の一番偉い人なのだろうか。

「アルカス、だめよ。ショウタは家に帰らなきゃいけないんだから」

「そうは言っても、この力を手放すのは惜しい!もし我が帝国のために手伝ってくれるなら、地位だろうが富だろうが、欲しいものすべてを与えよう!」

 ミラルの静止も聞かず、皇帝は俺の手を離さない。

「私も手伝って!外国の魔導書で読みたいのがあるの!」

 セリナも乗っかってきた。セリナと皇帝、どこか似たようなところがある。

「はぁ、まったく……」

「ミラル、ここは私に任せて」

 そう言うと、アヤメさんは皇帝の肩に手を置いた。

「ディオゲネス帝、十年前の事件の詳細、シファネに伝えてもいいかしら?」

 皇帝の表情が変わる。

「ただでさえ嫌われてるのに、それ以上の敵対心を持たれでもしたら」

「……背に腹は代えられまい。すまなかったショウタ・ミナヅキ、この話はなかったことにしてくれ」

 皇帝が俺の手を離した。どうやら、よほど都合の悪いことらしい。アヤメさんは、交渉周りをやってくれるという名目でついてきてくれたのだが、これはもはや脅迫である。

「セリナもそのあたりにしておきなさい。ニトロに黙ってること、全部バラすわよ?」

「ひえっ……ごめんねショウタ……」

 セリナもしゅんとして黙った。アヤメさん、強い。

「コホン……ショウタ・ミナヅキよ、君が古代文明文字を読めるのはわかった。異世界転移に関わる情報があれば、是非とも持っていってくれたまえ」

「は、はい……」

 しかし、ぱっと見ただけでも、写真のファイルは膨大にありそうだ。ここから必要な情報を探し出すのは、骨が折れそうだ。

「何日かかるかわかりませんが、しばらくここを使わせてください。必要な情報を探してみます」

「うむ!君たちの宿は近くに手配しておこう。いくらでも通い、ここを使いたまえ!」

 皇帝は、大きく胸を張った。セキュリティがかなり弱い気もするが、大丈夫なのだろうか。それほどミラルを信頼しているということなのかもしれないが。

「良かったわね、ショウタ」

「うん!必ず、帰る方法を見つけ出してみるよ!」


※※※


「うう……疲れた……」

 記録室で情報を探し始めて早三日も経っていた。しかし、一向に異世界について書かれている情報は見つからない。コンピュータの画面の見過ぎで、目にかなりの負担がかかっている。

 皇帝が気を利かせて、古代文明文字の解読チームを協力につけてくれているが、それでもまだ見つからない。

 このまま、元の世界に戻る方法が見つからないまま終わるのではないのだろうか。そんな不安がよぎる。

「……そうなったら、どうしようかなぁ」

 アポロニアを出る前、ミラルはそうなったら再び面倒を見てくれると言った。だが、エアちゃんの身に危険が及びやすくなると考えると、アポロニアにはもう戻れない。

 いっそ、このままここで、古代文明文字の解読チームの一員として残るのも有りかなと、一瞬よぎる。

「お疲れ、ショウタ」

 そんな俺の頬に、鋭く冷たいものが当たった。振り向くと、ミラルが何やら缶を持って立っている。

「ジュース買ってきたわよ。少し休憩したら?」

「……ありがとう、ミラル。そっか、もうこんなに経ってたのか」

 時計を見ると、もう四時間も画面に向かっていた。これは流石に休憩を入れないとまずそうだ。

「開け方、わかる?」

「うん、大丈夫だよ」

 ミラルから缶ジュースを受け取り、慣れた手付きで蓋を開けた。やはりこのディオゲネス帝国の文化は、元の世界に似すぎている気がしてならない。

「しかし、全然見つからないなぁ……よく考えたら、アヤメさんも皇帝さんも、可能性があるしか言ってないもんね」

 確実にそういったものがある、とは誰も言ってない。やはり、簡単に異世界に渡る方法などないのだろうか。

「そうねぇ……もし、もしそうなったら、あんたはどうする?」

「今、ちょうどそんなこと考えてたよ。ミラル、やっぱり心を読む能力かなんか持ってるんじゃない?」

「だから、そんなの持ってないってば」

 クスクスと、ミラルが笑う。ミラルとのこんなやり取りも、あと少ししかできないのか、それともずっと続くのか。

「もしそうなったら、もうアポロニアには戻れないだろうし、ここで、お世話になろうかな。皇帝さん、俺の能力欲してるみたいだし」

「そうなったら、たまにあんたの顔見に来るわ。私やエアちゃんに会えなくて寂しくしてないか確認してあげる」

「なんだよ、それ」

 こんなくだらないやり取りでも、不安な今の俺には、十分な安定剤になった。

「……ありがとうね、ミラル。ミラルがいなかったら、俺きっと……」

「そんな今更よ。ところでさ、私コンピュータって使ったことないんだけど、これどうやって使うの?」

「ああ、それはね……」

 この世界に来て、ミラルに何かものを教えるのは初めてな気がする。

 ディオゲネス帝国のコンピュータは、全くと言っていいほど、元の世界にあるパソコンと使い方が同じであった。そのおかげで、一人でも情報捜索作業が進められるのはありがたいが。

 一通りマウスの使い方をミラルに教えて、席を変わる。ミラルは物珍しそうに、マウスカーソルを動かしている。

「へー、おもしろーい」

「変なところ押したりしないでね。データは消さないよう、皇帝さんにきつく言われてるから」

「はいはい。えーと、こうやってファイルを開くんだっけ」

 ミラルが適当に、写真ファイルをダブルクリックする。開かれたのは、まだ確認していないものであった。

「ねえ、これはなんて書いてあるの?」

「これ?えーと、『世界線の狭間に潜む、七色の生命体』……え?」

 七色の生命体。この単語で、あるものを思い出す。この世界に俺を送り込んだ、あの七色に光る何かを。

「ミラル、ちょっと場所変わって!」

「え、急にどうしたのよ?」

 ミラルからコンピュータの前を奪い、画面に映されている写真の文字をしっかりと読んでいく。

『世界線の狭間に潜む、七色の生命体。私達はこれをシェイドと名付けた。彼らは世界線の間を行き来する能力を持ち、時としていたずらに、生物を別の世界線に移すことがある』

「見つけた……」

「え、本当!?」

「うん、多分この写真の中にある!ミラル、お手柄だよ!」

 写真の文章を、更に読んでいく。

『この世界には、シェイドが世界線の転移に使っている穴が存在している。その場所を、次の図に示す』

「次の図……これか!」

 今読んでいる画像ファイルの横にあるファイルを開く。すると、石に掘られた地図のような壁画が現れた。

 これが地図だとしたら、この地形には見覚えがある。アヤメさんに見せてもらった、アポロニア周辺の地図だ。地図には、一つの点がつけられている

「ミラル!ここ、ここから帰れるみたい!」

 喜びを噛み締めながら、地図につけられている点の位置を指差す。

「ここ?ちょっとまって、これって……」

 ミラルが、何やら驚いた顔をしている。

「これって、もし地図なら、この点の位置、私があんたを拾った場所のところよ」

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