ユウナギのスキップ
「タケル大変なのよ!」
ユウナギがタケルに興奮気味で伝えてきたのは、朝の出会った時だった。
タケルがいつもの様に家のドアから出ると、すぐそこにユウナギがいたのだ。
待っていたのだろう。
「どうしたの?ユウナギ・・・なんかいいことあったの?」
『大変』という割に表情が明るいユウナギを見てタケルは『いいことが起きた』と解釈した。
とりあえず、学校に行きながら話を聞くことにした。
「アルフレット様がね!」
「アルフレット様・・・ああ、クレアパパか・・・」
「そう、そのアルフレット様が、今度晩餐会を開かれるの!」
「へー」
「その晩餐会に出席しなさいって言ってくださったの♪」
「へー」
「『へー』ってリアクション薄いわねっっ!」
「だって・・・ユウナギってクレアパパのことを『アルフレット様』なんて呼んでたっけ?」
「なに、なに~、嫉妬~?」
ユウナギが肘でぐいぐいつついてくる。
「相手はマティアス領の領主様なのよ、貴族なのよ!アルフレット『様』でしょう~」
ユウナギはちゃんとマティアスに根付き始めているのだとタケルは感じた。
一方、タケルにとってアルフレットは『クレアパパ』という印象で、彼女のお父さんで気のいい人という印象だった。
「そりゃあ、タケルは準貴族様だっし~、私のような庶民とは違うっし~」
口調や語尾は完全に煽っている。
本気で妬んでいるというよりは、揶揄っている要素の方が大きかった。
「私ね、あっちで自分のやりたいことを見つけてしまったし、みんなも必要としてくれてる。なんか『ヤリガイ』に目覚めたかも!」
「それは良いことだ。羨ましい」
「でも、タケルがいないと私はあっちの世界に行くこともできないから、これからもよろしくね婚約者様♪」
「あ、はい。こちらこそ・・・」
ユウナギは、にやにやとしていた。
その後、ユウナギはタケルと腕を組んだまま小さくスキップしていたし、ユウナギにとって今回の一連のことは、本当に嬉しいことなんだとタケルは理解した。
***
夕飯はユウナギも出席していた。
これまで、平日は自宅にいて週末はクレアの屋敷に泊まることもあった程度だった。
晩餐会までは、できるだけ気軽に打ち合わせなどができるようにと、食堂で一緒に夕食を摂ることにしたそうだ。
「こんなにちゃんとした食事ってあんまり機会がなかったから緊張しちゃう・・・」
「ユウナギ様には慣れていただかないと」
クレアが少しどや顔で言った。
ユウナギの性格を考えて、気後れしないように奮起させたのだろう。
「タケルはまた色々と問題を相談されているんじゃないのか?」
アルフレット(クレアパパ)もタケルのことが心配らしい。
「はい、学校の立ち上げは、教材は着々とできているんですが、教師の育成がボトルネックになってますね。後、生徒集め・・・」
「まあ、最初からそううまく行ったら既に誰かやっているもんだ」
アルフレットは寛大みたいだ。
「中央広場の店舗はどうだ?」
「1店舗ずつ取り組むことで進捗が見えるようになってきたんですが、王女様との打ち合わせが・・・」
「彼女はいつも完璧だからな・・・」
「その他、タザーさんからは売り上げを上げたいと言われてますし・・・」
「はっはっはっ、面白いな、タケルは。でも、何とか出来るんだろう?楽しみにしているぞ?」
「ははは」
プレッシャーは大きい。
「ユウナギは、貴族たちに対して粗相がなければ御の字だ。『知恵の女神』としてニコニコしていればいいだけだ」
「はい・・・」
地味にユウナギにもプレッシャーがかかっていた。
「じゃあ、食事の後、打ち合わせをしよう。タケルとクレアも参加しなさい」
「「「はい」」」
この晩餐会を切っ掛けに3人の関係が変わってしまうのだが、この時は誰もそんなことは予想していなかった。
明日の更新も朝6時です。
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