文化の違いと知識の不足
クレアの部屋のテーブルには豪華なティーセットが準備されていて、クレアがタケルにお茶を入れていた。
タケルはそのお茶を一口飲んだ。
「いかがですか?」
「うん、おいしいです。それと、お茶を入れている所作のひとつひとつがきれいで・・・こんな人が僕の婚約者で本当にいいのか、ちょっと心配になったほどです」
「タケルさん・・・あの・・・その辺で・・・」
気付けばクレアが真っ赤になって顔を背けている。
タケルとしては、まだ視線と真剣な顔について伝えたいと思っていたが、止められてしまったので、それ以上口にしなかった。
「その・・・思えばわたくし、ずっと一生懸命でした・・・」
「・・・はい」
「でも、どこか空回りしていた気がします」
「そうですか?クレアさんはいつも完璧でしたよ?」
「わたくしもできるだけ完璧でいようと心がけていました・・・でも、欠陥に気づいてしまって・・・」
「クレアさんに欠陥!?可能であればどんなところか教えてもらえますか?」
「・・・あまり積極的にお話ししたくはないのですが・・・タケルさんにも関係する部分があるので・・・お話します・・・」
クレアは座って下を向いて小さな声で話し始めた。
「その・・・今後夫婦として生活するときに・・・関係するのですが・・・」
「はい」
「その・・・タケルさんに触れられると・・・変な声が出る・・・病気というか、体質というか・・・」
珍しく歯切れが悪く話している。
タケルは焦らせず、しっかり話を聞こうと思った。
「声・・・ですか?」
「はい・・・魔物みたいな、動物みたいな・・・恥ずかしいです・・・」
クレアは真っ赤になってしまった。
恐らく喘ぎ声のことを言っているのだろう。
タケルにとっては、そういった行為に及べばそれなりの声が出るのは当たり前だった。
ただ、ビデオも動画もネットもないこのマティアスで他人の性について情報が少ないのだろう。
それで自分について『異常』と判断してしまった・・・と。
そう言えば、大昔、英国でも整理についての知識が世に広まっていない時に、初潮を迎えた女の子が梅毒と勘違いして自殺した事件があったという。
「あの・・・クレアさん、ちょっと見てもらいたいものが・・・」
「はい・・・何でしょう?」
「日本では、性交渉の動画がありまして・・・」
「・・・日本では随分革新的に性に対して開放的ですね・・・」
「いや、別に開放的って訳じゃ・・・むしろ閉鎖的だよ」
「本を買うときはこそこそ買わないといけないし、ビデオは別のブースに分かれていたり・・・」
「そもそも人の目に触れる状態でそんなものが存在するのが・・・マティアスにはない考え方ですわ」
「そうか・・・そうかも。でも、これを見てくれたら、クレアさんが変じゃないってことを理解してもらえるし・・・」
「・・・わかっ、分かりました。拝見しましょう」
***
「わたっ、わたっ、わたくしは、不勉強だったようですわね・・・」
クレアは顔が真っ赤になっている。
熟れた果実にも負けない程真っ赤だった。
「それで、その・・・一番大事なことをお尋ねしますが・・・」
「はい、何でしょう?」
「わたくし・・・アリでしょうか、ナシでしょうか?」
「アリ・ナシで言ったら・・・」
(ごくり)
「大アリです!」
パーッとクレアの表情が明るくなった。
(トントン)「失礼します」
ちょうどシャルが入ってきた。
入室して、すぐにタケルとクレアの顔を交互に見て、頭を深々と下げ言った。
「仲直りおめでとうございます。タケル様におかれましては、私の知らないお嬢様のかわいいところを発見されたご様子で、大変妬ましいです。今度こっそり教えてくださいませ」
「シャル!」
クレアが照れ隠しに怒って見せた。
タケルは、シャルから言われて、どこだろうと考えたいた。
昼間は『少女』、夜は『妖女』の様・・・いや、ちょっと待った。
昼は『幼女』、夜は『妖女』・・・最高じゃないか。
・・・タケルよ、なぜ言い直したのか。
『幼女』が何歳までを言うのかは不明だが、クレアは『少女』かもしれないが、『幼女』ではないだろう。
単に韻を踏むために間違った思考の方向に進んでいるようだった。
「タケルさん、これからもわたくしを可愛がってくれますか?」
クレアが上目遣いでタケルにお願いする。
「も、もちろんです!」
全然、気の利いたことは言えなかったが、シャルの目も気になったし、一生懸命答えた結果がこれだった。
とりあえず、本人たちが良い様なので、まとまったようだ。
明日の更新も朝6時です。
よろしくお願いします。




