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シャルとローレットの抗議

夕食後、タケルは無言の圧力を感じていた。

いつもはタケルの身の回りのことをローレットがしている。

食後、部屋に戻るとお茶を入れに来るのはローレットの仕事だった。


ところが、今日に限って、ローレットに加え、その上司あるシャルまで同席しているのだ。

お茶を入れるのは技術が必要なことだ。


しかし、言ってしまえばお茶を入れるだけ。

2人も必要な作業ではない。

しかも、新人の侍女ならばまだしも、何年も務めているローレットだ。

同行など本来必要ないはずなのだ。


タケルはテーブルの椅子におとなしく座っている。


「あのー、シャルさん?何で今日は2人なんですか?」


いつもの様に無表情のシャルが珍しく手を止め、タケルの方を見て答えた。


「タケル様が騎士になられてから、まだちゃんとお祝いを申し上げていなかったと思いまして・・・」


シャルとローレットは作業で持っていたものを一旦全てカートにおいて、タケルの方を向いた。

そして、2人とも深々と頭を下げ、『タケル様、叙爵じょしゃくおめでとうございます』

と祝いの言葉を伝えた。


「ありがとうございます。できれば、その・・・いままでどおりで・・・」


「お気遣いありがとうございます」とシャルが頭を下げた。

それをみて、慌ててローレットも「ございます」と言って続いた。


「もう、勘弁してください。今日は・・・その・・・抗議に来られたのでしょう?」


タケルは申し訳なさそうにシャルに聞く。


「私どものような侍女の分際で準貴族であられるタケル様に意見を申し上げることなど恐れ多いことです」


「すいません!反省していますから、いつも通りに話てください・・・その・・・悪気はなかったのですが、あとでクレアさんに謝りに伺おうと思っていたくらいで・・・」


「お嬢様にどのようなことで謝罪に行かれるおつもりなのでしょうか?」


「その・・・クレアさんを見ているとかわいくて・・・つい・・・抱きしめてしまって・・・あ!その過激なことじゃなくて、スキンシップ的な感じなのですが・・・」


「タケル様にとっては『スキンシップ』だったかもしれませんが、お嬢様にとっては色々な意味で一生忘れられない体験だったようで・・・」


「え!?そんなに!?・・・僕・・・何しちゃったんだろう・・・」


タケルに任せていたら、主人が壊されてしまうとシャルは真剣に思った。


「タケル様、お伝えしたいことがあります」


***


30分後



「クレアお嬢様はリビルルド豆が苦手だけど、残すことはしないので一生懸命食べるのですが、その時目をぎゅっとつぶって食べるしぐさが最高にかわいいのです!」


「うわ!それはかわいい!」


「そもそも私がよそわなければ、お嬢様は食べる必要がないのですが、意地悪してしっかりよそいます」


「シャルさんいけないメイドだな!?」


何故かシャルがキリッとして表情をしたような気がしたが、見た目にはいつも通り無表情だった。

そして、目はいつも通り眠たそうだ。


「僕もクレアさんのかわいいところを知っていて、街を一緒に歩いているとき、僕と身長差があるから、上を向いて話すんじゃなくて、上目遣いで話すんだけど、それがまたかわいくて!」


「お嬢様の上目遣い・・・想像しただけで鼻血が・・・」


「ついついその表情が見たくて、あんまり用事がなくても話しかけちゃって・・・」


「ぬうっ、タケル様やりますね・・・」


「シャルさんこそ異常なほどクレアさんが好きですね」


「私はお嬢様が赤ちゃんの頃から面倒を見させていただいてますので!」


「ううう・・・そこは勝てない・・・僕は婚約者ということくらいで・・・」


「私はクレア様の専属侍女ですから、クレア様がどなたとご結婚されても一生ついてまいります」


「なん・・だと!?僕は確実にクレアさんを嫁にするしか対抗手段がないのか!?」


2人の何だか分からない攻防(?)はもう30分以上続いていた。


「先輩、もう戻らないと・・・お嬢様もお呼びかもしれませんよ?」


「はっ、そう、そうね!」


シャルが周囲を確認すると仕事はすっかり終わっていた。

ローレットがテキパキと片付けていたのだ。


「はっ!持ってきたお茶セットもない!」


「それはもう20分以上前に片付けてしまいました」


「ローレット、成長したわね」


「ありがとうございます」


今度はタケルの方を見て言った。


「タケル様、お嬢様にあまり過激ないたずらはお控えいただけると・・・夜伽をご所望でしたら、私やここにいるローレットが僭越ながらお相手させていただきます」


「あ、いやいやいやいやいや。そんな滅相もないです!それに、僕はクレアさんじゃないと・・・」


「それを伝えたら、また主人がベッドの上を転げまわって喜ぶと思います」


シャルは再び頭を下げてお辞儀をした後、ローレット共に引いていった。

一人取り残されたタケル。

どっと疲れが出て、のけぞり椅子の背もたれに体重を預けた。


「ふー、なんかどっと疲れた・・・」


ただ、タケルもこれでいいとは思っていない。

ちょっといいケーキをクレアに持って会いに行くことにした。


明日も更新も朝6時です。

よろしくお願いします。

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