クレアとシャルの反省会再び
部屋に戻ると服を脱がせ、身体中を拭き、着替えをさせた。
胸にキスマークがあったので、お嬢様はきっともう・・・
すぐにベッドではクレアお嬢様の寝息が聞こえる。
このご様子だと昨晩はほとんど眠っておられないのではないだろうか・・・
朝食は急遽中止して、今日は十分お休みいただくように手配した。
珍しく私は怒っていた。
私の大事な主であるクレアお嬢様になんてことをしてくれるんだ!
良い方に見えていたけれど、お嬢様をこんなにしてしまうなんて・・・話次第では見方を改めないといけない。このようなお付き合いをされていたら、いつかお嬢様は壊れてしまわれる。
お嬢様のすぐ近くで目を覚まされるのを待つ。
お目覚めの時にはすぐにお茶をお出しできるように準備をして・・・
起きたらまずはお嬢様からお話を伺おう。
場合によっては侍女としてタケル様に抗議しよう。
相手は騎士、相手次第では、私は投獄されてしまうかもしれない。
それでも、私はお嬢様のために・・・
と、色々考えていたが、見た目にはいつもの無表情のシャルだった。
そして目はいつも通り眠そうなままだった。
*
お嬢様が目を覚まされたのは昼前だった。
「おはようございます。お嬢様・・・お茶はいかがでしょうか?」
「おはよう、シャル・・・いただくわ」
***
「クレア様、昨日タケル様の部屋で何があったのですか?」
(ガシャ)「うっ・・・」
手に持っていたティーカップを落としそうになる。
「昨晩は、マッサージをしてタケル様をぐねんぐねんの骨抜きにしたいとおっしゃって、マッサージの特訓をして出ていかれたではないですか」
「うっ」
「それが、今朝になるまで部屋に戻られず、ご自身がぐっちゃんぐっちゃんになって・・・それも足腰たたずに運ばれて・・・」
「シャル、シャルが、怒っているのは十分伝わったから、あまり主人の心を刃物でザクザク突き立てないで・・・」
「何があったかお聞かせいただけますか?タケル様の過激な性癖ですか!?」
「いえっ、あれは・・・性癖などではなく・・・文化の・・・違い・・・です」
「・・・お嬢様、私にも分かるように説明をお願いします」
既に飲み終わったお茶のティーカップをシャルが引き取って横の棚に置いた。
「うー・・・、昨日はマッサージを始めたのだけれど、わたくしでは力が足りなかったようなのです」
「タケル様が押し倒してきたけれど、押しのけることができなかった・・・ということでしょうか!?」
「いえ、そうではなくて、マッサージで押す力が、です」
「・・・はい」
「そこで、タケルさんが・・・」
「タケル様が?」
「うー・・・」
「お嬢様勇気を出していってください!私ならばどんなことでも受け入れます!そして絶対に口外しません」
「『踏んで』と・・・言われたの・・・です」
「は?はい」
「タケルさんの国では寝そべった人の上に乗っかり、足で踏むことでマッサージをする手法があるのだとか」
「なるほど・・・でも、男性を女性が踏むというのは・・・」
「そうでしょう?未来の旦那様を足蹴にするなんて・・・と思ったのだけれど・・・ただ、できるだけご希望にも沿いたくて・・・」
「適応力がバカになっているお嬢様ですからね」
「もう!・・・それで、せめて足を拭いてから・・・と」
「はあ・・・それで」
「タケルさんが拭いてくれるとおっしゃるので・・・」
「はあ!?タケル様がお嬢様の足を拭かれたのですか!?」
「ごめんなさい!ダメだとは思っていたの!でも、何だか魅力的に感じてしまって・・・」
クレアはベッドに座ったままもじもじしながら続けた。
「タケルさんがふくらはぎを拭いてくれ、足の裏や指の間まで拭いてくださっているうちに・・・」
「うちに?」
「それ以上は言えません!」
クレアは真っ赤になって顔を両手で隠してしまった。
「タケル様のことはお嫌いになりましたか?」
「何を言うの、シャル!?わたくしは、何が何でもタケルさんと結婚します!」
予想外の答えにシャルが目を見開いた・・・はずだが、はた目にはいつもの無表情だ。
そして、目はいつも通り眠そうなままだ。
「あんな経験をしてしまったら、他の方では代わりは効かないでしょう・・・あんな恥ずかしい姿をお見せできるのは生涯でたったおひとりだけ・・・」
「お嬢様?」
「タケルさんがわたしくの足を拭いてくれている間、わたくしの魂はユートピアに行きました」
「お嬢様それは薬物的な・・・?」
「そして、いつしか眠っていました」
「気絶では!?」
「タケルさんが添い寝してくれていて、温かくて・・・。でも、ふと目が覚めると、タケルさんの手がわたくしの胸に・・・」
「ついに本性を現したんですね!?」
「いえ、タケルさんは寝ていました」
「寝ているふりだったでは!?」
「いえ、全然力が入っていませんでしたし・・・」
「それで、どうしてももう一度『魂のユートピア』に行きたくなってしまって・・・タケルさんの手を勝手に・・・」
「お嬢様の方が!?」
「でも、寝ていたタケルさんが目を覚まして・・・」
「ついに、襲われてしまった、と・・・」
「いえ、寝ぼけていました。わたくしの頭をしばらく撫でていたかと思ったら・・・」
「無意識で襲ってきた、と・・・」
「わたくしの胸に顔をうずめてきて・・・かわいかった。タケルさん・・・」
「はあ・・・」
「その後、寝ぼけて一晩中胸を吸われていて・・・」
「最後の最後に飛んでもないことを!」
「わたくしも耐えられずに『魂のユートピア』に・・・」
「なんですか、そのいかがわしいフレーズは!」
「それも、何度も・・・もう、わたくしは名実ともにタケルさんのものに・・・」
「ん?お嬢様?具体的な交わりは・・・?」
「何のこと?」
「お嬢様、恐縮ながらズバリお聞きしますが、ご懐妊されるようなことは・・・?」
「赤ちゃんってこと?そうね、コウノトリさんは赤ちゃんを連れてくるかもしれませんわね」
「ん?んん?お嬢様!?そのコウノトリは比喩的なお話でしょうか?」
「あれだけタケルさんと仲良くしたのだから、コウノトリさんも赤ちゃんを運んできているかもしれませんよ?」
「ちょ、ちょっとお待ちください!?お嬢様!子供ができるプロセスはご存じですよね!?」
「シャル!主人をあんまりバカにしないでくださる?夫婦が仲良くしていたらコウノトリが連れてくるのでしょう!?知ってます!知っていますよ!」
「どうなってるんだ、このポンコツ主人は!?――!!」ということを考えていたが、顔には一切出ずにいつも無表情だった。
そして目はいつも通り眠そうだった。
「お嬢様、どうやら本気でおっしゃっておられるようなので・・・」
シャルがクレアの耳元でしばらくささやき始める。
最初は『何のこと』という顔をしていたクレアだったが、段々と顔が赤くなっていき、数分後には真っ赤になってしまった。
「さて、クレアお嬢様、タケル様とは何かご関係が?」
「いえ、まったく何も起こっていません!」
シャルが数分間でクレアに何を伝えたのかは謎である。
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