タケルの1日(放課後編)
学校は当然普通の授業を受ける。
昼休みは市場のメニューを考えたり、午後の打ち合わせの内容を考えたりすることもある。
ただ、基本的にユウナギとお弁当を食べて、そのあとイチャイチャして過ごすことが多い。
最近はユウナギが異世界での学校立ち上げに前向きなので、打ち合わせの時も多い。
結局紙に書きだして、問題点を明らかにして、1つずつつぶしていくのが早い。
ただ、どうしようもない事柄も出てくる。
そんな時は専門家を見つけてその人に頼るという問題解決方法を思いついた。
何でもないことのようだったが、『他人に頼る』というのは大人でも社会に出てある程度しないと出てこない発想だ。
放課後はユウナギと一緒に帰宅する。
イチャイチャしながら帰っているので、これがまた話題になっている。
■王城・打ち合わせ
タケルの最近の1日では、毎日ではないが、王城への打ち合わせもある。
王城のすぐ近くの王都中央広場近くにある飲食店を次々と立ち上げていく必要があった。
これがなぜか勅令なのだ。
要するに、王様が直接出した命令。
しかも、王女、つまり、王様の娘と直接打ち合わせをして次々立ち上げていく必要がある。
一般高校生のタケルにとってこの『偉い人と会って打ち合わせ』というのが精神的に大きな負担となっていた。
一応王城の中でも比較的雰囲気が柔らかい談話室で打ち合わせは行われる。
ただ、タケルにとってはこの王女アルテーシアが何を考えているかがいまいち分からない。
「お疲れ様です。今日もよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
アルテーシアは静かに椅子に座っている。
表情は穏やかで、少し笑みを浮かべている。
同じくらい偉い人を思い浮かべるとクレアがいる。
クレアとアルテーシアは従妹同士なので、見た目もすごく似ている。
しかし、いつも笑顔で親しみが持て、時々おっちょこちょいなところもあるクレアには愛情を持っていた。
一方で、完璧さが評判のアルテーシアは、仕事もできるし、立ち居振る舞いもいちいち完璧だった。
既に国の仕事にも一部関わっているが、打ち合わせは1人5分とか10分で終わる。
その理由として、アルテーシアは他人の考えていることが分かるという特殊能力があった。
これが分かってしまうと大変なことになるので、アルテーシアは誰にもこのことを話していない。
そう言えば、クレアも見た人間の将来性や人柄が分かる能力があり、それを誰にも話していないので何かつながりがあるのかもしれない。
「今日の議題は・・・」
「はい」
タケルがほぼ一方的に話していく。
ただ、タケルとの打ち合わせはいつも1時間以上に及び早く終わったためしがない。
タケルは密かに自分の段取りが悪いのかと小さく悩んでいた。
話の進め方が悪いのか・・・
タケルはアルテーシアがちょっとだけ苦手だった。
*
一方、アルテーシアサイドから見ると・・・
(タケル様・・・・)
(すっ・・・・・)
(きーーーーーーっ!)
(タケル様、好きー!)
(かっこいい、かっこいい、かっこいい、かっこいい、かっこいいー!)
(あ!目が合っちゃったー!)
(あ、ヤバい、また好きになったかもぉー?)
(ああ、緊張しすぎて背中に汗がびっしり・・・また声をかけてもらって、一旦退室して着替えてから戻ろうかしら・・・)
(あ!今の表情すごくかっこよかったー!!)
アルテーシアは誰も知らないが、内容的にはドポンコツだった・・・
究極的に外面がいいだけのアルテーシアは、立場的に何とかその外面を押し通すことができた。
しかも、「完璧王女」などと噂が流れているので先入観からそんなことを考える者もいなかった。
とどめとして、一人と長時間話していると色々ぼろが出るので、アルテーシアはその能力を最大限に使って、交渉や打ち合わせはすぐに切り上げていた。
クレアはかわいい「ポンコツ」が隠れている程度の理想的な少女だが、アルテーシアは一歩間違うと国がどうにかなってしまう程『ド・ポンコツ』だった。
*
タケルはぐったり疲れて談話室を出た。
『プランAとプランBのどちらにしますか?』という話し方では、リアクションもいまいち分からないし、話も進めにくい。
『こうします。その理由は・・・・』という具合に結論ありきでその理由を固めてから話す方法に切り替えたが、同意が得られたのかイマイチ分からずに、気持ちがすっきりしないでいた。
その後、対応策として議事録を作って後になっても話の流れを終えるようにするのだが、この時のタケルにはそこまでの考えはなかった。
■市場受注・様子見
タケルの(仕事の中では)一番好きな時間はここだ。
市場の様子を見てお店や商品の流行りの傾向を見る。
店もできるだけ1軒1軒回って、話を聞いていく。
商品の受注があるので話しかけるきっかけには困らない。
「タケル!あんたが言った通り塩味をちょっと足したら売り上げが伸びたよ!ありがとね!」
いつもの串焼きの店のおばさんから話しかけられた。
「このエリアは肉体労働の人が多いから、夕方はちょっと塩味が濃い方が喜ばれると思って」
「そうなのかい。すごいね!あたしなんか、朝から晩までできるだけ同じ味にしようとしてたよ」
「その方が安心感はあるんですけどね」
「タケル!お前の新商品の『ホットケーキ』だけどよ!」
今度は強面の焼きそばパン屋の大将から声をかけられた。
「焼きそばパンが昼間しか売れねーから相手時間に『ホットケーキ』を出したんだけどよ」
「そうでしたね。でも、あんまり売れなかったんですよね」
「そうそう!お前が言ったみたいにホットケーキの時だけ娘に店番させたんだよ。そしたら売上10倍よ!すげえな!お前が言ったとおりになったよ!」
「すいません・・・大将ちょっと顔が怖くて・・・」
「普通料理は強面の職人が作ったやつの方がうまそうだろ!」
「甘いものは主に女性が買うので、怖い顔だと買いにくいんです・・・」
「なるほどな。俺も昼間休憩できるようになったし、娘も急にやる気になってな!」
「おお!それは良かったですね!そこまでは考えてなかったです!」
「とにかく、ありがとな!」
「はい」
「そんなわけで、明日からホットケーキ30枚で行くぜ!」
「お!ちょっと強気ですね!」
「おおよ!冷蔵庫もちょっと大きいのに変えてくれよ」
「分かりました。とりあえず1週間くらい様子を見て増加量を見極めましょうか。余ったらもったいないし、足りない時はもっと売り上げが上がるってことですし」
「なるほどな」
「とりあえず大きめの冷蔵庫貸しておきます」
「ありがとな」
この調子で1周回るころには売り上げが伸びていた。
基本的な注文はタザーのところに集まっているので、わざわざ回る必要はないけれど、あえて回ることで満足度もあがり、問題も小さいうちに解決できることをタケルは経験から覚えていた。
■商業ギルド打ち合わせ
市場での日常的な注文は、商業ギルドのギルド長・タザーのところに集まるようになっている。
タザーを通して注文があるので、タケルはそれを取りまとめるだけで受注の作業が終わる。
その分、タザーのところに手数料を落とすので、タザーとしても喜んでやってくれている。
さらに、そこから発生する一部は税金として、領主のアルフレット(クレアパパ)のところに上がっていく。
基本的に注文をもらいに行くだけだが、タザーの悩みもある。
市場全体の売上具合や売り上げが下がっている店の対応、新メニューの考案、それと愚痴を聞く仕事だ。
ギルド長ともなると誰かに愚痴を言いたい物らしい。
タケルは基本的に誰の意見も聞くので色々な愚痴を言うのにちょうどいいらしい。
タケルの1日はまだまだ終わらない。
明日の更新も朝6時です。
よろしくお願いします。




