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タケルの1日(朝編)

タケルの1日は忙しい。

念のために確認しておくと、タケルは普通高校に通う高校生だ。

そのため、朝は学校に通うところからスタートする。


家は祖父が残してくれた古い2DKの1軒屋。

最近では物置と宅配商品の受け取りの場所と化している。


その本人はどこに寝泊まりしているかというと、婚約者クレアの屋敷に居候させてもらっている状態だ。

クレアの屋敷は異世界にあるため屋敷と言っても水道も電気もない。

当然、それに代わるものがある。


水は侍女が毎日「顔を洗う用」「身体を拭く用」など時間に応じて部屋までもってきてくれるようになっている。

それ以外に「お茶の時間」があり、水分摂取に困ることはない。


ここで気になるのは、当然このような生活は庶民のものではない。

クレアの家は国王の弟の家。

つまり、王族ということでもある。

ただ、兄が国を引き継いだため、弟は「侯爵(マティアスでは最高位の爵位)」で領土を管理している。


国王の城周辺以外は基本的にアルフレット(クレアパパ)の領土で、アルフレットがマティアス内を管理、国王はマティアス外を管理している。

全領土に関しては膨大なので、別の機会に案内するとして各エリアには領主がいてとの取りまとめを国王がしている形となる。


そのアルフレットの一人娘がクレア。

婚約したので、ゆくゆくは婿養子にでもなってその家を継ぐことになるのだろう。

そんなこんなで、タケルはクレアの家にお世話になっている。


一方的にお世話になるのは申し訳ないということで、「税金」という形でタケルが稼いでいる収益の一部を収めて(納めて)いる。


タケルは朝食のために屋敷の食堂(アルフレットの家族専用)に来ていた。

ちょうどクレアと時間が合ってしまい、ドアの前で挨拶を交わす。


「おはようございます。タケルさん」


「おはようございます。クレアさん」


立ち止まる2人。

そして、見つめあう。


自然に2人の距離は近づき、タケルはクレアの襟元の美しい金髪に手を伸ばす。

タケルが髪の毛の感触を指で楽しんでいると、少し恥ずかしそうに、顔を赤らめ目を伏せるクレア。


すぐ近くに立っているけれど、存在を完全に『無』にしている侍女のシャル。

全く動かないし、一切の音を立てない。


タケルの顔がクレアの顔に少しずつ近づく。

2人の顔が近づくほど、顔を下に向けてしまうクレア。


タケルがクレアの頬に少しだけ触れると、クレアは目をつぶって自分の唇を差し出す仕草をした。

顔は真っ赤だ。

よほど恥ずかしいのだろう。

それでも、タケルの意図を汲み取ってできるだけ協力しようとしているようだ。


2人の唇が近づくと・・・


「(うおっほん)通っても構わないかね?」


アルフレット(クレアパパ)とマリア(クレアママ)が後ろから声をかけた。

慌てて食堂の扉の右と左に飛びのく2人。


「仲が良くて大変よろしい」


どういう意図なのかそう言い残して、アルフレットが食堂に入っていった。

その後からマリアがにこにこと2人を見て続いて入っていったことから、概ね応援していると見ていいのだろう。


ただ、目の前で娘が男にキスされている姿を見守るほど子離れは出来ていないアルフレットだったのかもしれない。

クレアはまだ12歳。

マティアスでは成人年齢とはいえ、親としてはまだまだかわいい盛りなのだ。


タケルは、『今度から場所を考えよう』とかなり真剣に反省した。


「いこうか」と手を差し伸べるタケル。

「はい」とその手を取るクレア。


こんな感じでアルフレットの家の朝食は始まる。


■学校・授業

タケルが学校に行くには異世界マティアスから現世界(日本)に転移してくる必要がある。

距離が遠いどころか空間的につながっていないのだ。

タケルのチート魔法『ドアツードア』でドアからドアに好きな場所、好きな空間に移動することができる。


タケルは基本的に自分でイメージできるものしか魔法にできない。

だから『お湯を沸かす魔法』はポットがイメージの元になっているし、『火をおこす魔法』は100円ライターがイメージの元になっている。


だからどんな魔法でも作り出せるタケルだが、『ドラゴンを呼び出す魔法』みたいなものはイメージできないのでうまくいったためしがない。


『ドアツードア』だって日常にはないのだが、小さい時から見たアニメの影響でそこに疑問を持たなかったようで、可能となっていた。

結局は『どれだけ思い込めるか』ではないかとタケルは考え始めていた。


『ドアツードア』では学校の教室にいきなり行けば効率的だと思えるが、もう一人の婚約者であるユウナギと一緒に登校するために自分の家のドアから出る必要があるのだ。


ユウナギは、ちょくちょくタケルの家に行く。

付き合い始めてからは毎日一緒に登校しているので、ユウナギだけ先に行くことはないのだ。

ユウナギの家は学校とは逆の方向にあるので、ドアを開けた時にいないときには、家の方に向かって歩いていく。

ユウナギと途中で会ったらUターンして学校に向かう感じだ。


「おはよー、タケル!」


「おはよう、ユウナギ」


今日はタケルの家の玄関の前でユウナギと会ったようだ。

ちょうどそのタイミングでいる訳がないので、待っていたのだろう。


「いこっ!」ユウナギが手を出す。

タケルもその手を取る。


タケルとユウナギは手をつないで学校に行く。

ユウナギは学校では『烏尾高校の奇跡』という中二病的な二つ名を持っているくらい外見的にもかわいいし、成績もよく常に注目されている。


「あ!ユウナギちゃん!」


「あ、ほんと。一緒にいるのが噂の・・・」


朝から色々な声が聞こえてくる。


その注目の女生徒が男と手をつないで楽しそうに歩いていたら、同じ学校の生徒たちに注目されるのは当たり前だ。

ただ、同じ学校の生徒でなくても振り返って二度見する程、人を惹きつける外見なので、一緒に歩いているタケルはいつも緊張していた。


一番にユウナギを見て、次に自分に視線が移る・・・それを何度となく見てきた。

男女共視線を感じるので、『烏尾高校の奇跡』と付き合っているのだから有名税と思うことにしていた。


ただ、タケルは失念していた。

タケル一人で歩いているときも注目されることがあることを。

同じ学校の生徒ならば、『ユウナギの彼氏』という目で見られるかもしれない。

だが、なんでもない人から見られることもあった。


それは、タケルの祖父が亡くなり、その後どこかのタイミングで魔法を含めて何かを引き継いだのだがその能力の一つにあると思われる。


ユウナギは気づいていたが、明らかに筋肉の量が増え、脂肪は減り、身体が引き締まった印象だった。

自分の商売を始めることになったし、冒険にも出た。

死にかけたこともあり、色々な経験から心にも余裕ができたし、場数も踏んできた。


そういった内側からにじみ出る雰囲気もあるのだろうが、劣等感から常に『クレアやユウナギに釣り合うようになりたい』と思い続けている。

また、他人が自分に思い描く『理想の自分』と『現実の自分』の差に悩み続けていた。


そんな気持ちから人を惹きつける『魅了』系の魔法を無意識に作り、常時発動している可能性もあるのだ。

そんなタケルがユウナギと一緒に歩いていたら、注目されないわけがない。


学校内の噂はまだまだしばらく事欠かないようなのだった。


学校に近づくと見知った顔も多く見るのだが、タケル・ユウナギワールドに入ってくる人間はいない。

一部を除いて。


その一部というのが、ギャルの3人組、仁心瑠にこる心愛ここあ希星きららだ。

キラキラネームをつけたということは、それぞれの親はギャルになってほしいと思って名付けたのだろうか?

今では立派なギャルとして、クラスのヒエラルキーのトップに君臨し続けている。


中でも仁心瑠にこるは、ユウナギのことを『理想』とまで言い、友達的な意味なのか、性的な意味なのか、とにかく仲良くしたいと強く思っている。


そこがきっかけで、彼氏であるタケルにも注目したのだが、クラスの男子たちとも協力して文化祭を成功させたこともあり、仲間意識が強固なものになっていた。


ギャルたちは他人のATフィールドに容易に入り込んでくるので、タケル・ユウナギワールドにも平気で入ってくる。

ただ悪気は無いようだし、タケルもユウナギも不快には感じていない。


仁心瑠にこるはユウナギに従順なので、一人だけ別のクラスであるユウナギは、タケルに言いよる女子がいないか見張ってもらうように頼み、仁心瑠にこるも冗談なのか、本気なのか、タケルの動向に注目している。


今日もアクセスありがとうございます。


明日の更新も朝6時です。

よろしくお願いします。

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