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その後初めての朝食

翌日、クレアは自室からこそこそと食堂に向かっていた。

廊下を歩くときもきょろきょろと後ろを見たり前を見たり・・・


「お嬢様、どうされたんですか?」


一緒に歩いているシャルが訊ねた。


「だって・・・」


言葉をつぐんだクレア。


「タケル様はいつも遅れていらっしゃいますよ」


(びくっ!)


『タケル』と聞いて飛び上がって驚くクレア。


「もう、驚かさないで!」先導するシャルに言った瞬間くらいだった。


「あ、クレアさんおはようございます」


後ろからタケルに声をかけられてしまった。

丸まっていた背中がビクーンとまっすぐになった。


「朝から元気ですね」


「は、はい・・・」


タケルが自然に横に並ぶ。

クレアは既に顔が真っ赤、耳まで真っ赤になっている。


シャルは2人を誘導しているのだが、空気になることに徹している。


「クレアさんが元気で良かったです」


「は、はい・・・」


「その・・・昨日、やっぱりクレアさんかわいいなって思いました。僕の婚約者で嬉しいなって・・・」


言ったタケルも熟れすぎたトマトの様になっている。

何とも愛おしくてタケルはクレアの頭を撫でていた。


「うにゅぅ」


猫が撫でられているように目を細めた。


「また変な声が・・・タケルさんがっかりしないでくださいね。タケルさんが期待してくれている『クレア』のようには中々振舞えなくて・・・」


「がっかりなんてしないですよ。最高にかわいいです。そのままでいてください、婚約者様」


無意識に上目遣いで話すクレアの仕草がざっくりとタケルの心にくさびの様にささり、抜けることはなくなっていた。


「もう!ユウナギさんは今日から我が家の食堂解禁です!夕食には来られると思いますから、初日はタケルさんが迎えに行って差し上げてくださいね!」


「え?迎えに?」


「今まで入れなかったところなんです。女の子一人では心細いに決まっているじゃありませんか!」


「あ、そうか・・・」


ぷいっと向こうをむいて食堂にスタスタと行ってしまった。

でも、顔が真っ赤だったので、照れ隠しだとみえみえだった。


「すげぇなぁ。かわいいなぁ・・・あんな婚約者がいるなんて僕やばいなぁ」


そう呟いて、タケルも食堂の扉を開けた。



食後、クレアは自室に戻ってベッドの枕に頭を突っ込んで足をバタバタしていた。


「そのままでいいって言われた、そのままでいいって言われた、そのままでいいって言われたー!」


そのままでいいなんて、わたくしが今一番欲しい言葉。

そんな言葉を何も言わないのにくれるタケルさん。


やっぱり最高―!


(ばたばたばたばた)


「お嬢様、ほこりがたつのでほどほどでお願いします」


(びくっ)「シャ、シャル!いちゅからそこにっ!」


「お嬢様、驚きすぎてカミカミです」


恥ずかしさから頬が赤らんでいるクレア。


「よかったですね。お嬢様、そのままでいてほしいそうですよ?」


「そうね、さすがタケルさんね」


クレアがタオルをねじねじと手遊びしながら答える。

シャルは、どこまでかわいい人なんだと密かに眼福を得ていた。


「お嬢様はアルテーシア様の様に完璧を目指さなくても、適度にポンコツでいいと思います。タケル様もそうおっしゃっていました」


「それでも、ポンコツが好きとは言われていませんから!」


さらに、ねじねじするクレア。


「・・・お嬢様、その辺で・・・それ以上やるとタオルがねじ切れてしまいます」


「はっ!・・・そっ!そこまではしません!」


タオルを畳んで横に置くクレア。

ちょっと恥ずかしそうだ。


「そ、そう言えば、最近『タケル様』と呼び方が変わったみたいね」


あからさまに話題を変えるクレア。

よほど恥ずかしかったようだ。


「はい、侍女たちの間ではこれまでも『タケル様』とお呼びしていたのですが、ご本人の希望でお呼びするときは『タケルさん』とお呼びしていました」


「『陰口』ってあるけど、陰の方が丁寧な呼び方だったのね」


クレアはころころと笑う。


「そうですね。騎士様になられたので、それを機に呼び方を変えた者が多いようです」


「シャルは『タケル様』にしたの?」


「はい」


本当はかわいいお嬢様を取られたので、悔しいから意地悪のつもりで『タケル様』と呼んでみたが、思いのほかしっくりきてしまい、定着しつつある。

クレア様を幸せにする人。


これだけお嬢様を喜ばせたり、悩ませたり・・・きっとタケル様しかいない。

大好きなクレアお嬢様をお任せできるのは。


と、色々考えいてるが、シャルはいつもの無表情。

目も眠たそうなままだった。



祝!ついに77話になりました!(中途半端!)


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「奴隷」

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たった9話しかないのに、こちらは既に総アクセス数が2万PVを超えました!

感激です。


明日の更新も朝6時です。

よろしくお願いします。

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