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姿のない女神様

タケルは広場に来ていた。

目的はもちろん『女神』を見つけること。


歌や踊りで子供たちに知恵を授けることができる女神さま。

全身真っ黒で大鎌を構えてちょっと死神みたいだけど、女神様(一部タケルの思い込み)


その教育方法を覚えたいのと、なんとかクレアの屋敷に連れて行って、他の貴族との晩餐会に顔を出してもらいたいところ。


女神様にとっては何にもメリットがないので、ひたすらお願いするしかない訳だが、もしかしたら食べ物に釣られて晩餐会に参加してもいいと言ってくれるかもしれない。

タケル自身も参加したことがない晩餐会だが、ふわふわとしてイメージの晩餐会に参加してもらえるよう説得するのがタケルの仕事だった。


広場では叫び声が聞こえた。


「女神様が来てるぞー!」


「集まれー!」


ちょうど良いタイミングで女神が降臨されたようだ。

集まれと言われたのは良いが、別に空から光が差し込んでいたりはしない。


ちょっとした人だかりがあったので、何とか人をかき分け中に入っていく。

そこにいたのは、リアだった。


「リア!」


リアがくるりと声のする方に振り向き、タケルの姿を見つける。


「タケル!久しぶり!会いに来てくれたの!?」


「ああ、うん」


探していたのは本当。


「嬉しい!会いに来てくれるなんて!」


そう言いながらリアはタケルに抱き着いた。

タケルもまんざらではないが、リアはまだ10歳くらいの子供。


抱き着かれたら頭を撫でてやるくらいの余裕はある。


「あら、タケル」


後ろから聞きなれた声に声をかけられた。

リアに抱き着かれたまま後ろを振り返ると、そこにはユウナギがいた。


「あ、いや、これは・・・その・・・」


慌てて反射的に言い訳を試みるタケル。


「もう、リアったらほんとにタケルが好きね」


「うん!」


どうも、ユウナギとリアは顔見知りみたいだ。


「あれ?何でユウナギがここに?」


「ちょっとね、『客引き』を・・・」


『客引き』と言われて、一瞬いかがわしいことを想像したが、相手はユウナギ。

タケルの婚約者様だ。

そんなことをする訳がない。


しかも、学校帰りなのだろう。

セーラー服を着ている。

ユウナギは制服を着崩したりはしない。

いかがわしさなどみじんもないのだ。


広場では「女神様が来られたぞ!」「集まれ!集まれ!」と声を上げているものもいる。

割と人だかりの中心にいるが、肝心な女神はタケルの目には見えない。


「ねぇ、ユウナギ・・・」


「あ、人が集まってきたから、ちょっとしたストリート・パフォーマンスをするの、見てって!」


「あ、うん・・・」


言いながら少し離れて行ってしまったユウナギ。

そう言えば、部活はどうしたのだろうと、ぼんやり考えた。


タケルやユウナギが通う烏尾高校は弓道が有名なのだ。

1年ながら好成績をたたき出しているユウナギはレギュラー候補として部活が忙しいはずだった。


そんなことを考えているうちに、軽快な音楽が流れてきた。

その曲はタケルもよく知っているヒット曲で、子供から大人までに人気な曲だった。

スピーカーは置いてあるものの、音源はスマホみたいで、リアが操作して音楽が流れ始めた。


ユウナギは市場の人だかりの中心で少し広くなった場所で大きな円を描きながら歌っていた。

この歌は既に群衆には馴染みみたいで、一緒に歌っている人もいるほどだった。

タケルは何が始まったのか、訳も分からず呆気に取られていた。


ユウナギの歌は途中から替え歌になり、マティアス共用語にした九九を歌っている。

まさかYouTube出身のあの人の歌が替え歌で九九にされているとは・・・


群衆は一緒に歌っている。

そのうち、ユウナギが踊りながら空間に炎の文字を浮かび上がらせていた。


「はぁ!?」タケルは目を見開いて見てしまった。


ダンスの途中では右手や左手を空にかざすと、10m以上の火柱が右上、左上と上げられる。

その火柱を見たと思われる人たちが皿に集まってきて、平日の夕方だというのに100人以上の人が集まっている。

詳しく見ると子供たちがすごく多い。


ユウナギは頭の上で手を広げたり、叩いたりしながら、歌っていた。

そして、群衆も段々その歌を覚えているのか、一緒に歌っている。


時折、九九に合わせて文字が現れ、群衆から拍手が起こる。

娯楽が少ないマティアスの人たちにとってはすごいエンターテイメントになっているようだ。


1曲歌い終わるとユウナギは汗だくだ。

全力で歌っているらしい。


「次の曲いくよー!」


「「おー!!」」ユウナギの掛け声に群衆も答える。


次も日本のヒット曲らしい。

タケルにとっては耳馴染みが良い曲なのだが、群衆にとっても既に『自分たちの曲』として認識があるようだ。


今度は、マティアス共用語の文字が1番目から炎で浮かび上がらせられていた。

1文字1文字の表示はゆっくりで、歌もそれに合わせてあるようだ。


『ABCの歌』の様に次々次々文字が出るのではなく、1文字1文字『縦線まっすぐ』とか『ここは曲がって飛び出ない』とか文字の書き方を歌で紹介している替え歌らしい。


この調子で30分以上歌っていたユウナギが歌い終わったようだ。


「そこのシロさんの孤児院で塾をやってるから気軽に来てね!無料だよ!」


ユウナギが元気に叫ぶ。


「市場の新メニューの試食もあるよ!」


リアも続けて大きな声で伝える。


今日のイベントは終了かと群衆は拍手の後、少しずつ散っていく。


「・・・何だったんだ」


「あ、タケル!見てくれた!?私のライブ!」


「ライブなのか、これ」


「うん!塾の客引きも兼ねて、ストリート・ライブやってるの!」


なるほど、孤児院の子供たちの学力が上がってきたので、新規客(?)の開拓を始めたということらしい。


タケルは、ここで女神のことを思い出したのだが、ちょっと考え込んだ。


全身真っ黒→黒髪、セーラー服(紺)

歌や踊りで知恵を授ける

火柱・・・


「火柱!ユウナギ!火はどうやって!?」


「え?ああ、これ?なんか気づいたら指先から火が出ることに気がついて、練習したら好きに出せるようになっちゃって・・・」


そう言えば、いつか、タケルはユウナギの家で魔法がインストールできないか火属性の魔法で試したことを思い出した。

その時はユウナギは魔法を使えなかったが、それは日本にいたからか、それともまだ馴染んでいなかったからか・・・


「もしかして、『女神』って・・・」


「女神?ああ、たまにそう言われる。ニックネーム的な?」


「『知恵の女神』・・・」


まさか、ユウナギが話していた『女神』だったとは・・・

どうやら間違いないらしい。


そうなると、女神の弟子とはリアのことか。

曲を切り替えたり、音楽を流したりしていた。


読み書き計算ができるようになって貴族の家で仕事をしていて、タケルの嫁・・・そう言えば、以前求婚されたような・・・10歳くらいの子の言うことだからあまり真剣にとらえなかったが、マティアスでは成人年齢が日本よりも圧倒的に低い。

リアくらいの年齢だと「もうすぐ適齢期」なのかもしれない。


タケルはここで絶望を覚えた。


「女神が婚約者になるのでは!?」

「女神の弟子がタケルの嫁」


話を聞いた時点では全く身に覚えがなかったけれど、結果的にほぼ当たっている!?

さすがにリアを嫁にしたことはないが、どうも本人が盛り上がっているのは継続中らしい。


タケルはどうやって報告しようか考え続けていた。


昨日、総PVが1万4千を超えました!

ありがとうございます!


下↓の(☆☆☆☆☆)を(★★★★★)に変えて

応援してください(|ヮ|)/


明日の更新も朝6時です。

よろしくお願いします。

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