孤児院とお金の使い方
ウキウキで歩いていると、市場でも食べ物屋が多いエリアになった。
一段と活気があり、いい匂いが漂ってくる。
どこかお祭りの屋台を思わせる光景だったので、タケルは少しお腹がすいてきた。
「あ、タケルさん気になりましたか?何か食べていかれますか?」
「はい、いい匂いがしてきたので・・・」
スープのようなものや焼いたものなど色々なものが売られている。
懐も温かいので、何か食べてみることにした。
芋を蒸した物や何かの足の肉の塊を焼いたもの、何か薄くて丸いもの。
見たことがない物ばかりで、これはこれでタケルのテンションが上がっていた。
初めて食べるものには興味があるので、細い枝の様なものに肉を巻き付けて焼いたものと薄く焼いた丸い何かを買った。
支払いはどの硬貨がいくらなのか分からないので、クレアに助けてもらった。
「450シリーなので、この硬貨で足ります」
「あ、ありがとうございます」
それぞれの料理を受け取ると、クレアにも分けたて食べてみた。
「あ、うまい」
「おいしいですよね。お肉の方は、ケロッガと言います。ケロッガと言う動物の足の肉です。」
「おー」
少し薄味で鶏のささみみたいな食感だ。
スパイスなんかは足りないけれど、素材の味が生きている感じ。
当然、クレアの分も買ったのだけれど、クレアは慣れているようだった。
「薄い生地の方は、クラップと言います。穀類の粉をこねて薄くして焼いたものです」
「へー」
具のないお好み焼きみたいな味がする。
ただ、せんべいみたいに固くて薄い。
ソースもないので、少し味は物足りない。
それでも、面白い味だ。
異世界面白い。
タケルは異世界のB級グルメを楽しんでいた。
「クレアさんは屋台で食べたりするの?」
「はい、時々街に出ていろいろ買って食べたり、もらったり・・・」
少し歩いているだけで色々な人から声をかけられているクレアは、どちらかと言うと買うよりももらっている方が多いのではないかと思ったのだった。
ケロッガの肉は食べたら枝が残る。
タケルはゴミ箱を探していた。
そしたら、すかさず小さい子供がかけてきて手を出した。
「これは・・・」
「ごみの回収ですわ。この子たちの仕事なんです」
「そっか」
ごみを手渡しと言うのに少し抵抗があったけれど、枝を渡した。
5歳くらいの子供は枝を受け取ったが、その場を動かないでこちらを見ている。
「あの・・・」
どうしていいか分からずにタケルは視線でクレアに助けを求めた。
「あ、チップです。お駄賃」
「あ、なるほど。チップか」
タケルは、ストレージから小銭を多めに出して渡した。
子供は何も言わず「にこっ」としてごみを持って消えた。
これがここでの「普通」なのか・・・
見れば、そういった子供は市場に20~30人はいる。
着ているものが粗末なので、すぐわかるのだ。
「あの子たちは・・・」
「あの子たちは、親のいない子供たちです。孤児院にいたり、裏通りに住んでいたり・・・」
これがこの国なのだ。
タケルは日本との違いをまざまざと見せられた。
よく観察していると、ごみ集めの子供たちにもグループがあるみたいだ。
「あの子とあの子はあまり動けていませんね」
「確かに、他の子たちが先に動いていますね」
動こうとしたら、身体の大きな子供に制されて動けないでいるようだ。
しばらく見ていたが、人数にして3人は身体も小さいし、全然仕事をさせてもらえないでいるようだった。
「あの・・・クレアさん、ちょっと行きたいところが出来たんだけど・・・」
「はい、私はタケルさんが行きたいと言えば、お供します」
その4人の子供たちの一人に声をかけて、住んでいる孤児院に連れて行ってもらった。
案内された、孤児院とは名ばかりの普通の一軒家の家だった。
お世辞にもキレイとは言えない。
誰が見ても立派なぼろ屋だった。
「ここ・・・か」
「そうみたいですね」
声をかけた子供4人はリア(女の子)、ジュウ(男の子)、バク(男の子)、ハツ(女の子)と言う名前らしい。
孤児院に案内してくれた。
「あの・・・どういったご用事でしょうか?」
食堂と思われる広めの部屋に案内され、孤児院の院長と言う女性が出てきた。
年の頃なら40歳前後。
少し疲れている印象の女性。
名前はシロと言うそうだ。
「不躾ですが、孤児院の経済状態はどうでしょう?寄付を考えているのですが」
「それはありがとうございます。何とかやりくりしているのですが・・・」
「あ、まずはこれ・・・」
タケルはそういうと、先ほどの屋台で買ってきたケロッガとクラップをいくつか出した。
「人数分あります。子供は何人ですか?」
「はい、ここは26人です」
「そんなに!?シロさんおひとりで面倒を見ておられるんですか?」
「はい、近所の方がたまに手伝ってくださっているので何とか・・・」
シロさんも孤児院の運営を生業にしていて、ここで子供たちと一緒に生活しているそうだ。
ここからは、孤児院が欲しがっているもののヒアリングとお金、物資の寄付をする運びになった。
お金は日本円で20万円位に留めた。
あまり多いと人はおかしくなってきてしまう。
現状を壊さないように、それでいて少しだけ生活が潤うように。
しばらく子供たちと遊んでから孤児院を出てきた。
振り返ると、窓にいた人影が建物の中に消えたのを見た。
「いいお金の使い方でしたね」
孤児院を出てきたときにクレアが言った。
「うん・・・」
「本当にそうだろうか」とタケルは思った。
お金は渡した。
食材もいくらかまとめて渡した。
でも何か違う。
少しはたくさん食べられるかもしれないが、今後が変わるわけじゃない。
僕にできることは何かないのか・・・
そう、タケルは肉親がいなくなってしまった。
孤児院の子供たちと同じなのだ。
タケルは祖父から小さいながらも家と畑、少しばかりの貯金を引き継いだ。
不安はあれど、全く何もないわけではない。
自分の努力次第で何とか生きていけるかもしれない。
少なくとも希望がある。
クレアとの仲が上手く行けば、異世界で貴族として生きていけるかもしれない。
一方で、孤児院の子供たちはまだ小さい。
どう転んでも一人では生きていけないだろう。
自分は大きくなるまで祖父がいた。
この子たちのために何かできないか、と考えていたのだった。
そして、何かが違う「違和感」はタケルの心の中に残った。
今回は物語の都合上ちょっと少なめでした。
次回もよろしくお願いします。
今回までで合計3万5000文字になりました。
全体で11万5000文字、全体の30%となりました。
まだまだ「起承転結」の「起」くらいですね。
毎朝6時更新です。
よろしくお願いします。




