高1と小6、魔石とお金
朝目覚めて思った。
「ここどこ?」一瞬そう思ったけれど、異世界で王都に来たことを思い出した。
またまた助けた一行は、王都の王様の弟さんの娘クレアだった。
クレアを王都まで連れ帰ったら、クレアは侯爵家の娘だと分かった。
しかも、なんやかんやでクレアと婚約することになった。
タケルは16歳、クレアは12歳。
高1と小6・・・
タケルはなんだか罪悪感と背徳感を同時に感じていた。
たしかに、クレアは整った顔立ちをしている。
細身で金髪ストレート。
タケルが好きか嫌いかで言ったら、大好きなルックスだった。
ただ、タケルはこの世界で生きていこうなどと考えていなかっただけに不安もある。
自分のことで不安もたっぷりてんこ盛りなのに、他人を守る存在になるなんて・・・
目が覚めてからは色々違っていた。
朝食に案内されたかと思ったら、クレアのお母さんマリアを紹介され、手厚くお礼を言われた。
昨日までは長いテーブルの向こう側にクレアの父アルフレットがいて、その右側にクレアが座っていた。
左側はマリアの席だったのろう、昨日は空席になっていた。
今朝は、アルフレットの左側にマリアが座っていた。
そして、マリアが座っていた場所にタケルの席が設けられ、クレアはタケルの隣になっていた。
「これから私たちとタケルとお互いのことを知り合っていかないといかんな」
アルフレットは気さくに笑った。
「私が病に伏せている間にこんな素晴らしいことが起きていたなんて、おちおち寝てはいられませんね」
クレアの母マリアがころころと笑った。
母と言ってもまだ20代ではないだろうか。
マリアも整った顔をしており、笑顔が似合う女性だった。
若干疲れは見えるものの、昨日とは見違えるほど回復していた。
「ところで、マリア痛みは大丈夫かね?」
「はい、アルフレット様、あんなに痛かったのが嘘のようです」
「疲れもありますし、数日は念のために安静にしていてください。体力回復のために出来るだけ滋養のあるものを食べるようにしてください」
タケルが補足の様に言った。
「そうかそうか、タケルが言うのならばそうなのだろう」
いつの間にか、アルフレットがタケルを呼ぶときは呼び捨てになっていた。
それだけ気に入ったと言うことかもしれない。
「タケルさん、今日は王都を一緒に廻りませんか?案内しますよ?」
王都にはとても興味があった。
夏休みもあと1週間ほどある。
数日いてから帰っても全く問題ない。
心配する家族ももういないのだから。
ちらりとアルフレットの方を見たら「にやり」としたのが見えた。
「行ってよし」の合図だろうとタケルは理解した。
「クレアさん、よろしくお願いします」
「はいっ!」
タケルにとってはすべてが新しかった。
広い敷地の王都。
しかし、背の高い建物はほとんどなかった。
高くて2階建て。
建物の多くは石やレンガ造りで、通路は石畳、日本の街並みとはまるで違った。
建物を構えた飲食店もあるが、出店の様な店も多く、街には活気があった。
「すごく活気がありますね!」
「はい、わたくしこのマディアスが大好きなんです」
「いいですね、そんなに好きと言える街があって」
「はい」
クレアは、屋敷にいるときよりも少しグレードが下げられた服を着ている。
街にマッチした服装にしているようだ。
タケルに準備された服も昨日準備されたものと違って、街に溶け込んでいて、違和感のないものだった。
タケルとクレアはクレアの案内で街を散策した。
「クレアさん、クレアさんは、侯爵家の娘なのに街を歩いて回っても大丈夫なのですか?」
「治安のことでしょうか?」
「そうです」
「出歩くの自体は大丈夫です。さすがに、ドレスで街を歩くわけにはいきませんので、少し街向けの服に着替えてます」
「なるほど」
「そして、こうしている間も影から私服の護衛の方が着いてきてくださっていると思います」
「はー、そんなもんなんですね。やっぱり、貴族様ですね!」
「タケルさんも私と婚約したのですから、将来的に侯爵になりますし、現在でも貴族待遇になると思います」
「え!?そ、そうなんですか!?」
「はい、わたくしの家は意外とすごいのですよ?」
「はー、お見逸れしました」
「私は一人娘で兄弟はおりませんので、タケルさんは次期侯爵と言うことになりますよ?」
「え!?僕が!?」
「はい、タケルさんがです」
クレアはにっこり笑って見せた。
「お!クレアちゃん!今日は早いね!これ持っていくかい?」
「ありがとうございます!」
クレアが店の知らないおばさんから一口大のリンゴの様な果物をもらった。
「そっちのお兄さんも!」
ついでの様にタケルも同じリンゴ(っぽい果物)をもらった。
「あ、ども」
またしばらく歩くと別の人から声をかけられたいた。
「クレアちゃん!この間は助かったよ!」
「あ、おじさん!あれでよかったですか?」
「すげえ助かったよ!おっきなトラブルになるとこだったよ!」
「よかったです」
今度は、絨毯屋らしいおじさんに話しかけられた。
クレアは市場を歩いているだけであちこちから声をかけられている。
なかなかの人気者みたいだ。
「タケルさん、行ってみたいところってありますか?」
「そうだなぁ、ゴーストンさんから聞いたのですが、魔石って売れるのだとか・・・」
「そうですね!タケルさんは魔石をたくさんお持ちでしたね!ギルドに行けば買い取ってくれますよ!」
「では、ギルドに行ってみたいです」
「かしこまりました」
タケルとクレアは、歩いて10分ほどの1件の建物に向かった。
「ここがギルドです」
タケルにとってギルドとは、酒場とハローワークが一緒になったようなところのイメージがあり、少し汚くて、荒くれ者が屯っているイメージだった。
ところが、ここはきれいな建物で、明るいイメージで、酒場もなかった。
中に入ると、身なりもきちんとした受付嬢が数人いる。
建物の中はクレア以外人もおらず、落ち着いた雰囲気だった。
「どうされたのですか?タケルさん」
「いえ、イメージとはちょっと違ったもので・・・ギルドなんて言うと、もっとやんちゃな人が多いと言うか・・・」
「ああ、そうですわね。ここは貴族用のギルドです。王都に1件しかありません。平民用のギルドは王都にたしか大小16か所あって、中にはちょっとガラがよくないところもあると聞きます」
「なるほど・・・どこの世界も格差社会はあるのか・・・」
なんだか切なくなるタケルだった。
「でも、僕は貴族ではありませんし、ここを利用できるのでしょうか?」
「わたくしの婚約者と言うことで登録すれば貴族待遇で登録できると思います。ギルド長もちょっとした顔見知りですし」
「もしかして、クレアさん、すごい人なんじゃないですか?」
「はい、あなたの婚約者はすごい人なんですよ」
クレアは少しいたずらっぽく笑ってみせた。
控え目に言っても、クレアは「優良物件」だった。
それに釣り合うのかタケルは少し不安になった。
クレアの案内で、ギルドの2階に通された。
受付嬢もかなり恐縮しているようだったし、クレアの身分はここではばれてしまっているようだった。
2階の部屋では身なりのいい中年男性が出迎えた。
「どうぞ、おかけください」
タケルとクレアは応接室に通された。
クレアからギルド長のバラバンだと紹介された。
「クレア様、無事戻られたのですね。予定より遅くなっていたので心配していました」
「はい、このタケルさんが助けてくださいました」
「そうですか!今日にも捜索隊を編成する予定でしたが、戻られたと聞いて安心しました」
「実は、魔物に追われて魔の森に迷い込んでしまって・・・」
「なんですって!?魔の森に!?よくぞ生きて戻られましたね!」
「本当に運がよかったです」
「それで、今日はいかがしましたか?」
「はい、1名冒険者登録したくて伺いました」
「こちらの方ですか?」
ギルド長はタケルに視線を向けた。
「はい、この度、わたくし、クレア=フィリップ=オーギュスト・ド・ヴィリエ・ド・リラダン=マティアスはこちらのタケルさんと婚約しました」
「なんと!それはおめでとうございます!」
「ありがとうございます。その未来の旦那様がこちらに登録したいとご所望です」
「それは大変光栄です。それで、登録の意図は・・・」
「はい、タケルさんは大変多くの魔石を所有しておられます。それを引き取っていただきたいのです」
「それはすばらしい!・・・で、魔石はどのくらいおありでしょうか?」
コト・・・、とタケルは3個ばかりテーブルの上に魔石を取り出し、ギルド長に見せた。
「こんな感じで約600個あります」
タケルが言った。
「これは・・・かなり状態が良いですね!かなりの上物です。大きさも大きい・・・」
ギルド長は3つの魔石を代わる代わる見比べて驚いていた。
「そして、これが600!?」
ギルド長ははっとして言った。
「タケルさん、昨日よりも数が増えていませんか?」
「そうですね。ここに来るまでに魔物を捕らえたので、魔石を抜いておきました」
「・・・タケルさん、どこまでも規格外ですね」
普通と言うか、ここでの常識がないタケルにとって多いのか少ないのかも分かっていなかった。
「このクラスが600となると市場の相場も変わってきてしまいます。可能ならば、100個ずつ数か月に分けて納品された方が収益は最大になりますが・・・」
「では、大金が必要と言うわけではないので、とりあえず100個引き取っていただけますか?」
「も、もちろんです・・・でも、こんなにどうやって・・・」
「魔物を倒した後、すぐに魔石を抜いたのです」
「魔石を・・・抜く・・・」
ギルド長はタケルが何を言っているのか理解でいないでいるようだった。
「そのノウハウを教えていただければ、それも買い取りますが・・・」
「いいですよ?ただ、確立してからお知らせしたいと思います」
「か、かしこまりました」
ギルド長は「この人は何者ですか」と言わんばかりにクレアの方を見た。
クレアは、にっこりして何も言わなかった。
ギルド長は出来る男みたいで、それだけで「ふっ」と小さく笑みを浮かべて、首をふるふると左右に振って椅子に深く座った。
「いやー、クレア様、この度はご婚約本当におめでとうございます」
「ありがとうございます」
「侯爵様も益々安泰ですね!」
「そう思っております」
タケルは目の前でどんな会話が交わされているかは理解できないでいた。
何だか分からないうちに、ギルドを出るときには大金を持っていた。
麻の袋いっぱいに金貨が入っていた。
タケルには実感がないけれど、これは日本円にして1000万円弱の大金だった。
持ちきれないので、ストレージに収納した。
クレアがギルドを出た時にニッコリしていった。
「タケルさん、お金持ちになりましたね」
「ほんとです。何が何だか・・・クレアさんにもお礼をしないと・・・」
「いいえ、わたくしの財産はみんなタケルさんの物ですし」
タケルはどういっていいのか返事が出来ないでいた。
しばらく店を見て回っているときに、雑貨屋で見つけたアクセサリーをクレアが見ていた。
それに気づいたタケルは良いことを思いついた。
「気に入りましたか?お礼もかねてプレゼントしますよ?」
「本当ですか?ありがとうございます」
クレアが見ていたのは、4個の小さな石がはまっているクローバーを模したネックレスだった。
店主はニコニコしていることから割と高級品みたいだ。
「こちらは、魔法が込められていてそれなりにお値段が・・・」
店の建物の感じからはそれほど高級品とは思えなかったので、多少はぼったくられているのかもしれない。
それでも、女性にプレゼントするのに値切るのもかっこ悪いと思ったので、タケルは言い値で買った。
「着けてくださいますか?」
クレアが首を出してきたので、首にネックレスを着けた。
「あれ?魔法って言いました?これ」
「そうみたいですね」
「この世界では魔法が存在するのですか!?」
めずらしくタケルが前のめりでクレアに聞いた。
「はい・・・魔法・・・ありますよ?」
「そ、そうなんですか!?魔法!」
「あ、簡単なものだったらわたくしも使えますけど・・・」
「本当ですか!?ぜひ、見たいです!どんなことが出来るんですか!?」
クレアは人差し指を立てて、「1」のポーズをした。
「炎の聖霊よ、力をお貸しください」
クレアが呪文のようなものを唱えたら、100円ライターの(大)くらいの火が出た。
「おお!すごい!」
「それほどでも・・・」
クレアは少し照れていた。
どういう仕組みなのか、何もないところから火が出た。
「すごいなぁ、訓練とかされるのですか?」
「こういった生活上便利な魔法は『生活魔法』と言われていて、王都では比較的一般的に使われています」
「まじか!?」
「ただ、人により、属性があって、その属性に合っていないと使えないのです」
「そうなんですか」
「はい、わたくしは火属性に適性があったみたいで火をおこしたりはできるのです」
「そ、それはどうやったら分かるんですか!?」
「屋敷に帰ったら、各属性の魔石があるので調べることが出来ますよ?」
「ぜひ!ぜひお願いします!」
「はい!」
タケルのテンションは爆上がりだった。
街を見て廻るのも楽しいのだが、魔法があると言うのは良い情報だった。
しかも、比較的メジャーなものらしいので、自分にも何らかの属性があるのではないかと思っているのだった。
第6話いかがでしたか?
第20話くらいまでは書き上げています。
安心して読み進められてください。
昨日、初めて「評価」をいただきました!
しかも「★5」!!
ありがとうございます!
感激です。
励みになるので、さらに書き進めます(^U^)
朝6時に更新いたします。




