クレアの魅力的なところ
ふふふふふ、最近は自分の立ち位置が分かってきましたわ。
タケルさんの過去から現在までの思い出を一番共有しているのはユウナギ様でしょう。
それはしょうがない。
悔しいけれど・・・
そこで愛らしさを極めてタケルさんの心を掴もうと思ったけれど、フォレスタ様が出現しました。
時に怖く、時にカワイイ。
あの愛らしさには叶わない。
そして、最近発見した新しい手段。
これはユウナギ様には出来ないし、フォレスタ様も網羅していない道。
「クレア様、何かいいことがあったのですか?」
シャルがいつものようにお茶を入れながらクレアに訊く。
椅子に座って優雅にお茶を飲むクレア。
「ふふふ、分かりますか?」
「はい、お顔が残念なくらいふやけています」
「シャル、主人に対してもう少し言い様はないのかしら?」
「クレア様は私がしっかりしないと中身はポンコツなのですから。少しは陛下のところのアルテーシア様を見習ってほしいものです」
「そんなに違うかしら?小さい頃はよく似ていると言われたのだけれど・・・」
「全っ然違います。アルテーシア様は一切取り乱したりしませんし、いつも姿勢美しく、冷静沈着です。どこかのポンコツ主人とは大違いです」
「わたくしだって侯爵令嬢として毅然とふるまっていることも多いと思いますけど?」
「向こうは本物、こちらはハリボテという感じでしょうか」
「とことん容赦ないですね、シャル」
さすがにクレアが少ししゅんとしてしまった。
「アルテーシア様だと私のような者は必要ないでしょうから、私にとってはクレア様が最高の主人です。そして、クレア様の世間の評価が高くなるのが私の希望です」
「シャル、すごくいいことを言ってくれているのだけれど、その眠そうな目と抑揚のないしゃべりだと嘘っぽく感じてしまうわ」
「私の目は生まれつきのものなので、あきらめてください」
「まあ、シャルのお茶はおいしいし、あなたがいてくれて助かっているわ」
「恐縮です」
にへら~、またクレアは妄想の世界に戻ってしまった。
シャルは思った、なんとかもうちょっとちゃんとした顔を保つようにならなければ。
タケル様にもいつか愛想をつかされてしまうかもしれない。
これはこれでとても愛らしいのだけれど、一般的ではないと思われる。
「そう言えば、クレア様、手紙が届いていました」
「手紙?誰からかしら?」
「どうぞ、アルテーシア様からのようです」
「珍しいわね。」
シャルが準備したペーパーナイフで封を切るクレア。
「あら、お茶会へのお誘いみたいな」
「珍しいですね。アルテーシア様はあまりパーティにも参加されないので有名です。自ら人を集めるなんて・・・」
「そうではないわ、シャル。呼ばれているのはわたくしだけみたい」
「何かお嬢様にお伝えしたいことがあるということでしょうか」
「そういうことでしょうね」
「先日お会いしたばかりですし、仮にも親戚なのだからもう少ししっかりしてください、とかでしょうか」
「シャル、あなた今日はいつも以上に当たりがきつくないかしら。わたくしの心は金たわしでごしごしされて、もう傷だらけなのだけれど」
「失礼しました。このところタケル様のことばかり考えておいでで、お顔が残念なことになってばかりだったので、気を引き締めてほしいという侍女からの願いが込められていました」
「あらやだ。そんな顔をしているのかしら!?」
クレアが両掌をそれぞれの頬に当てて自らを振り返った。
「あとは・・・」
「まだあるの?」
「大切な主人をタケル様に取られてしまった嫉妬です」
「まあまあ!シャルはいつまでもわたくしの大切な人よ」
クレアがシャルを抱きしめて言った。
思っていた以上の効果でちょっと驚いたシャルだったが、クレアのことが好きなのは本当なので、抱きしめられてまんざらでもなかった。
「シャル、わたくしはわたくしの道を見つけたのです!」
また主人が変なことを言い始めたとシャルは心の中だけでため息をついた。
「どういうことですか?お嬢様」
「タケルさんの周りの女性を見ると、わたくしの優位性はあまりないと思いますの」
「と、言いますと?」
侯爵家の一人娘で、顔だちも整っていて、髪も金髪で美しく、スタイルもよく、笑顔が印象的で、頭が切れて、各界の評判も良くて、味方こそいても敵は一切いない、その上、クレア様が良いと言えばその事業は成功し、逆に難色を示されたらどんなに頑張ってもうまくはいかないという天性の感まで持ち合わせていて、これ以上の条件の人などマティアス中を探してもいないというのに、どれだけ自己評価が低いのか・・・シャルは少し頭がくらくらした。
「タケルさんの周囲には昔馴染みでかわいくて能力が高い方や庇護欲を最大限に引き出すかわいい方がいます。しかし、ぽっかり抜けているポストがあることに気づいたのです」
「はあ、それはどんなポストですか?」
「甘え上手です!」
「・・・はあ」
「タケルさんはそのお人柄から、甘えられたら嬉しくないわけがないのです!自分の弱いところを自ら見せて、タケルさんを頼り、甘えて甘えて甘え倒すのです!」
「えーっと・・・」
「どう?シャル。完璧すぎて言葉が出ないのかしら?」
シュルはどこからツッコんだものかと考えたいた。
確かに、タケル様のことを考えて真っ赤になってメロメロになっているお嬢様は最高にかわいい。
しかし、アレを人の目に触れさせていいものだろうか。
「かわいい」という評価ならば最高だけれど、引かれてしまわないだろうか。
あれだけ多方面に有能なタケル様。
弱い面を見せることでかわいがるか、不完全体として切り捨てるか・・・
「そうと決まれば、弱いところなど一切ないアルテーシア様を見て勉強してくるわ。ダメなわたくしを可愛がりたくなってしまう男心を鷲掴み作戦のために勉強に行ってきますわ!」
「アルテーシア様はアルテーシア様で何かご用事があるのでは・・・」
「シャル、お茶会の返事を出しておいてちょうだい。『喜んで参加させていただきます』とね」
行動力もあるお嬢様。
『やる』と決めたら必ず実行してしまう。
悪い方に結果が出なければいいのだけれど・・・と心配するシャルだった。
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