政治的取引とはこんなもの?
ゴーストンは国王からの褒美をお金にすることを選んだ。
奥さんと子供にもっといい生活をさせるためにお金にしたとのこと。
『斥候』たちも昇進やお金を選んだ。
タケルだけが褒美に悩んでいた。
簡単に言えば、魅力的な『物』が特になかったのだ。
なぜか、国王と城の食堂で食事をすることになっていた。
国王、アルテーシア、タケル、クレアというつながりの理由に苦しむ4人だった。
『緊張せずにざっくばらんに話をしよう』という国王の提案を飲んだ形だ。
国王とアルテーシアは親子で、クレアは国王の姪なので、この3人は血のつながりがある。
タケルは赤の他人だが、クレアの婚約者だ。
ある意味内輪の集まりと言えば言えなくもない。
名がテーブルの上にはタケルが準備した料理が並んでいた。
先日紹介するだけ紹介して食べることがなかったスイーツを中心に試食用に準備されている。
「・・・その、なんだ・・・この料理たちは・・・」
国王が無視できないとばかりに訊ねてきた。
「これは、今後アルフレットさんの屋敷で行われるパーティーで出される料理の一部です」
「なん・・・だと・・・このような料理と食器を披露するというのか!?」
料理は珍しいのは分かる。
パンケーキ、フルーツポンチ、シュークリーム、エクレア、ショートケーキ、マカロン、ティラミスと色々ある。
国王が注目していたのは『フルーツポンチ』だった。
「この容器は・・・」
「容器?ガラスですけど・・・」
「ガラスだと!?ガラスで容器を作ったというのか!?」
国王の興奮ぶりが理解できず少し困惑するタケル。
クレアに視線を向けて助けを求める。
「タケルさん、ガラスはマティアスでは加工技術がありません。時々発掘されるものなので、宝石と同義です」
「ガラスが宝石!?このボウルって百均ですよ!?」
「はい、マティアスの人間であるわたくしからしたらヒャキキンは高価なものをタダみたいな値段で販売する愚かな店という認識です」
「それはヤバいですね」
「はい、ヤバいです」
「王様、『宝石の器』ということで間違いないみたいです」
「やはりそうか・・・アルめ、こんなものを晩餐会で出されたら王宮は埋められない差をつけられてしまうじゃないか・・・」
「あ、そうではありません。アルフレットさんの屋敷では、王様のパーティーで出した後らしいです。もちろん、まったく同じメニューでは面白くないので、多少は入れ替えますが、注目すべきは『今までとは違う点』です」
「なるほど・・・アルめ・・・恩を売る気か。見返りに何を望む気なんだ・・・」
国王が独り言のように愚痴を言う。
「それは決まっていますわ」
その独り言にクレアが答える。
「わたくしの未来の旦那様を認めてほしいということですわ」
「うぬ・・・クルーガクの兵を止めてマティアスを守り、マティアスの市場を盛り立てて、孤児院の経済状態を改善させた若者を認めろ・・・だと!?嫌味なやつめ。既に『騎士』の称号は準備しておるわ」
「まあ!」
クレアは胸の前で手を合わせて喜びの驚きの声を出した。
「陛下、至上の喜びです」
「よせ、クレアは私の姪、公式の場ではないのだから、『おじさま』くらいにしておいてくれ」
「はい、ありがとうございます。おじさま」
「お父様、これは・・・」
アルテーシアがスプーンを手にしながら『?』が頭から出ている。
「あ、それは『スプーン』です。こうやって使います」
タケルがティラミスをすくって食べてみせる。
「まあ、フォークとは違うのですね!」
「フォークはさす感じですが、スプーンはすくって食べるときに使います。食べるものによって使い分けています」
「タケル様の考案されるメニューは種類が豊富なのですね」
「あ、これは僕が考えた訳じゃ・・・ああ、そうですね」
正しいことを言おうと思ったけれど、説明することは出来ないので、謹んで受けることにした。
「たくさん準備しています。ぜひ、試食されてください」
「ありがとうございます・・・」
アルテーシアの視線がやたら熱かったが、スイーツが好きなのだろうと理解した。
アルテーシアは一番手前にあったショートケーキを小さく切り分け、一口口に入れた。
「!!!」
明らかに驚いている。
でも、次の瞬間いつものすました顔に戻った。
「大変結構です」
それだけ言うと、次の一口には進まなかった。
「(口に合わなかったかな?)」
タケルは少し残念に思った。
次こそはもっとおいしいスイーツを買ってこようと思うのだった。
「ちょっとまて、これは何だ!?」
今度は国王が大きな声を出した。
もしかして、何か不都合が!?
異物でも混入していたか!?
タケルが慌てて国王の方を見ると、フルーツポンチを食べていた。
「これはいい!歯ごたえ、味、香り、見た目、美しさ!すべてが素晴らしい!特にこれだ!」
国王は桃をフォークでさしていた。
「まあ!まあまあ!ま~!そうなんです!おじさま!!桃缶の良さがお分かりになりますか!
食いついたのはクレアだった。
しかも、いつになくすごく嬉しそうだ。
「これは『桃缶』と言う食べ物です!特別な仕入れ先から仕入れています。最近ではわたくしも仕入れをお手伝いしていますのよ」
「なんと!クレア嬢が!立派な商人ではないか!」
「うふふふふふ」
「しかも、特別な仕入れ先じゃと!?」
「うふふふふふ」
クレアが分かりやすいどや顔をしている。
「なんと!これを仕入れるにはクレア嬢から仕入れるしかないというのか!」
「そーおー、でございます」
「ぬうっ、我が姪ながら恐ろしい娘よ。して、国王ならば特別ルートで分けてくれるのだろう?」
「国王様ならば、『桃缶』の他に、『ビワ缶』、『パイナップル缶』、『みかん』、『チェーリー缶』もお付けしましょう♪」
「ほほう、聞いたことがない物ばかり。それはそざかし美味なのだろうな」
「もちろんです」
「どのような見返りを期待しているのだ?」
「うふふふふふふ」
「あはははははは」
「うふふふふふふ」
「あはははははは」
政治の世界は意外とこんなものかもしれない。
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