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国王への報告

マティアスの城では国王とアルテーシア、アルフレット(クレアパパ)、クレアがトランシーバーの前で固唾をのんでいた。


操作にいち早くなれたクレアが操作しているので、滞りなくやり取りは出来ているのだが、1週間かかる予定の移動がたった2日でクルーガクに着いたという信じられない報告の跡は、国王と側近の暗殺成功の報告。


ここまでは期待以上にとんとん拍子でことが進んでいた。


ただ、次の報告がいただけない。

謎の病がクルーガクに蔓延していて、人も動物も死んでいるという。


クレアは、タケルが無事か気が気じゃなかった。

報告を聞いたときは一瞬気を失い倒れそうになったほどだ。

幸いすぐ横にいたアルフレット(クレアパパ)が抱き留めて事なきを得た。


しばらく緊張の時間が続いたかと思えば、半日後にはクルーガクの上級に天変地異クラスのドラゴンが現れて火を噴き攻め滅ぼしたという。

同時に空が真っ白になるほどの強い光があたり一面を包んだという。


ついにクレアは立っていられなくなって、椅子に座っている。

しかし、トランシーバーをうまく操作できるのがクレアだけなので、クレアは寝込むことはできなかった。


『(ザザ・・・)こちら『市場の小僧』こちら『市場の小僧』、『ライオン』どうぞ』


『市場の小僧』はタケルのコードネームで、『ライオン』は国王のコードネームだ。


クレアが急に息を吹き返したようにトランシーバーを取って答えた。


「こちら『金髪の乙女』!『市場の小僧』どうぞ!」


『こちら市場の小僧、仕事が完了しました。これから帰還します』


「はー」と息を吐いてクレアがテーブルの上に崩れていった。

それでも、タケルに続けて通信した。


「市場の小僧、お疲れさま。けがはありませんか?」


「金髪の乙女、全員無事です。ありがとう。通信終わる」


「「おおー」」


「『完了』ってことはクルーガクの進軍を止めたということか。彼らたった10人でだぞ!?」


国王が驚愕していた。


「タケルさんはすごいんです」


クレアがにこりと笑って言った。



タケルがマティアスに戻ったのは翌々日だった。

行きだけで1週間の予定だったのだが、往復で1週間以内で全てが片付いた。


堅苦しい謁見の間ではなく気軽に話せる談話室に関係者が集められた。

それでもゴーストンは普段呼ばれない部屋に呼ばれて緊張していた。


「皆の者ご苦労だった。ゴーストン、お前も座ることを許す」


ずっと部屋の隅に立ってたゴーストンが末席に座った。

国王、娘のアルテーシア、アルフレット(クレアパパ)、クレア、ゴーストン、タケルが集まっていた。


「ゴーストン、報告を」


国王が自ら言った。


「お手元の報告書にもあるとおり、予定より早く2日でクルーガクに到着しました。予定通りタケル様と安全なところで待機、『斥候』をクルーガクに送り込みました」


「うむ」


国王は報告書を見ながら答えた。


「斥候も予定通り、国王と重要側近の暗殺に成功しました。出兵直前だったため予定通り帰還し、軍を出すよう報告する予定でした」


「そうだ、そこで何があった?」


「クルーガクに疫病が蔓延していました。しかも、既に人が死に始めている状態でした」


「被害の程度は?」


「詳細は不明ですが、国民の20%以上は病にかかっていたようです。死者は数百名」


「お主たちが病にかかった可能性は?」


「タケル様がヒールで回復してくださいました。また感染がないことも宣言してくださいました」


国王がタケルの方を見た。

タケルは無言でコクリと肯いた。


「そこからは・・・」


ゴーストンが言葉をとどめた。


「そこからは僕が報告させていただいてもよろしいでしょうか?陛下」


タケルが報告の最中に割って入った。


「発言を許す」


「ははっ、魔の森から突然大きなドラゴンが現れてクルーガクを焼き払いました」


「・・・」


「・・・」


「ふっ、偶然ドラゴンが現れて、偶然クルーガク軍の兵を焼き払った・・・と」


「はい。たまたまでした」


「そうか。たまたま・・・か」


「して、軍はどうなった?」


「出兵予定の1500前後の兵が無害化したことと、広場にあった国王の巨大銅像が全て破壊されたことで、その後の兵は招集されなかったようです」


「巨大銅像もたまたまか?」


「はい、たまたまです」


「ふふっ」


小さく笑う国王に対して、周囲は静まっていた。

ゴーストンが座ったままでおろおろしている。


「ふふ・・・はっはっはっ。して、タケル、褒美は何が良いのだ?」


「え?」


「たまたまとはいえ、クルーガク兵をたった10人で止めたのだ。それにより、出兵予定だったマティアス2000人の兵が出兵しなくてよくなったのだ。褒美が必要だろう?」


「そうですわね。」アルテーシアが同意した。


「おお」ゴーストンが思わず声を漏らした。


クレアは横に座っているタケルに抱き着いて涙を流していた。




もうタケル帰ってきてしまいました。

冒険はあまり好きじゃないみたいです。


明日の更新も朝6時です。

よろしくお願いします。

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