斥候の正体
次の日、タケルはちょっとした失敗をした。
失敗をしてしまった。
それに気づいたのは2日目の夕方だった。
クルーガクが見えてきたのだ。
「タケル様、昨日の夜瞬間移動した距離が長すぎたのではないかの?」
「・・・失敗した」
「何日もあるなら分かるのじゃが、2日目とは・・・」
「最終日の場所を考えていたら、そこに着いていたみたい・・・」
「どうするのじゃ?」
「まあ・・なんとか。勢いで」
「それは作戦とは言わんのじゃ」
「「おお!」」
「あれは!」
「クルーガクですね・・・」
「し、信じられん。まだ2日目だぞ。別の町と言うことは!?」
「確かに・・・近すぎるしな」
斥候と体調のゴーストンが話し合っている。
「あ、『魔の森の不思議』だと思います」
タケルが話に割って入った。
「魔の森にはそんなものもあるのか!?」
「まあ、魔の森ですからね」
「魔の森にはまだまだ分からないことがあるんだな」
「そうですね。たまたま進んだ道が良かったんでしょうね。魔の森ですから」
「なるほど、次来るときに同じとは限らないのか・・・」
「そうですね。僕にもそのあたりは分かりませんね。魔の森ですから」
ちょろい人ばかりだった。
良い人ばかりなのかな。
「タケル様はそれでいいのか?」
フォレスタは笑いをこらえている。
「ほら、なんとかも方便っていうじゃない?」
「わらわはタケル様がいいのならば、良いのじゃ」
「あ、そうだ。あのー、ゴーストンさん・・・」
「どうした、タケル」
「クルーガクには着いたのですが、ここからは僕は何をしたらいいのか・・・」
「そうだな。俺とタケルはしばらくここで待機だ」
「待機ですか」
「ああ、クルーガクから絶対に見つからない位置に下がって待機だ」
「斥候の方たちは?」
「これからはやつらに任せることになる」
「はあ、じゃあこれをお渡しします」
タケルはトランシーバーを一人に1つずつ渡した。
「ありがとうございます。それではしばらく待機願います。その後は約束通りお戻りいただけます」
斥候の一人が答え、各人トランシーバーを受け取り街に消えた。
*
タケルは魔の森でゴーストンと共に待機することになった。
待つだけなら快適なのがいいと、タケルは再びタケルハウスをストレージから取り出しその中で快適に待つことにした。
「タケルの家ってのは便利だな」
「快適ならよかったです」
タケルが淹れたお茶を飲みながらゴーストンとリビングでくつろぐ。
「今日はゴーストンさんが好きなシチューの他にハンバーグもスパゲティもありますよ!」
「ハンバーグやスパ・・・がどんなものか分からんが、タケルの料理ならば是非食べたいな!」
「そうですか。ハンバーグは肉のミンチを固めて焼いた料理で、肉のうまみは楽しめながら、柔らかかくて、食べやすい肉量です。スパゲティは小麦の麺でトマトのソースをかけた料理です。これがまたおいしくて毎日食べても飽きないおいしさですよ~」
「それは絶対食べたいな!」
「その料理がここに」
ハンバーグの皿とスパゲティの皿をゴーストンに見せた。
「おお!いい匂いがするな!これはうまそうだ!」
ゴーストンが手を出そうとしたときにタケルは皿を引いた。
「おい!タケル何の冗談だよ!?」
「ゴーストンさん、本当は知っているんでしょう?斥候の方たちが今なのをしているのか」
「おっ、おい」
「聞かせてくれたら、この間王様に出したばっかりの新しいメニューも出しますけど?」
「ほんとか!?・・・でも、なあ」
「ゴーストンさんから聞いたって秘密にしときますから」
「でも・・・なあ・・・」
「まあ、いいですよ?ゴーストンさんは干し肉が好きなら。このくらい僕一人で食べられますから。さて、準備して食べようかな~」
「ちょちょちょ、ちょっと待て!分かった、分かったから!」
「ヒントだけでもいいのになぁ」
タケルはハンバーグをナイフで切り、肉汁を溢れさせた。
「これは絶対うまい!」
「分かった!何が聞きたいんだ!?」
「答えやすい質問から。彼らはどれくらいで帰ってきますか?」
「そうだなぁ、2日ってところかな。早ければ1日くらいかもしれん」
「彼らの仕事は兵がもう出たかの確認ではないですよね?」
「まあ・・・そうだな。出兵されたかどうかは見たらすぐ分かるからな」
「様子を見るだけで7人って多くないですか?」
「まあ・・・そうかもな」
「隊長であるゴーストンさんがここでご飯食べてていいってのがねぇ・・・」
「うっ・・・それは・・・」
「『斥候』って他人に気配を悟られないように情報を集める人達と思うけど、あんなに目が鋭くなるものですかね?」
「中には目が鋭いやつもいたかなぁ・・・」
タケルは料理の入った皿を右に左に動かいている。
ゴーストンさんはテーブルの上で右に左に手を伸ばす。
「ぶっちゃけ、予定より早く着いたでしょう?クルーガク軍はまだ出てなかったんじゃないですか?」
「そうかもな・・・」
「じゃあ、欲しい情報があるっていうよりも、仕留めたいターゲットがあるんじゃないですか?」
「タケル・・・そこまで分かってたのか」
「クルーガクの何をどこまでやるんですか?」
「すまねぇな。どこまでやるかは聞いてない。ただ・・・敵の大将1人か、兵隊2千だったらどっちが被害が少ない?」
「二千人殺すのを回避するためだから1人殺すのに目をつぶれってことですか?」
「まあ、タケルは何も知らずに森を案内しただけだ。汚れ仕事は汚い大人に任せておけ」
「・・・」
「実際、クルーガクの人間とマティアスの人間では考え方が根底から違う」
「どういうことですか?」
「マティアスの人間ならば、攻撃されればかたき討ちをするだろう」
「まあ、怒りの連鎖ってやつですよね」
「クルーガクは常に大国の属国としてやってきて、運よく独立した経緯がある。上をつぶせば侵略者に従うっていう考えだ。まあ、俺達には考えられんがな」
「僕は・・・小さい時から人は殺さなかった。僕のモラルで殺さなかった。でも、魔物は数が数えられないくらい狩ってる。人は殺したらダメ、魔物は殺していい・・・それは人間のエゴかもしれない。でも・・・」
「まあ、割り切れないよな。人間そんなもんだ。だから、俺がここにいて、タケルと待機なんだよ」
一瞬の隙をついてゴーストンが皿を奪取してハンバーグを食べ始めた。
「おお!これはすごい!肉が柔らかい!うまい!うまいぞ!」
「僕はここでご飯を食べることしかできないみたいだ・・・」
「まあ、1日、2日待つさ」
ゴーストンがわざとがつがつ食べる。
「まだまだ料理はあります。お腹いっぱい食べてください」
「ありがとな。」
ゴーストンは出された料理を次々平らげていった。
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