一人だけいない教室
とりあえず、『授業』は1つの孤児院でだけ行われた。
テスト的な要素が大きいと言える。
講師はユウナギ一人。
学校から帰ってきて、夕方から『授業』が始まる。
ユウナギだって学校がある。
そして、部活もあるのだが、ユウナギの希望で部活はしばらく休み、授業をすることになった。
子供たちはわくわくしている。
授業は孤児院の食堂を使って行われた。
お店は子供たち2人で営業されている。
仕込みも終わっているし、あとは販売だけなので最低限の人数で営業可能なのだ。
リアは積極的に店に出ることを希望して、授業には出なかった。
最初からすべてがうまくいく100点とはいかないのだ。
授業の質も含めてまずは60点を目指せば御の字だ。
ユウナギは小学生用のドリルとクレアから借りた教育用の本を使って、マティアスの文字の読み書きからスタートした。
日本人からしたら、自分の国の文字が読めない、書けないというのは異常なことかもしれないが、発展途上国では識字率が30%前後と言うこともある。
マティアスでの識字率を調査したデータはないが、到底50%には到達していない。
それどころか、庶民が学を付けると反逆するという考えが根底にあり、きちんと勉学ができるのは貴族とその教育係だけだった。
子供達には、ノートと鉛筆を配布したが、みんな宝物のように大事にした。
中には、大事にしすぎて、何も書かない子もいたので、本当に大事なのは自分自身が理解できることだと教えた。
子供たちは、話したりするのはほぼ問題ない。
難しい言葉を使うと分からないこともあるが、市場でもほぼ必要ない。
知っている言葉に文字を充てていく授業は子供たちに大人気だった。
ユウナギも教師になりたいと思っていたので、寝る間も惜しんで教材を作っていた。
笑顔と、楽しい話が合わさって子供たちは授業に熱中していった。
タケルはもっぱら動画撮影に専念した。
最初のつたない授業からすべて録画して、ユウナギと改善の打ち合わせをしていった。
同じ内容の授業を何回も行うことで子供たちの習熟度も上がったし、授業の質も上がっていった。
動画の質も上がったので、動画を中心にして、ユウナギは補足する価値の授業も展開していった。
大画面でユウナギが授業をするさまに子供たちは最初動揺したが、子供たちなので、すぐに順応して、授業本来の方向へ進んでいった。
一見すべてが順調だった。
しかし、1か月たってもリアだけは授業に出なかった。
常に店に出続けていた。
タケルが様子を見に行っても、頑として授業には出なかった。
見るに見かねて、タケルは店が終わった時間に孤児院へ行った。
この時間ならば、さすがのリアも働いていない。
タケルは子供たちの部屋に行って。
子供たちは4人一部屋になっている。
1対1で話すことは出来ないので、リアを食堂に誘った。
「タケル、何?」
リアは肩で敵意を表している。
友好的に話し合いとはいかないみたいだ。
「まあ、座ろうか」
(どか!)
リアがタケルの目の前に座った。
若干苦笑いのタケル。
どうしてこうも嫌われてしまったのか。
タケルは自分が何をしてしまったのかと思い返していた。
とりあえず、思い当たる節はなかったので、できるだけ優しく話し始めた。
「リアは働くのが好きなのかい?」
「好き」(プイ)あからさまに顔を避けられた。
「なんで休まないの?」
リアは顔を真っ赤にして視線を泳がせた。
「孤児院の小さい子がお腹いっぱい食べられるように私が稼ぐの・・・」
タケルはここで思った。
立派だけど、どうもリアクションがおかしいような・・・
「勉強嫌いかな?」
「・・・嫌い」
また顔をそむけてしまった。
ただ、この場からは離れない。
何かが引っかかる。
「リアより小さい子が計算できるようになったら、リア焦るだろ?」
「いい、小さい子が先に勉強できるようになったらいい。私は稼ぐ」
「それは悪いことじゃないんだけどなぁ」
「・・・タケル、私が働いたら困る?」
「いや、困らないけど、リアが倒れちゃったら心配するかな・・・」
リアは下を見て顔を真っ赤にしてもじもじし始めた。
「リアにも勉強してもらって、立派な大人になってほしいんだ」
タケルはリアの目を見て伝えた。
「私が賢くなったら、タケル嬉しい?」
「そりゃあ、嬉しいよ」
「私が勉強して、賢くなったら、タケルケッコンしてくれる?」
「・・・は?」
アクセス数が増えているのと、ブックマークの数が増えているのが励みになっています(>Д<)ゝ
気持ちは焦るのだけど、キーボードは走らない。
きっとお酒を飲むからかな。
飲んだらイメージはすごくはかどるけど、キーボードは止まる( ´艸`)
明日も更新は朝6時です。
通勤、通学の際、電車やバスの中で読んでいただければ幸いです。
よろしくお願いします。




