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タケルは久々に孤児院に来ていた。

このところ学園祭にかかりっきりで、全然孤児院の面倒が見れていなかったのだ。


そうは言っても、定期的に肉や食材は納品していたし、ちょっとした相談ごとくらいは聞いていたが、店をがっつり見ていなかったし、孤児院の中にも入る暇がなかった。


「シロさんご無沙汰してます」


「あ、タケルさんお疲れまです!」


孤児院に顔をだすと、院長のシロとあいさつを交わした。


「その後、変わりありませんか?」


「おかげさまで、お店も好調です。まだ売り上げが伸び続けているんですよ?」


「マジですか」


「あ、そういった意味ではちょっと・・・」


「?」


「タケルさん、お茶を入れます。こちらへどうぞ」


「あ、はい」


タケルはシロに孤児院の奥に通された。


「あの・・・贅沢な悩みかもしれないのですが、リアのことなんです」


リアとはこの個人の子供でまだ10歳くらいの女の子だ。

タケルによく懐いていて、店を見に行った時など、足にしがみついてきたりするほどだ。


「リアがどうしたんですか?」


「最近、頑張りすぎているような気がして・・・」


「頑張りすぎ?」


「そうなんです。今までかなり厳しい生活をしていたので、おかげさまで最近は少し余裕も出てきました。でも、リアはまた貧乏に戻ってしまわないか不安なんだと思うんです」


「なるほど」


「だから、いつもお店のことを考えていますし、朝から晩まで全然休みません。このままでは身体を壊してしまうんじゃないかと心配で・・・」


「そういう意味ですか」


「はい、休みも大事だっていうんですが、あの子だけ全然休みを取らなくて・・・」


どこの社畜だ。

どこのブラック企業だ。

それは、もう少し抑えめにしないと・・・


「分かりました。僕からも言ってみます」


「お願いします。あの子のやる気をそぐのは違うと思うのですが・・・」


「確かに、頑張るのは良いことです。でも、身体を壊したら元も子もない、ですよね?」


「はい・・・」


「あと、実は、僕が最近考えていたことがあって、それをこの個人(孤児院?)で手伝ってもらいたいと思って・・・」


「それはタケルさんの頼みならば・・・」


「説明しますので、もうちょっとだけ時間をください」


タケルはタブレットを出して、自作のプレゼン資料を使ってシロに説明を始めた。



タケルは市場に来ていた。

相変わらず活気がある。


タケル考案のバインミーも人気だ。

肉と言うのは食べ応えも満足感もあるし、どの世界でも人気なのだろう。


「あ、タケルー!」


「あ、きたのー?」


タケルの顔を見ると集まってくる子供たち。


「おつかれー。頑張ってるな!」


「なんかねぇ、最近売り上げがすごいんだよ!この間なんて、ついに1日600個っていう記録が出たくらい!」


「まじか!すごいな!」


タケルは店を見渡した。


「あれ?リアは?」


「リアなら食材を取りに裏に行ったよ?」


「そっか、ちょっと見てくるよ」


「お姉ちゃんね、タケルが来なかったから、自分が頑張らないとって最近すごく頑張ってるんだよ!」


「おわ!そうか。こっちも忙しいのが一段落したから、またちょくちょく来るからな」


「ほんと!パンの切り方をちょっと変えてみたいんだ!試食してみて!」


「ああ、ジュウのアイデアか?」


「うん、そうだよ!」


「そうか、そうか。楽しみにしてるよ」


タケルはリアがいるであろう、荷物保管庫のところに来た。

リアがいないと思って探していると、すぐ近くの木陰でリアがうずくまっている。


「リア!大丈夫か?」


「・・・あ、タケルー。大丈夫、大丈夫。ちょっと疲れただけだから」


「ちょっと座って」


「でも、お店が・・・」


「大丈夫だから、ほら、ここに座って」


「(久々だな・・・『鑑定』)」


タケルはリアの頭を撫でてやりながら『鑑定』で状態をみる。


『睡眠と休養不足と精神的要因から疲労状態です。ビタミンB1とイミダゾールジペプチドの経口摂取が効果的です』


タケルはストレージの元素類から栄養ドリンクを合成して、リアに渡した。


「元気になる飲み物だ。まずは飲んで」


「薬?苦い?」


「いや、ジュースみたいな味(だと思う)」


(ごくごくごく)「あ!おいしい!これ!」


「なあ、リア、最近頑張ってるんだって?」


「うん、院長先生にもおいしいごはんを食べさせたいし、子供たちも大きくなってきてるし」


「それはすごくいい心構えだな。でも、リアも子供だから、頑張りすぎると疲れちゃうだろ?」


「私は大丈夫!丈夫にできてるから!」


「実は、その院長先生が心配してたんだよ。頑張りすぎて心配かけたらダメだろ?」


「え?院長先生が!?でも・・・」


リアは走って行ってしまった。

あれでペースを落とすとは考えられない。

タケルは、子供たちにも計画を伝えることにした。



その日の夜。

孤児院に子供たちは全員戻ってきていた。

食堂に子供たちを集め、タケルが話はじめた。


「みんな、お腹いっぱい食べられているかな?」


「「はーい!」」


「俺はまだまだ食べられるぜ?」


「「ぎゃはははは」」


バクだろうか。

調子に乗っている。

余裕があるということは良いことだ。

みんな元気でとても気持ちがいい。


「みんなが店をやってくれていてとても嬉しい。でも、そろそろ次の段階に進みたいと思う」


「次?」


「次?」


「別のメニュー?」


子供たちは顔を見合わせている。


タケルが説明していったのは「塾」のようなもの。

店をやっているとお金も扱うし、計算もしないといけない。

計算ができないと、騙されるし、子供たちのその子供たちも計算ができない状態になってしまう。


結局、知識がないとある程度以上に物を発展させることはできないし、貧しい人の子供はまた貧しい人になってしまうだけだ。


そこで、1日4時間の「授業」をスタートすることにした。

ホワイトボードを持ち込んで、ユウナギが先生になって、読み書きと計算から教えるのだ。


当然、労働時間が短くなるので、これまでの様に売り上げを上げることができなくなる。

現在、売り上げは一旦全部孤児院で集計する。

タケルの店と言うことになっているので、タケルが材料費などを払い、残りを利益としていた。


その利益は、一旦子供たちに渡していた。

「自分たちで働いて稼いだ」と言う実感を持ってもらうためだ。


子供達にはそこから孤児院にお金を入れる様に教えていた。

ある者はいくばくかのお小遣い以外は全部孤児院に入れていた。


下の子供に服を買ってやる者、自分の将来のために貯めているものもいた。


ただ、自分への投資をする人間はいなかった。

そういった発想自体がないのだ。


タケルは色々な方法を考えたが、まずは、『仕事の時間』として、授業を受けている時間も給料を払うことにしたのだ。


子供たちの収入は変わらない。

しかし、長い子供だと1日12時間以上働いていたので、働きすぎなのだ。

4時間は強制的に授業を受けることして、働く時間は長くても6時間まで。


週休2日制。

市場は休みがないのでシフト制。

強制的に単価を上げる作戦だ。


ただ、働かない時間が多くなるので、人手が足りなくなる。

そこで、足りない人員は孤児院以外の子供を中心に新たに雇い入れることにしていた。


孤児院に入っていないけれど、食べていくのが難しい子供もたくさんいる。

そういった子供も網羅していくのだ。


そんな内容と、その必要性を説明した。


(ざわざわざわざわ)


子供たちとしては動揺もあったかもしれない。


「勉強していいの?」


「貴族様じゃないのに?」


マティアスではきちんと教育を受けられるのは一定以上のレベルだけなのだろう。

概ね子供たちは今後のことにわくわくしていた。


そんな中、1人違う反応の子供がいた。


「なんだよこれ!頑張れって言ったのに!今度は休めって!」


立ち上がって不満をぶちまけたのはリアだ。


「どういうことだよー!」


リアは部屋を出て走って行ってしまった。


「リア!」


タケルは追いかけたが、追いつくことはなかった。


なんだかここ数日300アクセスくらい伸びてます。

きっとあなたの布教活動のおかげです。

ありがとうございます!


ブックマークも日々増えていて、少しビビってます。

舞台は再び異世界に戻ります。


明日も更新は6時の予定です。

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