学園祭の打ち上げ 楽しい焼肉会
学園祭では41万円もの売り上げを上げ、クラスはすごく沸いた。
しかし、人生を考えると良いことがあった後は、悪いことが起こるものだ。
いつも良いことばかり起きるのはないということだ。
今回は売り上げが学校側にバレた。
別に悪いことをして稼いだお金ではないのだが、学園祭とは収益目的でやるものではないというのがあるらしい。
41万円を35人で稼いだとして、材料費など原価を引いたとしても、1人1万円配ることは可能な利益が残るはずだった。
しかし、そのほとんどは学校側から没収されることとなった。
表向きは学校のためとかクラスのために使われるということだったが、体のいい没収だった。
ただ、原価など学校に全て分かるものではない。
タケルは収益報告の時になんやかんやして、1人3000円分程度の利益の確保に成功していた。
ただ、1人3000円配るという直接的な使い方は学校から目を付けられているのでできない。
そこで「打ち上げ」と言う形で各人にいきわたるようにしたのだ。
元々打ち上げの話はあった。
その費用は各人の手出しの予定だったので、売り上げから出るということで落としどころを見つけたのだ。
そこで、リア充代表川島が店を選定して、予約する幹事をかって出た。
タケルは外食したりしないので、どんな店がいいのかを知らなかった。
せっかくやりたいと言ってくれているので、タケルは喜んで幹事を引き受けてもらった。
急遽「打ち上げ委員会」なる訳の分からない会が放課後に開催され、クラス全員でどこに行きたいか話し合った。
そこで決まったことは、ユウナギも売り上げに大きく貢献しているので、ほかのクラスだが打ち上げに呼ぶこと。
そして、ブレーンというか、アドバイザーとして、クレア、シャル、ローレットも呼ぶことになっていた。
クラスメイトが34人、ユウナギ、クレア、シャル、ローレットで合計38人。
これだけの大所帯だと、大学の合コンや会社の飲み会レベルを超えている。
ただ予約して集めるだけでも分かりと大変なのだ。
今回は予算が既にあるのでお金を集めるのには苦労がない。
だからと言って、店がすぐ決まると思ったら大間違いなのだ。
問題は年齢だ。
高校生が約40人となるとほとんどの店がOKを出さない。
まずは、年齢的なもの。
お酒を出す店はトラブル防止の意味でもほとんどがNG。
あとは、支払いが高くなるようなお店は、払いきれるのかの心配もあるのでNG。
ここに40人分の予算が既に現金で準備できていることは、お店の人には分からないのだ。
ついでに、責任者がいない。
何かあったときに責任が取れる人がいないのだ。
クラスみんなでそれぞれスマホを使って、高校生でもよくて、40人もの人間が入れるお店を探した。
そんな店はこの世に存在しないと思われたが、クラスメイトの1人が1件見つけた。
焼肉店だ。
食べ放題の焼肉店だ。
金額は2,480円、ドリンクバー(ソフトドリンク)追加で500円。
合計2980円(税込み)。
こんなピッタリすぎる条件の店がほかにあるだろうか、いやない(反実仮想)。
電話をして、狙った日の予約具合を確認すると38名OK。
こういう会をするとなると、費用的に来れないという生徒が確実に出てくる。
価値観が違うので、それは否定するべきじゃない。
ところが、今回は既にお金はある。
そして、学園祭直後と言うこともあり、クラスの団結力は以前よりも増していて、メイドカフェの激務を乗り越えてきたクラスメイトには連帯感のようなものは生まれていた。
何も障害になるものはない。
そして、みんな楽しみにしている。
初めて自分たちだけで稼いだお金で食べに行くのだ。
テンションが上がらないわけがない。
***
日が変わって、打ち上げの日。
街に出て、店で待ち合わせる。
人によっては先に集まって、買い物などを楽しんだのちにクラスメイトと合流する人もいた。
タケルはユウナギと店に向かった。
店に着いてから『ドアツードア』を使ってクレアとシャル、ローレットを呼び寄せる作戦だ。
タケルは店に向かう途中でテンションが下がっていた。
打ち上げは楽しみだ。
きっと楽しいだろう。
だけど、待ち合わせに向かうまでにテンションが下がる現象に何か名前はないのだろうか。
誰も言わないということは自分だけのことなのだろうか、とタケルはどうでもいいことを真剣に考えていた。
タケルとユウナギが待ち合わせ時間5分前に着いた時には、店に全員がそろっていた。
みんなすごく楽しみにしていたらしい。
それぞれ私服なので、個性が見て取れる。
「おー!キター!話題のカップル!」
「公開婚約の2人!」
「おめでとー!」
学園祭の時の大告白大会のアレは、クラス中に広まりまくっていた・・・と言うよりほぼ全員見ていたのだろう。
タケルが照れ隠しも含めて『クレアさんたちが来てないか見てくる』と席に座る前に入口にUターンした。
クレアたちはタケルが呼び寄せないと来れないのだから、来ているはずがないのだ。
何となく聞こえてきている感じからしたら、ユウナギが色々と質問攻めにされている。
心の中で『ごめん』と言って、タケルは入口に向かった。
店の入り口を開けて、クレア、シャル、ローレットを招き入れる。
事前にある程度どんな店か説明していたので、大きな動揺はなかったみたいだ。
約40人が席に着き、とりあえず各自ドリンクバーで飲み物を準備した。
クレアたちにはタケルとユウナギが飲み物を準備してテーブルに置いた。
こういうのは乾杯の音頭を取る人間が必要だ。
要するに『乾杯を言う係』。
総監督であるタケルに白羽の矢が立ったが、こういう場は苦手だということで辞退した。
そうなると、リア充代表川島が買って出た。
幹事と言うこともあって適任でもある。
「あー、みんな、飲み物はあるかな?えー、今日は・・・」
「川島話は良いから早く乾杯しろ!」
「「「ははははは」」」
誰かのちゃちゃで緊張気味の川島も腰砕けだった。
「じゃあ、カンパーイ!」
「「「カンパーイ!!」」」
「料理はタッチパネルで届くからどんどん注文してくれ!」
この食べ放題店は、タッチパネルで注文できて、店員さんが持ってきてくれる方式だ。
クラスメイトの方はワイワイやっていて、全く問題はない。
注目すべきは、クレアとシャル、ローレットだった。
まず、事前に説明していたのだが、食事の場でクレアとシャル、ローレットが同じテーブルに着くというのを納得させるのにすごく時間がかかった。
誤魔化しきれないと判断して、事前に『これから行くのは外国だ。外国ではそれが常識で、侍女が座らずに立っているとクレアが恥をかく』と伝えている。
嘘じゃない。
「黒いもの」を「白じゃない」と言っているような・・・
これでクレアの席の隣にシャルを座らせることに成功。
ローレットまで座らせてしまうと、テーブルの片側3人座ってしまい、交流がままらない。
みんな最初はおとなしく食べているだろうが、1時間もしたら、席をあちこち動き回り交流しまくるだろうとリア充の生態を分析していた、タケルが。
全てはタケルの先入観、偏見なのかもしれないが、その先入観、偏見の上に今回の練習があった。
後は、ドリンクバーとか、食べ放題は既に『バイキング』で覚えているのだが、タッチパネル注文とか、事前に写真と説明で何とか学習済みだった。
何度か日本に来ていて、買い付けなどもできるようになっているクレアに対して、初めて日本の焼肉屋の食べ放題に来ているシャルとローレットの挙動が明らかにおかしい。
何とか平静を装っているが、視線だけきょろきょろしている。
ユウナギが乾杯用にと無難にサイダーを持ってきた。
テーブルの上にサイダーが注がれたコップが置かれる。
もちろん、コップの中には氷が入っている。
「クレア様、これは?」
「この国の飲み物よ」
「泡が出続けていますが・・・」
「そのような飲み物なのよ。乾杯も終わったし飲んでみなさい」
シャルがコップを持つと「あ、冷たい」といつもの無表情で驚いた(?)。
クレアがにこりと笑った。
「あ、クレア様知っていましたね?」
「わたくしはこちらの国でも飲み物を飲んでいますから。さ、飲んでみなさい」
「はい、では、恐縮ですが・・・」
本来、主人の前で主人よりも前に侍女がものを口にすることなどない。
ただ、事前に『外国ではこれが当たり前』と半ば洗脳されているので、コップに手を付けた。
「きゃひー!」
シャルの目が漫画ならばバッテンになっている状態になった。
再びシャルを見たが、いつものようにすまして座っている。
少し見ていると、再びサイダーに手を出し・・・
「きゃひー!」
一口飲んでまた元の状態に戻った。
ジュース自体は気に入ったみたいだが、初めて飲んだ(であろう)炭酸に慣れないらしい。
次にクレアがタッチパネルを操作して、肉を注文しだすと、そのしぐさを凝視していた。
「クレア様その板は・・・」
「この板の中にはちっちゃな人が入っていて、この板を通してわたくしは中のちっちゃな人と対話を交わしているのです」
「ほ、ほんとうですか!?」
シャルはよもや信じられないという表情をしたが、手元のパネルが切り替わっているのを見ている。
しかも、数分待つと、店員が肉を持ってクレアの前に来た。
主人が自分以外にサーヴィスされる嫉妬もあるが、教育係も務めた主人が自分の知らないことをやすやすとやってのけているのにも嫉妬があった。
サイダー→タッチパネル→サイダー→タッチパネルとクレアのいたずらに翻弄されるシャル。
いつもからかわれているクレアからしたら、格好の仕返しの時なのだ。
本当に仕返ししてしまうクレアがかわいい。
*
ローレットはユウナギの横にいた。
最近ではタケルの面倒だけではなく、ユウナギの面倒も見ていたので、面識があったのだ。
「ユウナギ様、これは・・・」
ローレットが無煙ロースターを指さしながら質問する。
「だから、ローレットさん、私のことは『ユウナギ』でお願い。様なんかつけられたら全身かゆくなっちゃうわ」
「しかし、主人に言いつけられましたので・・・」
「でも、タケルは『タケルさん』なんでしょ?」
「はあ、それはお願いされまして・・・」
「私もお願い!お肉焼いてあげるからっっ!」
トングを持って、皿から肉をロースターに移すユウナギ。
「とんでもないです!主人に焼いてもらう侍女がどこの世界にいますか!」
慌ててトングを取り返そうとするローレット。
ここはここで他人の入れない変なワールドを展開していた。
*
「なあ、タケル。クレアちゃんはどっかの国のお姫様で、なんとなく納得したんだけどさぁ」
タケルのいるテーブルでは長友がタケルに話しかけていた。
「うん」
答えながらも肉を焼き、食べるタケル。
ここで覚えたことをマティアスで展開することを考えている。
ちなみに、川島は別のテーブルで仁心瑠の横をがっちりキープして、口説いている。
こちらは、タケルのテーブル。
隣にはメイド服のフォレスタ。
「お前の横にいる、ちんまいメイドはなんなんだ?」
「わらわはちんまいメイドではない!」
「『わらわ』でだよ」
「うーん、説明は難しい・・・」
「妹?子供・・・じゃないよな?」
「僕がいくつの時の子供っていう想定?」
「まあ、そうだよな」
「タケル様、肉はどれくらい焼いたら食べていいのじゃ?」
「うーん、とりあえず、色が変わったら?」
「おい!タケル!幼女に『タケル様』とか呼ばせてんのかよ!」
「別に呼ばせているわけじゃないんだけど・・・あ、ここはもういいよ」
「まずタケル様が食べるのじゃ、わらわはそのあとで」
「僕は寛大なんだ。小さい子が先に食べな」
タケルが肉をフォレスタのたれに入れる。
「それを言うなら、わらわの方が30倍は年上じゃ」
フォレスタが、肉をタケルのたれに移す。
「この間よりも10倍ほど増えてるよ」
さらに、肉を戻す。
「お前ら、仲いいのな」
「どこが」
タケルは一度フォレスタに殺されたのだ。
実際は幻覚かもしれないが、それはフォレスタにしか分からない。
「そうか?そうか?そう見えるか?」
フォレスタはなんだか挙動不審だ。
「お主、なかなか面白いやつじゃな。それ、肉をやろう」
フォレスタが焼けた肉を長友のたれに入れる。
「フォレスタちゃんからもらった肉♪いただき!」
長友はすぐに食べた。
「うまいー!」
「・・・」
フォレスタノーリアクション。
ここはここで特に荒くれることなく時間が過ぎた。
焼肉食べ放題は120分。
全員がたらふく食べて、支払いも川島が売り上げから支払い、ノントラブルで終わった。
締めでは、タケルがコメントを求められ、ぐずぐずのコメントしたり、仁心瑠、希星、心愛のギャル3人が、また涙ぐみ感動したことをみんなに告げたり、まあまあいい締めだった。
タケルがそそくさと帰ろうとしていた時に事件は起きた。
「リーダー2次会をやろう」と訳の分からないことを川島が提案した。
長友、渡辺も発案者だ。
もうちょっと帰りたくないと思ったギャル3人が同意し、まずユウナギが仁心瑠に捕まった。
ユウナギがタケルを捕まえ、フォレスタは自動的に捕まった。
タケルが行く時点で、クレア、シャル、ローレットも確定。
ここで10人の2次会が決定した。
早く次の話に行きたいのですが、やつらが絶対打ち上げはしたいと言って離してくれません(汗)
構想的には10話くらい先を行っているのですが・・・
ストックが切れるのが先か、書くのが先か!?
いま、そんな状態です(^^)
昨日ブックマーク1件頂きました!
ありがとうございます!
更新は明日も朝6時です。
よろしくお願いします。




