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学園祭当日

学園祭当日。

タケルのクラスは全ての準備が十二分にできている状態でそのスタートに臨んでいる。


メイド服はすべて揃っている。

こういった場合はレンタルのメイド服の到着が遅れたり、行き先が分からなくなるのが普通(?)だ。

ところが、前日に3着とも届いているし、ここにはメイド服を着たギャルが3人完全状態でスタンバっている。


教室はちゃんと飾り付けられている。

準備が間に合わないからといってクラスメイト同士ケンカになったりもしていない。

カラフルな色紙を切ってレンガの様にして、それを壁に貼ることで『学園祭っぽいチープさ』を残しつつも『殺風景でない』ところまでは持ってきている。


教室を真っ二つに仕切っているパーティションも準備できている。

食材はちょっと多めに200食分準備した。

売れ残ってもクレアが買い上げるという約束なので(実際はタケルだが)、売れなくて食材が余るリスクを考えなくてよかった。


湯煎器、ホットプレート、ティーポット、カップ、皿など必要なものはほとんどクレアが無料で貸してくれている。(実際はタケルだが)


オペレーションの練習も及第点以上は行っている。

バイトの様に対価があるわけでもないのに動けるのは若さゆえだったのだろうか。

クラスメイト全員で客の役や接客役をローテーションしながら、ほぼ全員が自分の役目をこなせるようになっていた。

少なくとも孤児院の子供たちが初めて屋台に立った日よりも完成度は高い。


そもそも学園祭の出店で多少の失敗をしたからといって誰からも責められたりすることはないのだ。

あるとしたら、自分のイメージとの乖離だけ、自分の向上心だけしか責めてはこない。

そんなことに気づいてか、気づかずか、みんな失敗しない様に頑張った。


別に意地悪をするライバル店などない。

妙にライバル心を燃やす縦巻きロールのお嬢様的なやつもいない。

そんな奴はアニメの中にしか存在しないのだ。

成功に終わる未来が約束されたスタートだった。


開店自体は9時からだった。

「『メイド喫茶からすお』オープンしまーす!」


(ぱちぱちぱち)


他のクラスでも同様に拍手や歓声が聞こえている。

それぞれ準備は万端なのだろう。


しかし、学校自体のオープンが10時なので、それまで校外の客はこない。

9時からは店が開いていると言っても、それぞれはそれぞれ自分のクラスの出し物の準備があり、客が押し寄せることもない。

それどころか1人も入らない。


こういう色物いろもの的な店は一人で入るのは勇気がいる。

校内を回る少ない客(暇な人)は1人では店に入らないのだ。


しばらく緊張していたメイド(クラスメイト女子)たちも気が緩んできた。

ギャル3人などは、普通におしゃべりしている。


「総監督―、暇だなー」川島が言った。


「まあね。」タケルが答えた。


「なんか手はないのかな?」


「実は、10時になったら直接この店に来させる秘策があるんだけど・・・」


「なん・・だと・・・。そんな作戦を隠し持っていたとは!?」


「実は今思いついた・・・」


「総監督、店は大丈夫だから、その秘策を発動させてくれよ」


「・・・分かった」


タケルは廊下に出ると、両手を伸ばして呪文のように唱えた。


「フォレスタでませいっ!」


「どうしたのじゃ?ご主人様」


タケルの背後にフォレスタは立っていた。


「だから、なんでいつも背後から現れるんだよ」


「色々と都合があるのじゃ。して、なんじゃ?ご主人様」


「ちょっとした仕事がある。僕と一緒に校門まで来てくれ」


「・・・」


明らかにめんどくさそうなフォレスタ。


「昨日のパンケーキをまたたくさん焼いてあげるから」


「行くのじゃ!」


パンケーキがお気に入りのようだった。

昨日、保健室から教室に連れて行った時も、クラス中が沸いた。


「タケルが保健室で子供作ってきた!!」


「『烏尾高校の奇跡』本当にあこがれていたのに!俺の青春が終わった・・・」


などとあらぬ方向への誤解と同時に、「何このかわいい生き物!?」


「ほら、パンケーキ食べる?パンケーキ!」


などと餌付けに似た何かが教室内で行われていた。


「パンケーキ食べたい」


「「きゃー!かわいいー」」


フォレスタは座っているだけで、パンケーキと紅茶が出てきた。


かなりの量のパンケーキがフォレスタの腹に収まった。

そして、クラスの多くの女子の庇護欲が最高潮に高まっていた。


そこで味を占めたフォレスタが、今日もパンケーキにつられて校門に行く。


「あ、フォレスタちゃん!おはよう!」


数歩歩いただけで、ユウナギが釣れた。

ユウナギとフォレスタが手をつないでいるだけで、人だかりが増えていく。

それがどこかに向かっているのだ。


みんなついていく。

段々人が増えていく。


一人はメイド服の銀髪幼女。

その銀髪は腰まであり長い。

朝の光に照らされて光をまとっているようだった。


もう一人はユウナギ。

『烏尾高校の奇跡』とまで言われていて、成績優秀、容姿端麗、誰にでも優しく、笑顔を絶やさない。

ギャルからDTまで誰にでも人気だ。


その2人が歩いていたら気にしない方がどうかしている。

実際は後ろからタケルもついて言っているのだが、こちらは誰の目にも入っていない。


校門に着く頃には既に20人程度の人だかりができていた。

タケルはフォレスタにポスターのうちの1枚を渡した。

そこには『メイドカフェは3年1組』と書かれている。


フォレスタは訳も分からないまま両手でポスター両端をつまんで持っている。

タケルが指示して時々違う方向を向かせ、たくさんの人に見えるようにした。


ポスターには『来てね♪』とも書かれていて、どよめきが起きる。

時間的にはちょうど10時になったころ。

郊外の客もフォレスタとユウナギの周りを取り囲む。


そして、人が人を呼び、既に50人程度のちょっとした集団になっている。


タケルは、フォレスタ『教室に戻ったらパンケーキをごちそうする』と耳打ちしたので、フォレスタはずっと『パンケーキ食べたい♪パンケーキ食べたい♪』と繰り返しながら教室に戻っていく。


何となく集まっていた集団もフォレスタに釣られてタケルのクラスに向かっていく。

そこからは『激務』だった。


フォレスタは教室内でパンケーキを食べ歩くだけ。

お客さんからも一口もらっていた。


客は次々来て、パンケーキと紅茶を注文する。

店外には長い行列ができて、退屈しのぎのためにメイドたちがじゃんけんやトランプ、ちょっとした手遊びなどで間をつなぐ。


当初3人で回せると予定していたメイドたちは、倍の6人体制でてんてこ舞い。

教室を半分に仕切っていた、パーティションは1/3まで減らされ、机といすが持ち込まれ、急遽席数が増やされていた。


10着の予定だったメイド服は足りないので、急遽5着追加され、女子の分が全員分いきわたるように補充された。


これだけ忙しいと教室内がガチャガチャしそうだが、練習の甲斐あって、割と静かな『メイドカフェ』を実現していた。

昼時ともなると『あそこに何かがある』と行列が行列を呼び、常に100人以上が待っている状態になっていた。


通常ならばちょっとしたパニックになっているだろうが、入店待ちの客様に接待メイドたちが占いやら、あっち向いてほいやら、で対応しているので、クレームにはならない状態。


男子の一部はホットケーキをひたすら焼いて、残りは整列させる係。

メイドたちに絡んでくる客の対応などを買って出ていた。


昼を過ぎたころには、クレアの粋な計らいで、シャルとローレットも応援に合流して、メイドが17人体制になった。


タケルは当初予定していた食材に加えて、予め仕入れていたホットケーキを取り出して、湯銭ゆせん係に渡す。

紅茶やソース、など次々不足していく物資を密かに補充していっていた。


3時を過ぎたころには、何故かほかのクラスのユウナギもメイド服を着て接客に当たっていた。

その情報が洩れて『烏尾高校の奇跡がお世話してくれる』とデマが走りまくり、客がまた増えた。


当初4時間おきに交代の予定だったメイドたちは9時から学園祭が終わる5時までてんてこ舞いで働き続けることになった。


最後の客が帰るときは、17人のメイドたちが廊下までついて行って見送っていた。


飲食店の席が全部埋まることを『1回転』と言うそうだが、常に満席の場合何回転なのだろうか。

クラス中の人間が床に座り込んだ。

本当にやり切った疲労だった。


床にへたり込む男子たち。

さすがのメイドたちも椅子や机に座っていた。


シャルとローレットは、教室の隅でみんなの紅茶の準備をしていた。

さすがプロ。


「えー、売り上げを発表します!」クラス中がいったん静かになって、みんながタケルを注目した。


昨日8人目の評価を入れてくださった方がいます!

おかげさまで4.3になりました!


ストックは1話分だけなので、日曜日にたくさん書くようにしないと・・・


明日の更新も朝6時です。

よろしくお願いします。

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