↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
42/98

タケルの悩みとメイドカフェの練習

クラスにおいて僕に力なんてない。

はっきり言ってボッチ・・・いや、陰キャと言っておこう。


「リア充」と「非リア」でいえば、リア充が良くて、非リアは悪いイメージがある。

しまし、リア充とは、リアルが充実している人のこと。


僕は一人でも充実している。

だから、「非リア」と言われたら悪口だ。


しかし、「陰キャ」は陰キャラだ。

陽のものと陰のものに分けたら、僕は「陰」のものだろう。


陽キャといえば、ユウナギ。

いつも笑っていて、いつも一生懸命で、いつも周囲の人を気遣っている。


勉強ができて、スポーツができて、友達が多くて、男女ともに好かれる。

彼女を陽キャと言わずして、誰を陽キャと言おうか。


それと比べると、僕は一人の方が、気が楽だ。

誰かと一緒にいると気を遣う。

僕みたいな人間でも他人は期待する。

その期待に応えられなかったら・・・そう思うだけで、返事をするのにも気を遣う。


何か失敗しなかったか、もしかしたら、これから失敗するんじゃないか・・・

そう考えたら、誰かと接しているだけで気疲れする。


その点、ユウナギはすごい。

僕のATフィールドをやすやすと中和して中に入ってくる。


僕のことを好きだと言ってくれた時は驚いた。

婚約したことを知ったとき、ユウナギは子供みたいに泣いた。

僕はこの世の全てを何とかしてでも彼女を泣き止ませたかったけれど、僕には出来なかった。


僕にできなかったことをやすやすとやってのけたのはクレアさんだった。

彼女はユウナギも婚約者になることを笑顔で提案してくれた。


世界でたった一人になってしまった僕をただ一人助けてくれた人。

家族になってくれると言った人。


僕はわがままだ。

クレアさんだけじゃなくて、ユウナギも欲しくなってしまった。

僕のわがままを叶えてくれた人、クレアさん。


きっと、僕は2人にはずっと頭が上がらないのだろうけど、ずっと好きでいられる自信がある。


クラス内では僕は空気だった。

誰にも話しかけられないし、誰にも話しかけない。


勉強でも特に目立たないし、スポーツでも目立たない。

悪い方では目立っていたかもしれないが、それはあえて触れないでいてほしい。


誰とも関わらないと心は自由だ。

これが僕の充実。

だから、リア充だろう。


陽キャか陰キャかで言えば、陰キャ。

それで十分。


でも、人は全く人と関わらずには生きていけない。

人と関わるのを避けて過ごしていても、向こうから絡んでくることがある。


このクラスで言えばキムラ。


ちょっかいかけてくるし、囃し立てるし、物を盗む。

たまに目立つようなことがあったらつぶしにかかってくる。

こういったスキルをどこで習うのだろうか。


少なくとも僕はこれまで習ったことはない。

別にそっとしておいてくれたらそれだけで、僕はハッピーなんだ。

話しかけてくれなくても十分なんだ。


それなのに、最近は周囲が騒がしい。

ユウナギと付き合うことになってから、『ユウナギ効果』がすごい。


クラスのヒエラルキートップのギャル3人に話しかけられたり、サッカー部やバスケ部で活躍しているリア充達が話しかけてくる。


ちゃんとした返しなんかできないから、いつもちゃんと返せたかドキドキする。

帰りがけにその時のことを思い出して、一人でリアクションをリフレインしたりもする。


だけど、ユウナギはいつも横にいて、ニコニコしてみていてくれる。

僕が失敗してもニコニコして見ている。

花にたとえるならば、『ひまわり』だろう。


彼女が僕の幼馴染に生まれたことで僕は一生分の運を使い果たしたと思っていた。

でも、異世界は全然違った。

人も価値観も全然違う。


僕が知っている物、経験した物を、欲してくれる。

それはもしかしたら、僕でなくても良いことかもしれない。


だけど、僕を欲してくれるのならば、僕は僕のできることをしよう。

もしかしたら、そこに僕が生まれてきた意味があるのかもしれない。

違ったとしても全然問題ない。


何かを失うわけじゃない。

だって、僕は何も持っていないのだから。


死んだときはしょうがない・・・と思っていた。

でも、今は死んだら悲しんでくれる人が2人はいる。


その人たちが喜ぶような自分でいたい。

その周囲の人が喜んでくれるようなことをしたい。


そして、僕は気づいてしまった。

ついこの間まで僕がいた場所に、キムラがいることを。


そして、僕がいる場所は、キムラが憧れた場所のその先だということをー



クレスでは、メイドカフェに向けてみんな進んでいた。

ただ、それぞれに温度差はあった。


各リーダーは「グループの仕事=自分の仕事」のように積極的に動いていた。

クラス全員は必ずどこかのグループに所属していた。


クラスは30人ちょいで、グループは3つ。

1グループ10人くらいのもので、料理のメニューを考えたり、衣装を選んだりするのにはちょっと多すぎる。


当然、あまり参加していない人もいる。

タケルはキムラのことが気になった。


みんなが学園祭の準備をしている最中、キムラは自分の席についたまま動かない。

さぼっているというよりは、グループに混ざれないようだ。


今までは、ヒエラルキー上位の人間におべっかを使って周囲をぐるぐる回っている人工衛星みたいな立場だったが、その中心が変わってしまい、バツが悪いのだろう。

昨日までいじめていたヤツの取り入ることはできないと分かっているし、周囲をこそこそついて回るのもかっこ悪いと思っているのかもしれない。


もし、タケルに影響力があるとするならば、鶴の一声で改善できるだろう。

ただ、タケルは陰キャ。

たった一言で人を動かすことなどできないのだ。


うじうじ悩んでいるタケルに、追い打ちをかける様に「悩み」が持ち込まれた。


「ねぇ、タケルッちー、メイドカフェの飲み物だけど、紅茶はティーバックでよくね?ちゃんと淹れる道具とかないし」


放課後メイドカフェのことを考えたり、市場のことを考えたりしていたタケルの席に料理チーム女子リーダーの心愛ここあがティーバッグを持ってやってきた。


ちなみに、タケルの席にはユウナギもいて、椅子は1脚を半分ずつ2人で座っている。


「ユウナギちゃんもこれでよくね?おいしいし、有名だし」


「うん、そうだね。有名なやつだね」


「でっしょー?」


タザーの特訓を受けたタケルとしては、ちょっと引っかかることがあった。


「このティーバッグだと紅茶はおいしいし、バックヤードでお茶を淹れて持ってくるわけなんで、問題はないかな」


「タケルっちもそう思うっしょ!じゃあOKね」


タケルの表情をいち早く読み取ったのはユウナギだった。


「どうしたの?タケル?」


「うん、悪くないけど、それだけかなって。紅茶でもお金をもらうんだし、目の前でちゃんと紅茶を淹れた方がお客さんは喜ぶんじゃないかな・・・」


「あ、分かるー。ローレットさんのお茶おいしいよね」


ユウナギも賛成みたいだ。


「でも、アレだろ。素人が淹れた紅茶ならティーバッグの方がおいしいだろ!?」


渡辺が心愛ここあの肩を持つ。


「そうだねー、それもそうなんだけど、メイド『カフェ』だからねー・・・、ちょっと来週の『実演』の時まで答えは待ってもらえないですか?」


「実演の時は、紅茶とパンケーキでしょ?ティーバッグで出すよ?いいの?」


「うん、それはOKだよ」


「はい、決まりー」


「ほんとヤバいよ?」


渡辺と心愛ここあはペンディングに同意した。

飲めばクラスの同意が得られると思ったようだ。


渡辺と心愛ここあが去った後に小さい声でユウナギが訊いた。


「珍しいね。人の意見に流されるんじゃなくて、自分の考えも入れてくるの」


「うーん、自分がお客さんだったら、ティーバックの紅茶に200円とか出すのは嫌かなって」


「あーね。分かるかも。しかも、私らクレアちゃんの屋敷のお茶を飲んじゃってるからねー」


「んー、しかも、タダでね。それに比べて200円で紅茶出されたら損した気分かなぁって・・・」


「んふふ。いいんじゃない?タケルがやりたいようにしたら。何か考えがあるみたいね」


「うん、一応は。来週の『実演』の時にね―」



***


数日後の放課後、「実演の日」になった。

事前に喫茶店の練習をして問題点を出そうというのだ。


女子はクレアから借りたメイド服を着ている。

いわゆるメイドカフェのものよりも落ち着いた感じで、シックな感じだ。

一度はメイド服を着ることに難色を示していた彼女たちも非日常の姿に興奮している。

きゃいきゃいと騒がしい。


女子が15人もいたら絶対騒がしいのに、この状況はかなりのものだ。

周囲のクラスの人間も何が始まるのかと廊下から教室内を覗いたりしている。


教室は半分だけ『店』になっていて、残りの半分は『バックヤード』になっていた。


メイドたちは店の壁際に並んで立っていた。

男子は『バックヤード』側に待機している。


「教室仕切るのにパーティーションが要るんじゃね?」


はい、早速足りないものが発覚しましたー。


他のクラスなのにユウナギ来ていて、メモを取っている。


「『パーティーション』っと」


『店』の方では、机を脚ずつ向かい合わせにして付けて、テーブルにしていた。

とりあえず、10組20人までは一度に収容できる。


それに対して、メイドは15人。

休憩に5人は行くとして、ほとんど1テーブル1人と、どう考えても多すぎる状態だった。


「『メイド多い』と」


勝手にユウナギが書き足していく。


客役はタケルとユウナギが兼任。

『テーブル』をはさんでそれぞれ向かい合って椅子に座る。


「『タケルの横がよかった』っと」


ユウナギがまた勝手にメモを足していく。


「勝手に書かないでもらっていいですか?」


「なんでー!?ぶー」


その膨れた頬でまたユウナギファンが増えたことだろう。


次にメイドが注文を取りに来た。


「何になさいますか?ご主人様」


「『ご主人様』だって!タケル嬉しい?嬉しい?」


ちょっと顔がニヤケ気味のタケル。


「あ、私もメイドしようかなぁ」


「ユウナギはクラス違うでしょ」


「ぶぅ」


ユウナギは不満そうだ。

クレアの屋敷に帰ったら、ユウナギがメイド服姿で現れそうだなとタケルは想像していた。


「なに、ニヤニヤしてんの?ほら、注文!」


ユウナギは不満顔だ。


「じゃあ、パンケーキと紅茶を2つずつください」


「かしこまりました」


タケルは頑張ってキリリとした顔で言った。

ただ、周囲からは暗い顔に見えたかも。


メイドがお辞儀をして、『バックヤード』に注文を通した。

今は何もないが、ここには向こう側を見通せない『透明な壁』があるていだ。


バックヤードでは男子が、ホットプレートでホットケーキを焼いていた。

まあ、冷凍も解凍できていて、元々できているので、焼目を付けているだけだが。


同時にポットのお湯をカップに注ぎ、ティーバッグが入れられた。

ティーバックの紐をちょいちょいと上下させ、適度に色を出したらメイドたちに声をかけた。


「はい、あがったよー!」


メイドが数人同時に反応して、譲り合う様にして、最終的に1人が取りに行く。


紅茶とパンケーキが『テーブル』に提供された。


「お待たせしました。パンケーキと紅茶です」


「ありがとう」


「・・・」


タケルもユウナギも反応しなかったので、メイドが変な空気を読んだ。


「少々お待ちください!」


そう、フォークもスプーンも出ていなかったのだ。

紅茶には砂糖もミルクも、スプーンもない。


喫茶店ならばあるだろう水もない。

まあ、水は最初から出すつもりはないので問題ないが。


ふきんもなく、ティッシュが箱で準備されている。


スプーンとフォークが準備され、パンケーキを食べる2人。

味は普通。

だって、冷食だから。


1食分2枚なので食べ応えもある。

他の店に行くことや、他の店で食べてきたことを考えても適量だろう。


食べ終わると、出入り口付近のレジでお金を払う。

計算が簡単になるように、1品250円。

つまり、パンケーキも紅茶も250円。

2人分だから1,000円という訳だ。


教室からタケルとユウナギが出たら教室内から「おお」という声がした。

最初の『ミッション』が終わった喜びかもしれない。


ここで、再びタケルとユウナギが教室に入り、タケルが言った。


「じゃあ、みんなで思ったことを1人ずつ言ってください。あ、メモするから少しゆっくりでお願いします」


ちょっとワーワーなったが、次々と意見が出た。


簡単にまとめると、クオリティが低い。

それに対して料金が高い。


男女とも手が空いている。

教室が殺風景。


「あと、思ったけど、客引きとか、ポスターとか必要じゃね?」


「たしかに」


「ここでメイドカフェやってるって分からせないと」


次々意見が出てきた。


タケルは意見が出そろった頃を狙って言った。


「じゃあ、次は僕らでやるので、お客さん役を・・・ワタナベくんとココアさんおねがいします」


「はあ?俺!?」


「うちも!?」


ワイワイと囃し立てられながらも、2人は席に座った。


各メイドと、男子を『バックヤード』に待機させた。


「じゃあ、始めます」


タケルは教室の『バックヤード』側の扉を開けた。


昨日初めて1日で300アクセスを超えました!

ありがとうございます!

嬉しい限りです。


明日も朝6時に更新します。

よろしくお願いします。

ストックはあと3話分。

追いつかれないようにしないと・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。