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フォレスタとお風呂

「疲れた・・・」


タケルはクレアの屋敷に戻ってきてぐったりと疲れてベッドに倒れこんだ。


「ご主人様、大丈夫なのか?」


フォレスタが部屋で出迎えた。


(トントン)


ドアがノックされた。

ローレットが水を持ってきてくれたと思い、ドアを開けたらそこにはクレアがいた。


「あ、クレアさんただいま」


「お帰りなさい、タケルさん」


クレアはいつもより露出が多い服を着ていた。


「どうしたんですか、おめかしして?お出かけですか?」


「違いますわ。わたくし危機感を持っていますの」


「まあ、中にどうぞ」


話が長くなりそうだったのでタケルはクレアを部屋に通した。


部屋のソファに座ったところでローレットがお茶を準備して持ってきた。

さすが本物のメイドは抜かりがない。


クレアはソファに座ると足を組んだ。

いつものクレアらしくないとタケルは感じた。


「それで、話ってなんですか?」


「そうです!わたくし危機感をかんじていますの」


「はあ」


「あの子ですわ」


タケルの座っているソファの背もたれにかけられた洗濯物の様にぐったり寝転がっているフォレスタを指さした。


「フォレスタ?」


「そうですわ!タケルさんにとって、金髪ロングというのは希少価値が高いと思っています」


「まあ、日本には黒髪の人が多いですからね。ある種の憧れのような物はありますね」


「しかも、わたくしのなだらかな胸はタケルさんの国では希少価値があると!」


「確かに、大きいのを好むおっぱい星人が多いですが、フラットな胸は、それはそれで需要があります。実際僕は小さいというか、ない方が好きです・・・ちょっと待ってください!何の話ですかこれ!?」


クレアが立ちあがった。


「そこですわ!タケルさんにとって、わたくしの魅力は『金髪ロリ少女』であること・・・そこに、このフォレスタさんがさらに幼い『銀髪ロリ幼女』が来てしまったら、上位互換ではありませんの!? クレアはいらない子ですか!?」


タケルは軽く頭痛がした。

日本語をインストールして以来、クレアの言葉が乱れている。

あの後も何度も日本に来て、ネットもマンガもアニメも見ているので悪影響なのかもしれないと思ったのだ。


「あ、あの、クレアさん、僕はクレアさんが金髪だから婚約したわけでも、ロリだから婚約したわけでもありません」


クレアはタケルの前で迫るように続けた。


「しかし、わたくしのアイデンティティの危機なのです!だから、少しセクシー路線も取り込んで・・・そうじゃないと、こんな・・・」


クレアはフォレスタの方に視線をやった。

フォレスタは「ふにゃー」という擬音が聞こえそうな感じでソファの背もたれの上で寝転がっている。


それを見たクレアの表情も「はにゃー」といわんばかりに表情がとろけている。

そのうち、「はっ」と我に返り表情を整える。


「こんな見ているだけで癒される生き物がタケルさんの周囲にいたらわたくしの立ち位置が危ういのです!」


クレアの顔がタケルの顔に近づく。

何か一生懸命に言っているのだが、タケルにとっては「クレアさんってまつげが長い」とか「瞳が透ける様にきれい」とか完全に違うことを考えていて、言葉は素通りしていた。


タケルの視線に気づいたクレアは、静かになり、タケルの胸に身体をあずけた。

見つめあう2人、そのうち唇が近づいて行った。


2人の唇が触れそうな瞬間、はっとした。


すぐ横でフォレスタが「じーーーーー」と見ていたのだ。


クレアはスタッと立ち上がり「それでは、また後程夕飯の時にお会いしましょう」と言い残すとそそくさと部屋を出て行った。


その後フォレスタが、ソファの上で猫の様に伸びをしながら話しかけてきた。


「のう、ご主人様?さっきのは人間の生殖行動に入る前の儀式だったのでは?」


「ううううう」


何も答えることが出来ないタケル。

きっと人生で2度だけ来るチャンスのうち2回目を逃しだのだろう。


タケルは再びベッドの上で「ううー、ううー」と唸りながら寝転がり、足をバタバタさせていた。


「のう、よかったのか?ご主人様?」


更に無邪気に追い打ちをかけるフォレスタ。

さらにベッドの上に寝転がって、タケルの顔を覗き込んでくる。


「タケル様?わらわが悪かったのかの?代わりにわらわとチューしておくか?」


しばらく一人になりたいと思うタケルだった。



夕飯を終えた後、部屋にはいつもの様に湯あみ用のお湯が運ばれてきた。


そう言えば、メイドカフェではメイド服を着たくないと言っている女子がいる問題があったなと思い出す。


今日の担当もローレットだったので、気軽に話しかけてみた。


「あの、ローレットさん、ちょっといいですか?」


「はい、何かご入り用ですか?」


「あ、ちがくて、少しだけ話し聞かせてもらえませんか?」


「わたくしの主人、クレア様に顔向けが出来なくならない程度ならば・・・」


クレアに顔向けが出来ない話とはどんな内容だと心の中でツッコミを入れるタケル。


「今、学校のイベントでメイド服を着るのが恥ずかしいって言っている女の子たちがいて・・・あ、ごめんなさい、プロのメイドじゃなくて、コスプレ・・・格好だけメイドってことなんだけど・・・」


「タケル様の学校とは、色々なことをされるものなのですね」


「まあ、その・・・それで、いつもキマっているローレットさんならば、誇りというか、意気込みみたいなものを持っているんじゃないかと思って・・・」


ローレットは姿勢を正した。


「そうですね、わたくしの場合家が貧しくて奉公に出されたのがきっかけで侍女を始めました。最初は嫌だったのですが、職場に憧れの先輩がいてその人みたいになりたいと思ってからは誇りを持って仕事ができる様に打ち込みました」


「へー、いい話ですね。ちなみに、その上司って・・・」


ローレットは急に右手と左手の人差し指でもじもじしながら続けた。


「クレア様専属の侍女、シャルです。わたくしには雲の上の存在で・・・」


胸のところで手を重ねて、目はきらきらさせながら遠くを見ている。

きっと本当に好きなのだろう。


「勉強が出来て、武術が出来て、お奇麗で、それでいて周りへの気遣いが行き届いていて・・・時に厳しく、そして、時に優しく・・・」


完全にあっちの世界に行ってしまっている。


「ありがとうございます」と言ってローレットに帰ってもらった。


「憧れの人か・・・」とタケルはつぶやいた。



「タケル様!今日も湯あみか?湯あみをするか?わらわがご主人様を洗ってあげるのじゃ」


湯あみが気に入ったのかフォレスタが前向きだ。

まあ、悪いことじゃないし、良いかと思った。

ただ、できれば一人で入ってほしいとタケルは思っていた。


小さいとはいえ女の子。

身体を洗うとなると緊張してしまう。


しかも、男の子ならばまだしも女の子だ。

各部どのくらいの圧力で洗ったらいいものか・・・


そして、どこまで洗ったらいいものか・・・

実は、身体を洗う役目はユウナギにバトンタッチする話もあった。


そしたら、ユウナギは毎日クレアの屋敷に来ているわけではないので、却下になった。

そこで、タケルはクレアに頼んだが、クレアは元々お嬢様。

誰かに身体を洗ってもらうことはあっても、洗ってあげる事なんてないのだ。


しかも、12歳が7~8歳の面倒を見るって・・・


それならと侍女にも頼むことを検討したが、フォレスタが知らない人とは湯あみをしたくないと頑なに言い張って、結局タケルのところにその役目が帰ってきてしまった。


「絶対間違えているだろこれ・・・」


前回の失敗を教訓に、今日は先にタケルがシャワーを浴びて、身体を洗ったのちにフォレスタを湯あみ室に呼ぶ作戦を考えた。

そうでないと自分の身体を洗う暇がなく、身体がきれいになった気がしないのだった。


湯あみ室にお風呂用の椅子を持ち込みシャワーで頭を洗い始めたタケル。

シャンプーを使い始めたところで声が聞こえた。


「かゆいところはないかの?」


目が見えない状態の時に前から頭を洗っている者がいる。

当然、フォレスタだ。


「洗ってやると申したではないか。なぜ、先に一人で頭を洗い始めるのじゃ、ご主人様よ」


「いや、僕はそんな、洗ってもらわなくても自分で・・・」


「そう申すな、わらわにとって初めてのご主人様じゃ、存分に尽くされるのじゃ」


フォレスタが頭をごしごし洗ってくれる。

それはそれでいいとしよう。

泡のついた両手の行き場がないのだ。


全裸で目の前に立つ銀髪幼女。

自分はいったい何をしているのだろうと疑問に思うタケルだった。


頭を洗い終わるとシャワーで泡を流してくれた。

ちゃんとしている。


フォレスタはタケルの後ろに回って、身体を洗い始めた。

本当に身体を洗ってくれるらしい。


スポンジもあるのだが、フォレスタは手で洗っている。


「スポンジもあるよ」と見せたが、「それは嫌いじゃ」と却下されてしまった。

背中の次は、肩、両腕と洗われていく。


タケルはぼんやり「人のぬくもりっていいな」と思っていた。

そう言えば、祖父と一緒にふろに入ったのはいつだったか。

祖父との触れ合いも年齢的になくなっていた。


フォレスタが人かどうかは微妙なところだが、見た目は人間の子供である。


「ひゃう!」


いきなり後ろから抱きしめられた。

いや、腕も洗い終わったから、次は前らしい。

後ろから手を回して前を洗おうとしていたらしい。


「こら、変な声を出すでない。どうしてそんなに身体が大きいのじゃ、手が届かんではないか」


ぶつぶつ言いながらフォレスタが前に回り込んできた。

膝をそろえて行儀よく座っていたタケルの真正面からまたぐように座るフォレスタ。


「え、いや・・・」


「こら、動く出ない!危ないではないか」


向かい合う形で身体を洗われるタケル。


「え、いや、あの、前は自分で・・・」


「まあまあ、遠慮するでない」


茶化すというよりは、真剣に洗っているようだった。

しかし、幼女とはいえ、裸で目の前で膝にまたがられていると、タケルも年頃の健康な男子だ。

生理現象は起こるわけで・・・


「あ、じゃあ、もう終わりで!」


何とか切り上げようとするタケル。


「こら、まだ下半身が残っておる!」


上半身を洗ったら、下半身に進むつもりらしい。


「いやいやいやいや、ちょ、ちょっと!」


何とか下半身だけは回避することができた。

本気でダメだという意思が伝わったのだろう。


何とか解放されたと、安心した矢先、新しい問題が目の前に出現した。

フォレスタが目の前の椅子にちょこんと座り、背中を向けて待っている様子。


「タケル様、今度はわらわも洗ってほしいのじゃ」


もうタケルが洗うことになっていた。

しょうがないので、スポンジにボディシャンプーをかけて泡立てていると、フォレスタに停められた。


「それはごわごわするので直接手がいいのじゃ」


「え!?手で!?直接!?」


まあ、背中くらいならば良いだろうと自分の中に言い訳するタケル。

小さい背中を直接なでていく。


「あ・・・ああ、うん、ああ・・・」


「変な声を出さないでよ」


「悪かったのじゃ、でも、声は・・・ああ・・・うん・・勝手に出るのじゃ」


「じゃあ、スポンジで・・・」


「それは嫌じゃ!」


きっぱりと断られてしまった。

このままでは開けてはいけない未知の扉を開くことになってしまうのでは・・・と一抹の不安を抱きながら洗い続けるタケル。


フォレスタの背中は細くしなやか。

人の体温というのは人を優しくさせる・・・なんて何とか良い感じに思うことにしていたタケルだったが、このつるつる具合と柔らかさはダメだ。

人をダメにさせる。


「次は肩と腕をお願いするのじゃ~」


当然の様にいうフォレスタ。


自分も洗ってもらった手前断るのも申し訳ない。

首筋、肩、腕となでつつも洗っていく。


「うん・・・ん・・・ふふ」


「悩ましい声を上げないでほしい・・・」


「すまんのじゃ、でも、声は黙っていても勝手に出るのじゃ・・・」


いや、黙っていないだろう。


-何とか腕までは洗った。

これで終わりに・・・


フォレスタが両腕を上げて上で手のひらを合わせねじっている。

ヨガっぽいポーズだ。

これが、何だというのか。


「わきの下を頼むのじゃ」


「わ、わき・・・」


タケルはなんだか踏み込んではならないゾーンに踏み入った気がしていた。

なるべく何も考えないようにして、フォレスタの脇を洗うタケル。


「はっ、はあ、ああ・・・」


益々なまめかしい声を上げるフォレスタ。

本当にやめてほしい。


とりあえず、何とか雑念を払って脇も洗った。

なるべく見ないようにもした。


タケルは大きな仕事を終えたのだと安堵した瞬間。

フォレスタがくるりと椅子ごとくるりと振り返り「次、前」と宣った。


ふんと胸を張るフォレスタ。

タケルは視線を横によけた。


「よそ見せず、しっかり洗ってほしいのじゃ」


「いや、そういう訳にも・・・」


「ちゃんと真剣に洗ってほしいのじゃ!」


「ちゃんとでも真剣でも前を向く訳には・・・」


そこからはタケルはもう何も覚えていない。

よほど切羽詰まっていたのか、キャパをオーバーしたのか。

そして、どこまで洗ったのかもわからない。


ただ、湯あみが終わった後、フォレスタが真っ赤になってベッドでふて寝していたのが気になった。

ただ、何があったかはタケルにはもうわからない。

下手をしたら作者にだってわからないのだ。


ついに、夢の中にフォレスタが出てきたった・・・

夢占いで「幼女が出てくる夢」を調べようと思ったのですが、ヤバそうなのでやめました・・・


次回更新も朝6時です。

よろしくお願いします。

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