学園祭のメイドカフェとリーダー
「来月の学園祭はメイドカフェに決まった。よかったな野郎ども」
「「「わー!!」」」
朝のSHRで担任の発表でクラスが沸いた。
タケルはあまり興味がなくて何となくスルーしていたが、学園祭があるということでクラスの出し物について話し合っていた。
「メイドカフェ」といっても、シャルやローレットの様に本当のメイドではなく、アキバで見かけるようなアレだ。
もはや、学園際、文化祭で誰か1人は提案するであろう鉄板だったが、実現するには意外にハードルが高い。
まずは、メイドをやる女の子の確保だ。
ノリでワイワイやっているときは良いけれど、冷静になれば恥ずかしがる子が多い。
次に、衣装が思いのほか高い。
ドンキで、5000円ほどで売られているものもあるが、イメクラの様にクオリティは低い。
それなりに見られるものを準備しようと思ったら、1日1500円位。
前日から練習したとして、すぐに返すとしても1着3000円位はかかる。
それで終わりではない。
机やいすは教室のもので良いとして、ある程度の飾りつけと料理やお茶を準備するのは大変なのだ。
なんとかそこまでをクリアしたレベルだと、所詮学園祭クオリティ。
客を楽しませるというようなレベルにまでは達せず、自分たちが楽しむレベル。
何店も店を手掛けているタケルとしては遊びのお店にイマイチ感情移入できないでいたのだ。
それでも決まったというならば、何か手伝おうとぼんやり考えていた。
「じゃあ、今日からリーダーを決めて班分けして、それぞれ準備を始めてくれ」
1限目が始まるまでにクラス中はざわざわしていた。
特にサッカー部の川島、長友、バスケ部の渡辺が大騒ぎしていた。
さらに、クラスのギャル、仁心瑠、希星、心愛もテンションマックス。
そして、彼らが全員タケルの席の周囲の人間ということで、周囲のテンションが上がっていくのに反比例してタケルのテンションは下がっていった。
この周囲が盛り上がると自分が盛り下がる現象に何か名前を付けてくれ、とタケルは机の模様を見ながら思っていた。
「俺がリーダーやっから長友サブね!渡辺はパシリで!」
「バッカ!俺がリーダーだろ!どう考えても!まじな話お前ら2人で補佐ね」
「俺がリーダーでお前らが補佐だろ!」
何とも男どもはまとまりがない。
ただ、自分が取り仕切ろうと主体性を持って動いてくれているのはタケルとしてはありがたかった。
自分が受動的でも大丈夫だからだ。
「仁心瑠メイドやっっちゃう?うちらやっちゃう?」
「うちらがやらなきゃ誰もやんないっしょー!」
「あっし一度やってみたかったからやる気爆上がりー」
後ろの席のギャル3人もうるさいがすごく盛り上がっている。
しかも、メイド役を買って出ると言っているので『メイドを探す問題』も解決みたいだ。
タケルはどんな料理を出すのかな、と市場の店や食べ放題の店『バイキング』の参考にしようと興味を持ち始めていた。
問題はその日の昼休みに起きた。
弁当を食べ終わったタイミングで川島が「緊急会議」と称してクラスのリーダー決めと班決めを提案したのだ。
まだ1か月前だが、色々と準備もあるだろうし、早いことは悪いことじゃないとタケルは思って昼休みは教室に残った。
わいわい騒いでいるが、クラスのヒエラルキー男子頂点の川島、長友、渡辺、3人で誰がリーダーをするかでもめている。
多数決や投票など色々な意見があったが、ついにつかみ合いの喧嘩に発展したのだ。
ギャル3人も目の前でケンカが起きていたら衣装決めどころではない。
「ちょ!」とか「最悪!」とか口ではいうが、男同士のケンカに割って入ることは難しい。
教室の昼休みは前の方で男3人が掴みあう最悪の状況だった。
誰もがこれはどうにならないと思っていた矢先、昼休みだからと『烏尾高校の奇跡』ことユウナギがタケルのクラスに入ってきた。
何やら言い合いやもめ事が起きているようなので、目立たない様に入ってきて、何事もないようにタケルの膝の上に横座りした。
そして、タケルの首に手を回して「ねえ、あれ何もめてるの?」と普通に話しかけてきた。
「タケルー!俺らがもめてるのにそこで普通にイチャイチャすんなし!」
「ぷー!」
笑い出したのはギャルの仁心瑠。
「ふっふふふっ!ユウナギちゃん超マイペースだし!彼氏さんの膝に乗ってるし!」
「ぎゃはは、マジうける!」
「最高!」
ギャルたちのツボに入ったのか一斉に笑い出した。
勢いに押されて男たちのケンカも止まった。
キョトンとしたユウナギ。
目立ちたくないのでおとなしくしているタケル。
そこでギャル仁心瑠がとんでもない提案をしてしまった。
「こりゃあもう、リーダーは彼氏さんしかないっしょ!」
「彼氏さんがリーダーならユウナギちゃんも遊びに来てくれるし」
「マジ天才!マジ神!」
ギャル達が言い始めたところで、意外にもクラス中から拍手が出てしまった。
(パチパチパチパチ)
誰もが今の状況を回避したいと思っていたのかもしれない。
ケンカまでしてリーダーを取り合った3人だ。
誰がリーダーになっても上手く行く未来は想像できない。
「ほら、タケル、リーダーだって!すごいじゃんっっ」
のんきに囃し立てるユウナギ。
さっきまでケンカしていた3人立ちはバツが悪いのか立ったまま黙っていた。
タケルは本能的に思っていた。
「(まずい、このままではすごく大変なポジションを任される。そして、上手く行くはずがなく、最終的にリーダーが悪かったと非難される)」
クラス中がタケルに注目する。
ユウナギは「どうやって解決するの?」という期待の表情でニコニコしながらタケルを見ている。
タケルは、このまま何もしないと再びケンカが始まることを懸念し、ガタンとわざと音を高めに立てて立ち上がった。
ユウナギはぴょんと横に飛び降りた。
(つかつかつか)
教室の前の黒板に進むタケル。
チョークを持つとチョークを持つと大きく『班分け』と書いた。
『Aチーム メイド教育・接客担当 リーダー カマシマ・ニコル』
『Bチーム 飾りつけ・衣装担当 リーダー ナガトモ・キララ』
『Cチーム 料理担当 リーダー ワタナベ・ココア』
(カカッ)とここまで書き終えたらタケルはくるりと振り返り、みんなの方を見た。
「3チームに分かれて作業を週2回、月曜と水曜の帰りのHRの時に進捗を各リーダーに報告してもらいます。問題が起きた時はみんなで解決するためにみんなで話合いましょう」
そういうと教室は静かになったが、ユウナギが「わー」と言いながら拍手したことをきっかけに、教室から拍手が響く。
誰もが「それなら何とかなる」と思ったのかもしれない。
川島が「俺は山田さんと同じチームかよー参ったなー」と言いながらまんざらでもない様子。
仁心瑠は「カワシマとかマジ最悪なんだけど、超ムリ」と言いながら顔は笑っている。
それぞれわいわい、ざわざわしているが、少しずつ話はまとまる方向になっていた。
タケルがうまい具合に身を引こうとしたところにユウナギが言った。
「じゃあ、総監督はタケルだね。頑張って!応援してるからっっ!」
「おー!総監督頼むぜ!」
「よろしくな!」
川島たちがタケルの背中をバンバン叩く。
どうも悪気はないようだ。
そこからはクラスの誰がどのチームに分かれるかそれぞれ班分けをしたり、具体的な仕事はどのチームが担当するかの話し合いとなり、前向きな会となった」
昼休みが終わるチャイム(次の予鈴)がなった頃タケルはトイレに行っておこうと教室を出ようとしていたら、川島ががっつり肩を組んできて小さい声で「山田さんと同じチームにしてくれてありがとな!良いとこみせないとな!」と言って追い越していった。
「山田さん」とは山田仁心瑠のことだ。
そう言えば、以前から川島は仁心瑠のことを狙っているみたいだったから、ここで目立って気を引こうと思っていたのかもしれない。
それぞれ男女のリーダーを設定したことから、クラスのメンバーは各チームに入りやすくなったし、リーダーは男女ともクラスのヒエラルキートップなので、誰も文句を言わない。
しかも、タケルは『総監督』という訳の分からないポジションになってしまったので、全ての作業に積極的に関わら「ない」。
何もしないのに、各リーダーの見せ場を邪魔しないという大きな仕事をしているのだ。
全く何もしていないのに、最高の結果を呼んだことに満足なタケルだった。
*
その日の放課後、早速問題が起きた。
予算がないのだ。
基本的に高校の学園祭とは予算がないのだ。
クラスで3万円。
リアルな金額だった。
飾りつけ・衣装班が午後の授業中にスマホで調べたところ、メイド服をクラスの女子15人分1泊2日で借りると4万5000円。
既に予算オーバーなのだ。
飾りつけは最低限にするにしてもいくらかは必要だ。
料理担当はメイド喫茶で出す料理について機材が高くて準備できないと言い始めた。
メイド教育・接客担当は、よくあるイメージの「メイド」をやろうとしたら女子たちは恥ずかしくて嫌だと言い始める始末。
しかも、派手なメイド服を着るのに難色を示していた。
早速問題は山積みだ。
この日は放課後約1時間話し合ったが、全く解決の方向に進まず、明日までに各班解決案を持ち寄ることでこの日の会議を終えた。
本当にすいません。
毎日たくさんアクセスをいただくようになったので、いつか本が出せたらいいなと夢を見てしまってすいません。
風の噂で4万ptくらい行けば書籍化されるらしいです。
現在は・・・90pt orz
35話で90ptなので、445倍したら4万ポイントです!
15,575話書けば4万ポイント行くはず!
・・・本当にすいません。
次回更新も朝6時です。
よろしくお願いします。




