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人を我が家に招いてみよう

時間はかかったけれど、僕の家が見えてきた。

途中からは整地した道があったので、ペースが上がったのだ。

やっててよかった整地作業。

近くに町とかあるならそこまでは道を作りたいものだ。


一行は僕の家に着いたけれど、誰も入れないでいるようだった。

どうやら「結界」は人間にも適用されるらしい。


どうしたものかと思いつつ先に入って、「どうぞ」と案内したら全員は入れた。

また一つ新しいことが分かった。

何人なんぴとでも許可しないとこの家の中には入れないのだ。


「狭いですけど、どうぞ」


言葉が通じないのは知っているので、できるだけ安心してもらえるように、にっこりしていった。


人間は全部で7人いた。

内、1人は重傷で寝かしている。

とりあえず、薬箱からステロイド系の軟膏を持ってきて塗っている。

発熱は37.4度と少し高めだけど、呼吸も安定しているし、睡眠が傷をいやすだろう。


6人も同時に座れるようなテーブルや椅子はなかったけれど、幸い今日は木をたくさん伐採した。

木を木材に加工した上で、イスとテーブルに加工して取り出した。




とりあえず、落ち着くようにスープでも出そうか。

キッチンでお湯を沸かして、インスタントのコーンスープを作ることにした。


キッチンにいる間にお客さんたちの会話が聞こえてきていた。


「****だと思いますか?」


「****だろ」


漏れ聞こえてくる言葉が少しだけど分かるようになってきている。

単語を覚えているのかもしれない。

しばらく聞いていよう。


「オマタセシマシタ」


僕はコーンスープを鍋ごと出した。

カップ部屋みんなの目の前で次ぎ分け、1つを持って飲んで見せた。


安全だと知らせるためだ。


「きみ、言葉が・・・」


「スコシダケ分カリマス」


「これは・・・」


「こーんすーぷデス。落チ着キマスヨ」


覚えたての言葉を使い片言で伝わるように言った。


「コーンスープとは・・・?」


「僕ノ住ンデイル町ノ飲ミ物デス。温タマリマスヨ。」


「おお、ありがたい・・・」


さっきと同様に毒見が住んでからお嬢さんも飲んでいるようだった。


「君、この家は?」


「この家は、僕のおじいちゃんの家です」


「おじいさんと2人暮らしなのかね?」


「いえ、おじいちゃんは先日亡くなりました・・・」


「そうか、すまないね」


「いえ、もう、終わったことです」


リビングがざわついている。

どうしたんだろう。


「どうかしましたか?」


「いや、このスープ、おいしいよ!何のスープだい!?」


騎士の一人が興奮して聞いてきた。

異世界ではコーンスープが珍しいのか!?

トウモロコシは庭の畑にも生えているけど、この世界にあるとは限らない。

一応丁寧に答えておこう。


「トウモロコシと言う穀類のスープです。お口に合ったのならよかったです」


「あの・・・」


例のお嬢様が話しかけてきた。


「あ、はい」


「私は、クレア=フィリップ=オーギュスト・ド・ヴィリエ・ド・リラダン=マティアスです、クレアとお呼びください」


あ、貴族の娘さんなんだな。

名前は聞いたけれど、「クレア」以外は全く残っていないよ。


この世界では失礼に当たるのかもしれないけれど、申し出通り「クレアさん」と呼ばせてもらうことにしよう。


「僕はタケルです、クレアさん」


「助けていただきありがとうございました。また、お招き感謝します」


「狭い家ですが・・・、食事も出せますので今夜は泊っていってください。」


「いや、魔の森で野営はかなり厳しかった。正直、助かるよ」


別の騎士が会話に入ってきた。

やはりここは「魔の森」と呼ばれているのか。

それにしても物騒な名前だ・・・


「それにしても外の畑は見事なものだ!これを一人で管理しているのかい?」


「そうです。おじいちゃんが亡くなってからは僕が・・・」


「それに、この食事・・・正直、近所の食堂より、嫁さんの食事よりうまい」


「ありがとうございます」


護衛の人たちは、すごくフレンドリーだ。

助けた格好になったのがよかったのかもしれない。


「あの、皆さんは、なんで魔の森に?」


「わたくしたちは薬草を取りに来たんです。ただ、魔の森に入るなんて蛮行はいたしません。魔物が表れて(現れて)、追われていたんです」


なるほど、普通は人が入らないような場所なんだ。

そりゃあ、1か月モンスター以外誰にも会わないはずだよ。


「ちなみに、どんな薬草を探していたんですか?」


「『ジャージン・ニクニン』と言う薬草で、熱を下げるのです」


「お嬢様は熱があるのですか?」


「いえ、わたくしではなく、お母様が・・・もうずっと痛がっていて、それに熱が出て起きられなくなってしまっていて・・・」


お嬢様は悲しそうにした。

それで護衛を連れて薬草を取りに行った時に・・・

この世界は中々ハードモードみたいだ。


「見つかるといいですね、薬草・・・あ!そうだ!庭にいくらか薬草を植えています。出発までに一応見てください」


「はい、ありがとうございます」


「今日はもう暗いから明日にでも」


「そうですね」


クレアさんは少し寂しそうに笑った。

少し諦めているのかもしれない。

そうだ、食事で元気になってもらおう!


「あ、食事ですが、食べられないものってありますか?」


「そうだな、俺たち冒険者はなんでも食べられる訓練をしている」


クレアの代わりにゴーストンさんが答えた。


「じゃあ、モンスターの肉も大丈夫ですか?」


「おいおい、モンスターの肉には毒があるだろう」


「え?」


「なんだ、知らないのか?モンスターの肉には毒があるんだ。口に入れただけで吐き気を催すし、食べたら最悪死ぬんだぞ?」


「そうなんですか・・・」


ストレージ内のイノシシのモンスターの肉を「鑑定」してみる。

今日狩ったやつはダメだ。

普通の肉ならまだ死後硬直が始まったばかり。

仕留めてから約2時間で死後硬直がが始まる。


そして、死後硬直が解けるまでに30時間はかかる。

死後硬直が解けないと固くて食べられたもんじゃない。


ストレージの中では全く劣化しないので、死後硬直も始まらないが、熟成もしない。

おいしく食べるためには、一旦ストレージから出して、死後硬直させ、それが解けてから骨をばらさないと旨味が増えない。


この1か月試行錯誤しておいしく食べる方法を模索していた。


最初は狩ったらストレージに収納してすぐにバラしていた。

だけど、その後血抜きはすぐやるのと、モンスターの急所である赤い球体も取り出していた。

これを残して肉を熟成させると苦みが出て肉がおいしくなくなるのだった。


粉々にした赤い球体は、元の形に戻したら宝石の原石みたいに少しきれいなので、ストレージ内に保管している。

いつか何かに役に立つかもしれない。


そして、ここに最高の肉を作り上げていた。


一切れのジャーキー(薄切り乾燥肉)を取り出した。

普通ジャーキーは牛肉でやるけど、テストの一環で豚肉でも作ったものだ。


「ゴーストンさん、このジャーキー試してみてください」


「ん?ああ」


「ダメだったら吐き気がするかもしれないので、少しだけで」


「ああ」


ゴーストンさんが恐る恐る小さな一口を食べた。


「う」


あれ?ダメだった?


『ガツガツガツ』


「うまいな!このジャーキー!こんなうまいもん食ったのは初めてだ!」



あれ?


「これは、僕が毎日食べている肉で作ったジャーキーなんですけど・・・」


「ほお、そうか」


「この肉、モンスターの肉です」


ちなみに、イノシシのモンスターだ。


「なんだってーーー!」


「騎士長大丈夫なんですか!?」


「吐き出した方が!」


「いや、これは、毒なんかじゃない、極上のジャーキーだ・・・どういうことだ!?」


「これが何かわかりますか?」


僕はストレージからモンスターの急所になっている赤い球を出した。


「こ、これは!魔石じゃないか!こんなに大きいの!」


「あ、魔石っていうんですか?」


「すごいぞ!ギルドで売ったら2~3万Gにはなるぞ!」


「あ、そうなんですか?」


2~3万Gがどれくらいの価値があるのか分からないけれど。


「モンスターの中には、これが入っていて、時間経過とともに肉に溶けていきます。そしたら、肉は食べられなくなってしまうんです。」


「なんと」


「仕留めると同時にこの魔石を完全に取り出したら肉は食べられます。」


「なんだって!」


あれ?

そんなに驚くこと?


「魔石っていうのは、魔物から極まれにしか捕れないもんだろ!だから貴重なんだろ!」


「そ、そうなんですか?モンスター・・・魔物には全て魔石が入ってますよ?」


「そ、そうなのか!?」


持っていた500個以上の魔石をテーブルの上に出した。


「な!なんだこの数は!?」


「あ、これが僕がこの1か月で捕った魔石です」


「すごいな!これは!おい!みんなきてみろ!」


護衛の人が集まってきた。


「なんすかこれ!ちょっとした金持ちじゃないですか!」


「騎士長!どうしたんですか!?これ!」


「彼が1か月で捕った量らしい・・・」


「すげえ、信じられない」


「これだけあったら、マティアスに家が建つんじゃないか!?」


「家どころか豪邸が建つぞ!」


マティアスって町の名前かな?

魔石ってやつは500個で家が建つらしい・・・

やっぱり人に会うと、色々情報が手に入る。


「つまり、全ての魔物には魔石が入ってて、それを砕くと魔物が死ぬ、と」


「そうです。僕はその魔石を狩ったらすぐに取り出してます」


「これは常識が覆る内容だ・・・おどろいた」


「そうですか?ありがとうございます」


そう言えば、ケガ人が気になるな。


「ちょっと、すいません。席外します」


僕は誉めてもらったのもあって少し照れくさくて席を外した。

いつも僕が使っているベッドに寝てもらったのだけれど、ケガは大丈夫だろうか?


「鑑定。対象は瀕死→重症となっています。人間の筋肉組織を解析できましたので、復元しますか?(YES/NO)」


なんか「復元」って言葉は「治る」に近そうだ。

YESだYES!


ストレージから身体の復元に必要な要素を取り出して、骨・筋肉・内蔵などを復元した。


「鑑定。重症→平常になりました。現在疲れから睡眠状態です。」


よし、大丈夫そうだ。

起きたら元気になるものでも食べてもらおう。


僕はリビングに戻った。


「ケガをした方はもう大丈夫みたいです。目が覚めたら何か元気になるものを準備します。」


「君はヒールも使えるのか!?」


「ヒール!?ヒールって魔法ですか!?」


「そうだ、魔法。」


魔法ってあるんだ!この世界!まさに異世界!


「誰か!ど、どなたか使えないんですか!?魔法!」


「攻撃魔法は使える者がいるが、ヒールは希少だ。この中にはいないんだよ」


「そうですか・・・」


「なんだ、魔法使いに会いたかったのか。マティアスにはいるぞ、ヒール使い」


「そうなんですか!」


一度はマティアスって町に行ってみないといけないな。


肉は大丈夫だと分かったので、夕食はクリームシチューにした。

みんなどれくらいの量食べるのか分からないので、足りなければお代わりしてもらえばいい。


足りなければ、肉をスライスして焼肉にして出せばいいだろう。

一応、ソーセージもベーコンも餃子も控えている。

大皿で出しておけばみんなで捕ってくれるだろう。

無くなったら足せばいい。


「どうぞ」


「「おおー!」」


「おいおい!どうなってるんだ!?こんな魔の森の中でこんなごちそうにありつけるなんて!俺達は化かされてるのか!?」


主食が何かわからないので、スーパーで買ったロールパンと、クリームシチュー、焼肉、付け合わせを出した。


「な、なんだこれ!うまい!」


「おい、騒ぐなよ!」


「だって!これ」


「パン!?パンなのか!?これ!すごく柔らかい!」


すいません、喜んでくれているそのパンは、スーパーで値引きされていたロールパンです。

安かったからまとめ買いしちゃったやつ・・・


「このミルクを使ったスープはなんだ!?」


「君は料理人!?料理人なのか!?」


口々に喜んでくれている。

多分、こちらの世界とは違うメニューだし、目新しくて喜んでくれているのだろう。

いずれにしても、喜んでくれるのは嬉しいことだ。


聞けば、森の中で2日間逃げ回っていたそうだ。

そりゃあ、お腹も減るだろう。

しかも、いつ魔物が襲ってくるか分からない状態で。


重症だったザナさんも一緒に食事をしているが、お客さん7人と僕の8人で30人前は食べた。


予定していた料理のほかに、スパゲティ・ミートソースとハッシュポテトも出した。

さすが体力勝負の仕事。


「はー!食ったー!ありがとうな!タケル!」



ゴーストンさんにお礼を言われた。


「あの、タケル様」


今度はお嬢様だ。


「はい、この御礼は屋敷でさせていただきたいと思うのですが・・・」


なんだか言いにくいのか言いよどんでしまった。

代わりに続けたのはゴーストンさんだった。


「正直今のままではマディアスまでの帰り道が心もとない。護衛として一緒に来てくれないだろうか?」


「ぼ、僕が!?」


「ああ、後付けだがちゃんとギルドを通して仕事にしてもらう」


「ぎ、ギルド!?ぼくはギルドに登録していません」


「なに!?本当なのか!?あれほどの腕がありながら!?」


「分かりました。ご一緒させてもらいます。ギルドも登録しますので、よかったら案内してください」


「もちろんだ!お安い御用だ!」


「おい!一緒に来てくれるってよ!」


「やった!助かったー!」


「方角が分かるんですか?」


「ん?んん。そうだな。森の中はだいぶ迷ったからな」


そう言えば、家の本棚に地図があった。

それを見てもらったら分かるかもしれない。


「ちょっと待ってください」


僕は地図を持って戻ってきた。


「ここに『マディアス』は載っていますか?」


「これは!地図!魔の森の地図か!?」


「おじいちゃんが残してくれたみたいで」


「ありがたい。見せてくれ」


新聞を広げたほどの大きな地図をゴーストンさん、クレアさん、と一緒に見た。


「ここだな、マディアスは」


何となく町だと思っていた場所がマディアスらしい。

見切れいているから大きさは分からないけれど、方角は今日道を作り進めた方角で合っている。


距離にして約30kmくらいか。

何とか1日で歩ける距離だろうか。

何事もなければ。


今日は整地しながら進んだので3kmくらいしか進めなかった。

明日は、ただ進むだけだし、護衛の人たちは僕より身体を鍛えているだろうから行けるだろう。


ただ、お嬢様がいる。

冷感スプレーとか、シップ、冷たいタオル、氷などを準備しておこうか。

一応1日で着かない時のために、ゴザとかテントとか持っていくか。

こんな人数分はないけれど、足りないものはストレージ内の物で構築すれば何とかなるだろう。


宝物庫(?)の剣などを全部ストレージ内に収納して、掃除した上で使ってもらった。

護衛の人たちは基本雑魚寝らしいので、なんとかなった。

一応1人見張りで起きているらしいので、なんとかなった感じだった。


クレアさんは女の子なので恐縮だけど、僕のベッドを譲った。

僕はキッチンで寝袋を使って寝た。


この日は初めてこの世界で人に会った。

すごく疲れた。

人と会うとそれだけでエネルギーをたくさん持っていかれる。


なんだろ「精神エネルギー」かな。

そんなことを考えながらこの日は寝た。

護衛の人たちは寝るのも仕事なのだろう、すぐに静かになって寝てしまった。


疲れたので、僕も坂を転げ落ちるように眠りに落ちていった。



ここで解説しよう!

タケルやクレア気付いていないようだが、異世界人が話している会話の中から単語を聞き取り、感覚的に文法を学び取り、異世界語をマスターしていた。


そして、会話の中から数多くのこの異世界の情報を収集していた。


進捗としては9万文字超えました。

今回は3回目で1話から合計で1万5千文字目にあたります。

まだまだ続きます。


毎日朝6時に更新予定です。

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