それぞれの立場から
クレアSIDE
わたくしは見てはいけないものを見てしまったのでした。
先日のジュース屋さんの件が気になって、ちゃんと繁盛しているか見に行った時のことでした。
いつものようにタケルさんが市場にいました。
相変わらず、色々な方に声をかけられていて信頼されているのが手に取るように分かります。
でも、今日はちょっと状況が違いました。
年頃の女性をエスコートしているのです。
服装から見ても、顔立ちから見てもマティアスの方ではないのはすぐに分かります。
黒髪ショートで、見たこともないお召し物、きっとタケルさんの関係者。
年頃の女性があんなに男性と仲良さげに話していらっしゃることから、ただならないご関係と推察いたします。
もしかしたら、ご結婚されている!?
そもそもタケルさんは魔の森のあのお宅で一人暮らしをされていると聞いていました。
それなのに、どこからかご関係者が?
どこかから旅してこられたのかしら?
それにしては軽装すぎる。
タケルさんと女性はテーブルについて食事を始めてしまいました。
わたくしは、見なかったことにしてこの場を離れることにします。
それがベストチョイスかどうかは分かりませんが、とにかくいったん退却して体制を整えないと・・・
「クレアさん、どうしたんですか?」
「(きゃびーん!)」タケルさん!?どうしてここに!?
ついさっきまでテーブルにおられたのでは!?
殿方には見られてはいけない場面があるのでは・・・
ゆっくりと後ろを向きました。
「タケルサン、ゴキゲンヨウ」
ちゃんとご挨拶できたか不安です。
こんな時どんな顔をしたらいいのか、わたくしには経験がなく・・・
あれよあれよと言う間に女性のいるテーブルに連れて行かれてしまいました。
どうしたらいいの?
どこに座るのが正解なの?
わたくしの習ったマナーでは、このようなときにはどこに座るのが良いのかなんて出てこなかったわ。
シャル!なぜ近くにいないの!?
今こそあなたの出番よ!
先に椅子を引いて、わたくしが座るべき席へと誘導してっっ!
結局、タケルさんの誘導でタケルさんの横に座ってしまったけれど、わたくしはここにいていい存在ですの!?
何とか挨拶はできましたわ。
顔が引きつっていなかったかしら・・・
タケルさんが紹介してくださるわ。
「こちらは、お世話になっている屋敷のご令嬢でクレアさん」
どうしてですのー!?
どうして、『婚約者』と紹介してくださらないの!?
もしかして、あちらが本命の婚約者様!?
そうなると、わたくしは側室。
タケルさんは複数の女性を娶ると思っていたし、マティアスでは複数の奥さんを持つことは珍しいことではありません。
でも、正室はわたくしだと思い込んでしまっていた。
年齢的にも背格好的にもお似合いなのが「ユウナギ」様。
「幼馴染」と言うのは、幼い頃からの婚約者と言うことでしょうか!?
ああ、何を話したらいいのか何も思いつかないわ!!
*
ユウナギSIDE
タケルったら食事の最中に急にいなくなったと思ったら、小さい子を連れて来たわ。
さっきも小さい子たちに懐かれていたようだけど、この子は明らかに何か違う。
タケルを見る目が他の子供たちのそれとは違うわ!
私のセンサーが「最大警戒」を鳴らし続けている。
クレア・・・さん?
紹介されたけど、なぜ彼女から先に紹介するの?
たしか、紹介する時って身内から紹介すると聞いたことがあるわ。
誰なの?この子。
「お世話になっている」ってどういうこと!?
金髪ロングだし、アニメや漫画に出てくるヒロインまっしぐらな子。
上品だし、物腰柔らか。
話し方も柔らかいし、笑顔が素敵。
この子を好きにならない男がこの世にいたら見てみたい。
タケルも完全に心を許している目をしている!
タケルが紹介できないでもたもたしていたら、横から服の袖を引っ張って紹介を促したわ。
ただの子供じゃないわ。
何なの!?
どこなの?ここ!?
どうしてこうなってしまったの!?
セーブポイントがあるなら戻りたい。
情報過多でこれ以上の情報を受け付けない。
でも、この子のことを聞きたい。
明日も更新は朝6時です。
よろしくお願いします。




