新しい家族
庭へ出るようになって木に登ったり水遊びしたり泥んこ遊びをしたり
私は毎日元気に外に出て遊んでいた
そんなある日、朝食の時間に真剣な表情の父が話しはじめた
「○△□、新しい家族ができるとしたらどうだい?」
新しい家族
妹か弟!
「嬉しいです!」
絶対可愛がる
「そうか、やっぱり○△□はいい子だな。明日からよろしくな」
喜ばしい出来事なのに浮かない顔の母の表情が気になったが
私はまだ見ぬ新しくできる家族に胸弾ませた
翌日
「こっち見るなブス」
父と共にやって来たは弟でも妹でもなく、まんまるい少年だった
「今日から家族になるアルだ。それとうちの○△□は世界一可愛いからな」
「はぁ?親バカかよ!オレが家族になんかなるわけないだろ!オレ様を誰だと!」
「今のはフォンタナー家の一員になれて嬉しいということの裏返しだな
はっはっは、アルは照れ屋さんだな。○△□、仲良くしてやってくれな?」
バチコーンとウインクをしてきた父を華麗にスルーし私は項垂れたまま部屋に戻った
妹か弟だと思ったのに、あんな可愛くない、まん丸饅頭が来るなんて!
我が家にやってきた少年は、よく言えば饅頭のように悪く言えば豚のように太っていた
その上、好き嫌いが多くやれ美味しくないとシェフにすぐ文句を言うし
何か気にくわないことがあるとメイドさんや執事さんに当たり散らす
幸い母や父に八つ当たりはしないが、
私に会うと「お前生意気なんだよ」と見えないところを抓ってきたり
「はっ!ブスがオレ様と話せることを光栄に思え!」と意味不明なことを言う
この豚をどうやって家族だと思えと言うんだ!
私はたまったストレスを一心不乱に泥団子作りをすることで発散していた
すると部屋の方にあの豚が見えた
そっと物陰に隠れながら覗くと豚は母の部屋を見ていた
母の部屋に何の用が? まさか!ついに母にまで八つ当たりするつもりか!
許さん!豚め!!
今度こそ豚を成敗してやると意気込むと後ろからセバスチャンに捕まった
「セバスチャン邪魔するな!今日こそあの豚を!モガモガ」
「お嬢様、アル様です。豚ではございません。少し静かに様子を見ましょう」
部屋から母が出て来ると豚は物陰に隠れた
そして豚に気づいたが母が微笑むと真っ赤になって去っていった
あれか、豚は母に惚れているんだな
母の魅力にメロメロになるのは父と私だけではないらしい、流石、母!
そんな豚の一面を見た日もあったが、相変わらず豚は豚だった
日々、虐げられている私であったがそろそろ仕返ししてもいいと思う
豚は外に出ることを嫌がる
我が家の庭はこんなに楽しいところなのに、あの豚は出るのを嫌がるのだ
1度一緒に遊ぼうと誘ったところ突き飛ばされた
それ以来誘ってやらない
そして豚は怖がりだ
夜に物音がすると騒いでいたことがあった
そこで考え出される答えはひとつだ
そうと決まれば準備しなくては!
私は昼寝をたっぷりし、みんなが寝静まるのを待つと隠し通路を歩く
この通路は本当に便利でどの部屋にも通じている
豚の部屋に行って豚を思う存分怖がらせてやろう、フハハハハ!
豚の部屋に入ろうとすると中から明かりが漏れていることに気づいた
まさか、寝ていないだと!?
「……うえ ひっく はは……ひっく」
そうっと覗くと豚は泣いていた
それを見て私は隠し通路の扉を閉めようとした
ガゴン
「!?誰だ!?」
閉めようとしたのだ、なのにうっかり蹴つまずいてしまった
こうなったら腹をくくるしかない
「フハハハハ、豚 覚悟!」