デビット2
最近小動物への虐待が相次いでいる
王都の住民からも被害を訴える声が上がっており
しかも被害者が人間ではなく小動物ということで
騎士団といっても貴族ばかりの第1騎士団だけではなく
俺ら第2騎士団にお鉢が回ってきた
我ら騎士団も見回りにあったっていた
だが、見回りのルート以外で事件は起こる
……誰かが騎士団の巡回のルートを流しているとしか思えない
仲間を疑うわけではないがそんな声が上がっていた
心配事はそれだけではない
この間、街で見かけた○△□嬢のことだ
なにやらガラの悪い奴等に絡まれていたようで助け出したが
ロミオが言うにはしょっちゅう街に出ているらしい
5歳の子を街に出すなんて誘拐してくださいと言うようなものだろう!と
ロミオを怒鳴りつけたが当のロミオといえば
「大丈夫、大丈夫」とのらりくらりだ
「うちの○△□を誘拐したいなら戦車でも持ってこないと無理かな?」
なんて、笑っていたぞ
しかも、
「ラビット、そんな気にしすぎるとハゲるよ」
だと?
お前が娘が困っていたら助けろと言ったんじゃないか!
全くロミオと関わるとロクな事がない
「隊長!今日の巡回ルートどうするっスか?」
今日の巡回は王都の東側だったか?
しかし、情報が漏れているかもしれない今の事態では……
「今日は西側を強化して巡回する」
「西側ッスか?了解しました!伝えます!」
急遽巡回ルートを変更し、夜間の巡回に出かけた
勿論、西側だけでなく王都全体に見回りは行なっている
『…………………………よ
…………と…………』
『…………………………………だ!
…………………………………………よ!』
その時にとらえたのは何やら揉め合う声だった
見ると騎士団の仲間であるペリエの息子のエリオットが
黒づくめの奴等に捕らえられているのが見えた
そして、傍らには傷ついた小動物の姿が
アイツらが最近の動物虐待犯か!?
「そこまでだ!」
「た、助けてください!
こいつらが動物達を虐めてたです!!
止めた僕らに殴りかかって来て!!」
やはり、コイツらが犯人か……
黒ずくめの連中を騎士団が取り囲む
しかし、奴等ときたら
いや、黒ずくめの1番小さい奴が笑ったのが分かった
コイツ、出来る……
「ふはははは、人質が惜しくば動くなよ騎士団諸君!」
黒づくめの奴が黒い禍々しい剣を人質の少年達の首に押し付ける
「人質を離せ!」
「離せて言われて誰が離すか!
そこから1歩でも近づいたらこいつらの首と体は永遠にサヨナラすることになるぞ」
あの禍々しい剣からその言葉が嘘でない事が伝わってくる
「やめろ!息子に手を出すな!」
ペリエが叫ぶ
が、それは奴等を喜ばせただけだった
その証拠に黒づくめの奴は笑いながらエリオットを刺したのだ
仮面で隠れていたが俺には分かった
奴は殺しを楽しんでいる!ックソ!
「うぉおおおお!!エリオットォオオオ!!」
ペリエの叫びに呼応するようにエリオットの体を黒靄が包んでいく
……これは何だ?
噂に聞く、呪術というやつなのか……
「ヒィ!」
「怯むな!隙を狙え!」
隙などない
一見、あの黒づくめは隙だらけだ
だが、後ろに控えるタキシードの男とボンテージの女は隙がない
俺たちが動けば襲ってくるだろう
それにあの黒靄だ……
「いくぞ!アイツらを捕らえろ!」
俺たちが動き出すとやはりと言うべきか黒靄が動き出した
1人、1人と黒靄にやられていく
だが!俺は負けるわけにはいかない!
「魔術師か!?
この程度で俺を倒せると思うなよ」
黒づくめに剣を振るうがまるで何かに阻まれるように剣が当たらない
「………………」
クソ!魔法を詠唱しているのか!?
見えない何かにに殴られる感覚を受けながら
ここで俺が倒れるわけにはいかないんだ!友との約束も果たせず
こんなところで……
い……いかん、黒靄を吸い込んだか……
俺も……ここまで……なのか……
しかし、あの黒づくめは俺の頭を指差して言ったのだ
「このハゲー!!」
思わず言ってしまった!
「ッツ!?お、俺はハゲてなどいない!っがは!」
俺は決してハゲなどいない!
たとえ爺さん、父とツルッパゲの家系であったとしてもだ……
俺は違う!絶対に違う!
目の前が急に暗くなり体から力が抜けるのが分かった
……ふざけるな……こんな死に方……死んで……死に……切れるかよ……
黒づくめの奴が何か俺に囁く
俺は必死で体を動かすが体は言うことを聞かない
唯一まだ動く口で
「ま、まて……お前らは」
「私たちはアクヤークダ!」
「アクヤークダ……お前達の名は覚えたぞ」
コイツらだったのだ!!
ここ何年か事件の度に出てくる通りがかりの黒づくめとやらは
何が通りがかりだ
こうして世に出てくる機会を伺っていたというのに俺は!!
こうして俺の意識は闇の中に沈んでいった
次に目覚めた時は
地獄でも天国でもなく見慣れた路地に横たわっていた
「隊長!大丈夫っスか!?」
先に倒れた筈の部下達が誰1人欠けることなく、そこにいた
「俺は……お前達は無事か?」
「はいっス、俺たちあの黒靄にやられたんスけど
なんとか無事だったみたいス
それにあの人質達も……無事とは言い難いっスけど……」
部下の指差す先には息子を抱きしめるペリエと
「父さん、ごめん!
俺が騎士団の巡回ルートを流してたんだ
それに俺が教授の為とはいえ動物達を!
俺たちはなんていうことを!」
「ボボクタチはなんてことを!!」
「おお、神よ!罪深い我らを許したまえ!」
泣き崩れる人質達……
何が起きているんだ!?
昨夜のアクヤークダは何だったんだ!?
俺は昨夜の出来事を上層部に包み隠さず報告した
そして出てきた新聞がこれだ
『変質者出現!?』
内容はアクヤークダと名乗る不審者が騎士団を襲ったが
勇気ある騎士団はこれを撃退!
しかも、アクヤークダは最近多発している動物虐待の犯人でもあるらしい!?
事実ではないことばかりが書かれたデタラメな記事だ
俺たちは撃退など出来ていない
一方的にやられたのだ!!
しかも!動物虐待の犯人は自ら名乗り出ている!
これを上層部に訴えたところ一笑された
「デビットくん、君は何をバカなことを言っているんだい?
騎士団がそんな不審者ごときに負けたと世間に知らしめる気か!?
それにね
今回の自白だってその不審者が言わせたものかもしれないじゃないか!
そうじゃなきゃ!ピレネー家のご子息がこんなことを言う筈もない!
いいかい!今回の犯人はその不審者だよ
そして君の仕事はその不審者を捕まえることだ!
それが出来ないなら分かっているね
分かったなら、さっさと帰りたまえ!」
ックソが!
上層部は今回の件を揉み消す気か!!
「おー、ラビットじゃん!どうした?荒れてるなぁ」
「丁度いいところで会ったなロミオ
飲みに付き合え」
「え?あ、別にいいけど
珍しいな、お前が誘うなんて」
アクヤークダ、今回は負けたが次回は必ず俺がお前達を捕まえてやる!




