クビシメマン!!
今日はゼリー婆について街に行く人だ
ゼリー婆は往診ばかりしていたが石鹸の普及に伴い
診療所を立ち上げることにしたらしい
うちも出資したらしいのだが詳しいことは父が教えてくれない……
「ほら、チビ助ぼーっとしてるんじゃないよ」
「はーい」
ゼリー婆のそばにいる時はチビ助と呼ばれている
別に○△□でもいいのだが……ゼリー婆がセバスチャン達にバレると面倒とのことなので
チビ助で通っている
「チビちゃん、今日もお手伝い?
偉いわね」
患者の中には私をゼリー婆の孫かなにかと勘違いして
飴をくれたりする人もいて私としては嬉しいですかぎりなのだ
「チビ助、湿布を取ってきな」
「はーい」
基本、こき使われているが怪我の応急手当てや病気の対処法など学ぶところが多い
この世界には光魔法という回復魔法があるけれど
光魔法の適正を持っている人は僅かで
……つまり、手当は基本薬草やポーション頼りだったりする
ゼリー婆はその中でも現代の医療の知識が少なからずあって
光魔法の適正もある貴重な人物である
本人は光魔法のことは内緒にしている
なんでも、昔貴族にバレて酷い目にあったらしい
「チビ助!ボサッとしてないでさっさと持ってきな」
「はい!」
午前の診療が終わると往診に出掛ける
前に行っていた娼館や教会に行くこともある
娼館では性病の予防や治療に、教会では石鹸で手洗いの仕方を伝えたり
歯磨きの習慣がつくように話しをしたりしている
だが、年寄りの話だ
長い!眠い!
この間などゼリー婆が話している間にうっかり寝てしまい
周りから笑われゼリー婆に小突かれるという災難にあってしまった!
いや、でも、伝えたいことは短く簡潔に!って言うじゃないか!
でも、ゼリー婆は年寄りと思えないくらい頑張っている
この往診が終わったら午後の診療があって
午後の診療が終わった後でも急患が出たら駆けつけている
「ゼリー婆、なんでそんなに頑張るの?」
「こら!チビ助手を休めてるんじゃないよ!
……頑張ってるんじゃないさね
ただ、目の前で苦しんでいる人がいて放っておけるのかい?」
「……その人による」
母や父、天使ズ、セバスチャンやアン、ウィルにアル、アインと大切な人なら
なにがなんでも助けるだろう
でも、見知らぬ人ならどうだろう……?
「嘘さね
あんたは助けるだろうよ」
いや、それは正義の味方っぽいから嫌だ
「助けてくださいと命乞いしてきたら助ける!」
うん、これが悪役っぽいな!
「なんだいそりゃ?
まあいい……今日は光魔法の基礎だったかね?」
ひゃっほーい!
待ってましたの光魔法である!
「あんたは魔力を使うことにかけてはもう教えることはないからね
呪文さえ覚えれば大抵のことはなんとかなるだろうよ
いいかい、怪我を治したいと思う患部に手を当てて
『光よ 古の女神よ 我は願い 乞う 彼の物に癒しの力を分け与え給え ヒール』
そう言うんだよ」
今までの呪文と比べて長いな……
「でも、使うときは注意おし
これは傷や病を癒すことは出来る
でもね、なくなった体力や血を回復させるわけじゃない
それはまた高度の別の技が必要になる
それにね魔法を使えば大抵の傷も病も治せるが
使い過ぎれば逆に細胞や免疫を酷使させることに繋がって別の病を引き起こすことになるよ
光魔法は他属性の魔法とは違う
使うときは慎重に心して使うんだよ」
ゼリー婆の顔がいつもの飄々とした顔ではなく真面目な顔からも
光魔法は頻繁に使いすぎない方がいいことが伝わってくる
「とは、言っても使わないと技は磨かれない
……だからね!」
ドン!
ゼリー婆が扉を開けるとそこには
どこかしらを怪我をした動物達が
「人体で実験するわけにもいかないからね……」
「え?え?これゼリー婆が動物達傷つけたの!?」
10匹近くいるけどで……
それに犬、猫、兎に……何だこれ?鼬かフェレットか!?
「そんなわけあるかい!
最近、動物を傷つけている連中がいるんだよ」
「え?何そのタチの悪い連中!?ムカつく!」
弱い者イジメっていうか動物虐待はいかんよ!
『ふーん、まあおやつぐらいにはなりそうかな?』
クロがなんか言ってるけど……
「犯人の目星はついてんの?」
「いいや
誰がやってるのかわからないが
こうやって傷つけられた動物は増えるばかりさ
さあ、覚えた光魔法で治してやんな」
「いや、さっき魔法は多用すんなって言ってたじゃん!」
「それはそれ!これはこれさ!」
どうなのよ!
という訳で覚えた光魔法を使って10匹近くの動物を治していった
いや、猫はいいのよ
テイルさんが『おい、じっとしとけよ!』的な視線を猫達に送ってくれるからね
でも、犬はダメだ……
テイルとケンカして逆に傷増やしてるし
……ウィル連れて来ればよかったな
そんな中、兎とフェレット?鼬?は大人しく治療させてくれた
鼬、フェレット?ああもう!フェレットでいいや!
フェレットは傷を治すとどういう訳か首に巻きついてきた
まさか、絞め殺そうと……
『キミに憑きたいんだってさ』
え?また精霊?いや、罰ゲームは結構です
それに助けたのはゼリー婆だよね
「キュー!」
ぎゅう!
『どうしても憑かせてくれないならこのまま締め落とすってさ』
何!?その脅し!?
「……どうしたんだい?」
「……ゼリー婆、精霊様の御成だよ
今度は何の精霊?」
『さあ、契約してみないと何とも言えないね
それとそこの精霊も契約したいみたいだよ』
そこのって……兎か!?
『あのお婆さん、ボクと契約、して、くれま、せんか?』
兎がゼリー婆の前でペコリと頭を下げる
「何って言ってるんだい?」
「ゼリー婆と契約したいってさ」
なんで向こうは人語を話してこっちは脅しなの!?
「精霊様が契約してくださるなんて
じゃが、儂は老い先短い身……」
いや、憎まれっ子世に憚るって言うよ
……睨まれた
『ボク、貴方に、助けられて、嬉し、かったので、貴方の、力に、なりたいんです』
「えっと、どうしても力になりたいんだって」
私は通訳官か!
「欲しいのは役に立つ助手なんだけどねえ」
『助手!なります!だから、名前を!』
「助手になるってさ
名前をつけてって」
「そうは言ってもねぇ」
今、チラリとテイルを見た!
こんなんになったら困るとか思われてるし絶対!
兎はゼリー婆にもう1度頭を下げる
「リオン……息子につけるはずだった名前だよ」
ポン!
そこにはうさ耳のメガネの青年が座っていた
「リオン、素敵な名前です
ボク、貴方のお役に立ってみせます!」
「えっと、加護とやらは?」
「はい、ボクは兎の精霊なので薬草を見つけたりお手伝いができると思います
成体なので人型でお手伝いをすることもできます!」
へえー、成体なら人型になれるのか?
じゃあ、テイルはまだ無理でもクロは出来んじゃないの?
『ボクに不可能があると思う訳?
ハッ!これだからニンゲンは!』
……なんか腹たつ
「キュー」
ギュウウ
く、首が締まっている!!
「アレはなんて言ってるんだい?」
「えっと契約してくれないから絞め落とすと」
なんですと!
なんで私の周りの精霊様はアグレッシブなのばかりなの
地面を叩いてギブアップを宣言する
すると、首を絞める力が緩んだ
……もう、契約しないって選択肢ないよね
「……名前を与える
クビシメマンだ」
「キュ!!」
ギュウウウ
『気に入らないってさ』
地面を叩いてギブアップを伝えるとまた手が緩む
「わかった、フェレットだ!」
ギュウウウウウ
『フェレットじゃないってさ』
地面を叩いて(略)
何!?フェレットではないのか!?
フェレットの精霊でないなら何の精霊なんだ!?
「わかった!イタチだな!」
ギュウウウウウ
『イタチでもないってさ』
地面を叩いて(略)
「……なんだったらいいんだよ」
「キュキュー」
『ご主人様につけて欲しいってさ』
「ハチスケ」
「キュ?」
「ハチスケだ」
「キュー!」
OKらしい
……ダメだったら久兵衛にしようかと思ったのだが
『気に入ったって
良かったねハチスケは風の精霊の幼体だよ』
はい?
『カマイタチって知らない?あれ風の精霊が具現化してる姿
で、コイツはそれの幼体だから
これから風魔法使い放題だね』
え?今でも使い放題だし別にいらなくないか?
「キュキュ!」
……冬には襟巻きがわりで暖かいかもね
こうして頭にテイルを首にハチスケを影にクロを従えることとなったのである




