王妃
私は王妃になるために生まれて来た
私に叶えられぬことなどない
民は私の踏み台
皆、私の望みを叶えるために存在している
なのに、何一つ思い通りにならない
初恋の人はあの忌々しい女を側室に迎えた
私が嫁いで来たというのに私ではなくあの女を見ている
あの女は私を敬っているのでそれは良い
でも、愛しいあの人を奪うあの女は嫌いだ
私が悲しい、辛いと零せば父上がいつも排除してくれていた
だから、あの女の存在が辛いと零した
そうすれば解決する、そう思ったのだ
でも、あの女は生きている
風邪をひいたとかで1週間程寝込んでいたがピンピンしていた
父上が何をしていたのかは知らない
ただ、私は辛いと零しただけだ
父上はあの女の排除するために動いてくれているようだが成果がでない……
愛しい人との間に出来た2人の息子は
上の息子は次の王になるとあって、生まれた頃から乳母に預けあまり関わったことがない
そういえば、昔から可愛げのない子どもだった
私が気まぐれに抱けば何故か大泣きする……そんな子どもだった
上の息子にはあまり愛情が湧かなかったせいか
下の息子には溢れんばかりの愛情をもって接した
欲しがるものは何でも与えたし、あの子は正しいのだといつも教えた
あの子の邪魔をするものは排除し、あの子が幸せな道を歩めるように手配した
息子も私に懐き、母上、母上と寄り添ってくる日々
これが幸せなのかと思っていた
それを壊したのは忌々しいフォンタナー家の小娘
たかが、従兄弟を殴ったからなんだというのだ
あの子に刃向かうのが間違いなのだ
同じ王族とはいえ第2王子と王弟の息子、どちらが立場が上か子どもでもわかる話だ
それを歯向い、あまつさえ噛み傷をつけた小娘を厳罰に処してくれるよう王に進言した
したというのに……王は……我が君は私はの進言を撥ね除けた
そして、私から息子を奪った
愛しい息子と会えぬ日々に私は涙を流した
何故、私ばかりがこんな目に合わなくてはいけないのか……?
父上にはあの女を排除するために動いてもらっている
だから、今度は弟に零した
フォンタナー家の小娘のせいで辛い、悲しいと
フォンタナー家さえいなくなれば……と
こうすればフォンタナー家はいなくなるはずだった
でも、フォンタナー家は生き残っている
弟はおかしくなり、罪を告白すると突然言い出し精神を病んだ為に領地で療養している
まるで人が変わったように、父上に側室様を傷つけてはなりません!
それは姉上のためにはならないのです!などと言い出した
私の為に邪魔なものを排除することの何が悪いことなのか?
我が君にも
「弟は精神を病んだせいで善悪の判断がつかなかったようです」
と、伝えた
我が君は
「……そうか」
とだけ言った
それが久々に交わす夫婦の会話だった
そんな時に息子が帰って来た
フォンタナー家の息子を侍従として連れて来たのはいただけないが
邪魔なら排除すればいいだけだ侍従など替えがきく
それにあの子は私の言うことをよくきく良い子なのだ
なのに……
「今は王妃様とはお会いできぬと申されています」
忌々しい侍従がそう言った
そういえば、この子どもは母上と私に触れようとした下賎な子どもだ
「お前などがイアンの侍従などと!」
手に持っていた扇で肩を打つ
顔を狙ってまたロミオ・フォンタナーに因縁をつけられるのが面倒だったからだ
「ッツ!」
叫び声もあげぬとは可愛げのない……
その日からイアンは私に会いに来なくなった
たまに訪ねて行っても以前のように母上、母上と懐いてくることは無くなった
これは誰?私の可愛いイアンはどこに?
そして、イアンは病弱になったベットから起き上がれぬ日が増えた
そしてあの忌々しい侍従が我が物顔で王宮を歩いている
見かける度に打つのだが、応えた様子もなくケロリとしている
流石はあのロミオ・フォンタナーの息子か……
それに比べてイアンは……
我が君に「国1番の医者を!」と進言したが
相変わらず、イアンは病弱なままだ
そんな時に侍女が面白い話を仕入れて来た
あの忌々しい女のところにあのフォンタナー家の小娘が来ているという
下賤な者同士、お似合いだと思った
しかし、侍女はその後こう言った
「ここは王妃様のご威光を知らしめてやりませんと」
それもそうだなと思った
だから、離宮に向かったのだ
そこでは、あの女の息子と娘が楽しそうにフォンタナー家の小娘と戯れていた
私にはないものがそこにあった
いや、以前はあったのだ
私にはもイアンがいた……なのにフォンタナー家の小娘がそれを奪った
何故、私は1人なのか……何故、私ばかりが……?
相変わらず、私を敬いながらも口答えをするあの女をたしなめ
忌々しいことに我が君の子どもでもある息子と娘を躾直してやろうと扇を打つと
何故かフォンタナー家の娘がそこにはいた
私が打ったのはあの女の息子のはずだが……?
フォンタナー家の小娘は真っ直ぐに私を見た
その目がとても気に食わなかった
私を否定するようなそんな目だった
だから、打った
扇が壊れたので次の扇を出すように命じると
あの女の息子と娘が悪いのは自分達だからと言った
分かっているのなら、何故叩かれない?
それにこの小娘に教えてやらねば王族に逆らうとどういう目に遭うのかを
この小娘の目は相変わらず、私を見据える
何度叩こうと陰りはしない、胸の奥がざわざわする……
今度はあの女が叩かれるという
そうかと思った
私の手が汚れる?
ああ……確かに、そろそろ腕が痛むかもしれない
それに何より飽きた
自室に帰り侍女に腕を手当てさせる
私の手に傷でも残っては大変だ
すると、珍しくイアンが訪ねて来た
「ようこそイアン
今日はどうしましたか?」
「……母上、お話があります」
私は優しく微笑んでいるのにイアンの表情は硬い
「なんです?可愛いイアン」
「先程、フォンタナー家の○△□嬢に会いました
顔を赤く張らせていました」
「それと母にどんな関係がありますか?」
「母上がしたのですか?」
「あの下賤な娘がどうなろうとイアンが気にすることではありませんよ
あなたは自分の健康のことだけお考えなさい」
「母上!
彼女も民です
愛すべき民なのです
無闇に虐げることはおやめ下さい!」
「何を言っているのですかイアン?
母は民を愛していますよ」
私の喜びは民の喜び
民は私の幸せのために存在する
そんな当たり前のことが分からなくなっているなんて……?
「イアン、どうしたのですか?
病気療養から帰ってからのあなたはおかしいですよ」
「おかしいのは母上の方です!
何故、分かってくださらないのですか!」
イアンがあの従順で可愛かったイアンが私に怒鳴る
……ああ、もう本当に私のイアンはいないのだ
「私は疲れました
イアン、下がりなさい」
「母上!まだ話は!」
「私は疲れたと言っているのです」
そう言うと優秀な侍女はイアンを追い出した
どうして……私ばかりが……こんな目に……
涙を流す私に侍女は言った
「王妃様を悲しませるイアン王子などいらぬのではありませんか?」
……そうだろうか?……そのような気もしなくない……でも
「まだイアンは必要よ
だって、イアンは私の息子ですもの」
そうよね、子育ては思い通りにならないものだと聞いたこともあるし
まだ、分からないわ
「ドラチェット伯爵夫人を呼んで頂戴
彼女と美についてお話ししたいわ」
こう言う時は楽しいことをして気分転換しないと……
あのドラチェット伯爵夫人は面白いわ
身分は私に話しかけることができる身分ではないけれど
美しさにかける情熱は私も共感できる部分があるの
そういえば……彼女……年齢はいくつだったかしら?
まあ、どうでもいいわね
彼女の持ってくる入浴剤はとても気持ちがいいもの
今日は色々あって疲れたからゆっくり休みましょう
そして、また零しましょう
民は私の為に存在するのだから




