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目指せ!悪役令嬢物語!  作者: 真ん中
46/85

わたしのおひめさま

ーラララー


ーおひめさまー


ーわたしのいとしいおひめさまー


ーかくれんぼしているのねー


ーてできて デテキテ ー


ーミツケテー


ーツカマエテー


ータベテシマオウー


なんか背中がブルっときた


「ボス、森が見えてまいりました

ここからは歩きの方が良いかと……」


「わかった」


気球を降りて歩き出すとどこからが歌が聞こえてくる


ーラララ ラララー


暗い森の中でどこからともなく歌が聞こえてくる自体がホラーなんだけど……


「珍しいですね、ボスが率先して歩かないなんて……」


私は今ルークのマントを必死で掴んでいる


「ボス、そんなに掴んでいては皺になります

怖いなら手を繋ぎますか?」


「こっこわい!?だっだれが、怖いと言った!?

この私がこおこわいなどあありえないからな!」


「……ボスにも怖いものあったんですね」


「明日は雨ですね」


「ナー」


……だだから、怖くなどないと言っているだろう?


「あれを見てもですか?」


ルークが指差したのは如何にもお化け屋敷というような

ボロい洋館だった


……こんなの上から見た時は見えなかったけどな……


「ここんなの、ただだのボロい洋館だ!

よよゆうだ!い、行けルーク!進むのだ!」


「…………」


「…………」


ギィ


ひとりでに扉が開く


「我々を招いている……ということでしょうか?」


もう……帰りたい……


「ほら、ボス行きますよ」


「う、うん」


ボロ屋敷の中は暗くランプを灯す

辺りがぼんやり明るくなると人形に囲まれていることがわかった

大小様々な人形、前世で見た市松人形もあれば西洋人形もある

それぞれどこか欠けていたり、割れていたり、破れていたりしている

ただ、目だけがギョロリとこちらを向いていた


「これは盛大なお出迎えですね」


ムチを構えるアン


でも、人形達はこちらを向くだけで攻撃して来ない

いや……攻撃して来ないからこそ不気味というか……

目が逸らせない……というか……


そんな時だ


「……オイ……シソウ……イ」


人形のクビが目の前に落ちてきたのは

人形のクビと目が合うと人形はニタリと笑った


「ニィギャアアアアア!!!」


「え?ボス!?」


「ボス、お待ちください!」


無我夢中で走った

あの人形から逃れるために……

気がつくと、クイーンともルークとも離れ離れになっていた


「……フゥ」


呆れたように頭上のテイルもといシロが息を吐く

とりあえず、1人ではないことに安心しつつ

元来た道を帰ることにする

うん、だって怖いし

全く役に立ってはくれない精霊だがいないよりはマシだ


そんな事を思ったからだろうか

珍しくシロが頭上から降りてきた


そして、ついて来いと言わんばかりに先を歩き出したではないか!


「待て!シロ置いていくな!」


さっさと来いよと言わんばかりに闇の中に消えていくシロ

お前、私の魔力を食べるだけ食べてポイか!?


『ここの下から○△□の魔力が流れてるよ』


クロがそう言った場所は

大広間だと思われる場所だった


ここにも人形がいる……

そして相変わらずどこか壊れていて目玉がこっちを見ている

もう……嫌……

泣きそうになっていると


『ハハッ、君の泣き顔ってすごくブサイクだんだね

ウケる』


と優しさの欠片もない言葉を叩きつけるクロと


「フシャー!」


と人形に飛びかかっていくシロ


やめて!ますます壊れたら不気味になるから!


『地下から魔力が流れてるから隠し扉でもあるんじゃない?』


……この状況の中で探せと……?


壁を叩こうものなら人形がカタカタ動くし……音が聞き分けられない

床板はどうだろ?


もう……面倒くさい……っていうか怖すぎて……もうヤダ……

魔力で思いっきり叩いて穴開ければいいじゃない?

そうと決まれば早速!


ドゴォ!


よし!穴が開いた!


さしあたって罠とかないよな?

もう……この家……何があっても驚かないよ……


「ニ?」


「勇敢なるネコミミの精霊様

罠がないか確かめて来てくださいませんでしょうか?」


「ニニ」


首を横に振るシロ

そうか、そうか助けてくれるか


「ニャニャ!」


首を取れるかというくらい横に振るシロ


「さすが、精霊様です

ニンゲンの役に立とうなどと心優しい……というわけでよろしく!」


穴の中にシロを放り込む

……多分、精霊だからなんとかなるだろう?


いや、さっき私が怖がっているのに……

わ・ざ・と人形を壊して遊んでいたからって根にもってないよ


「うわぁ!なんだ!?」


「ウニャニャ!?」


あれ?この声聞き覚えがあるような?


「下にいる人、どいてね

よっと!」


穴の中に飛び込む


すると生臭い鉄の匂いが鼻をつく


「グア!」


「っとと!うわっ!」


「シャー!」


何か柔らかい踏み心地と頭の上にシロが飛びかかかってくる


「いや、無事だったんだからいいじゃん!」


「フシャー!!シャー!!」


だから、フード被ってるから爪立ってたって痛くないんだってば!


「……オイ……どけ……重い」


おお!私が踏んでいたのは少年だった

ん?


「お前また!」


「どちらさんで?」


少年は私を知っているらしい


「バスカスの屋敷でも、あの人斬りの時も会っただろうが!」


「ああ、あの毎回何故か事件に出くわす不憫な少年か!

暗いから分からなかった!……って、また捕まってるの?

君、あれだね……お祓い行っときなよ」


私も帰ったら行っておこう


「うるせぇ、好きで捕まってるんじゃねえよ!

っつか!大声出すんじゃねぇ!アイツラに気づかれる!」


いや、出してるの君だよね

それに魔力で床ぶん殴って穴開けた時点でバレてるよ

さて、この悪趣味な屋敷の主人と対面するといたしましょうかね

そういえば……アン達はどこに行ったんだろう?

少年の縄を解いてやりながら、他の子どもの居場所を聞く


「ああ、他の部屋にいるぜ

ウジャウジャとな」


……もっと他の表現ないかね少年よ?


「うわっ!キタ!」


カタカタカタカタ


ーラララー

ーおひめさまー

ーわたしのいとしいおひめさまー

ーかくれんぼしているのねー

ーてできて デテキテ ー

ーミツケテー

ーツカマエテー

ータベテシマオウー


人形がどんどん集まってくる


「少年、私の盾になるんだ!」


「なんでそうなるんだよ!?お前助けに来たんじゃないのかよ!」


少年の後ろに隠れながら魔力で人形達を吹っ飛ばす


「ほら!道は作ったぞ!進め少年!」


「……お前、本当に何なんだよ……ったく……」


カタカタカタカタ

吹っ飛ばした人形達が追いかけてくる


ーラララー

ーおひめさまー

ーわたしのいとしいおひめさまー

ーかくれんぼしているのねー

ーてできて デテキテ ー

ーミツケテー

ーツカマエテー

ータベテシマオウー


「来るなぁ!急げ少年!」


「急いでるっつの!」


わらわらと人形達は増えていく

もう捕まる!っと思った時だ


「我は乞う 我は祈る 我が声に応えよ ファイアー!」


聞きなれた声がそこにあった

頼りになる我らがスーパ執事!!


「セバスチャンじゃなかったルーク!!」


「ご無事でしたかボス」


ルークだけじゃなくクイーンもいる!


「さっきの凄い物音を聞きつけまして

あんな音を出すのはボスしかいないと思い駆けつけました!」


ルークが魔法で人形達を燃やしていく


ーギヤ ギヤ ギヤー


人形達は目玉だけを残して灰になっていった


「行きましょうボス」


「ボス、この少年は?」


「うん?私の盾だ!」


「ちげぇだろうが!?俺はウィルだ」


ウィル、はて?聞いたような?


「……ヴォルフの孤児院で行方不明になっている子どもの1人です」


ルークが耳元で囁く


ああ!そういえばそうだった!

すっかり忘れていた!


「他の部屋にエイミーちゃん達がいるらしい」


「それは……行きましょう」


隣の部屋には他の子ども達が眠らされていた

……だが、テオとメオの姿がない……エイミーちゃんの姿がも……


「っちくしょう!バケモノめ!」


「テオ!危ない!


「メオ!」


あれはテオとメオの声!?


他の子ども達の救助はセバスチャンに任せアンと共に声の方へ走った

セバスチャンなら人形達に囲まれても火魔法で燃やすことが出来るからな!


「え?おい、待てよ!」


何故かウィル少年もついて来てしまった

……ついて来たものはしょうがない盾になってもらおう!


そこで見たものは

大きな蜘蛛のバケモノだった

テオとメオは蜘蛛のバケモノに木の棒で応戦している

無茶だ!


とりあえず、実態があれば怖くない!


「少年達!危ないからここは下がりなさい!」


アン、ノリノリだな


「ダメなんだ!あそこにまだ友達が」


メオが指差す方にはエイミーちゃんが

まるで蜘蛛が守るようにエイミーちゃんを抱きかかえている

これじゃ、魔力で攻撃できない!


「ボス、私にお任せを!」


アンのムチが蜘蛛の足を切り裂く

蜘蛛は緑色の液体を流しながら鎌のついた足を振り下ろして来る


「今のうちにエイミー様を!」


蜘蛛がアンに気を取られているうちにエイミーちゃんを魔力で浮かせこっちに運ぶ


ーだめー

ーわたしのおひめさまー

ーつれていかせないー

ーこんどこそ まもるのー

ーわたしのおひめさまー

ーイタイ ツライー

ーカナシイ サビシイー

ーユルセナイ ユルサナイー


蜘蛛が口を開く

その声は悲しげで……なんか可哀想だった


「おい!何ぼけっとしてるんだよ!?」


アンに攻撃されて緑の液体を飛ばしながらも

エイミーちゃんに向かって足を伸ばす蜘蛛


なあ、クロ

この蜘蛛は本当にに悪いやつなのかな?


『なあに?お友達攫われて怒ってたんじゃないの?』


うん、それは怒ってた

人形は不気味で怖いし……でもさ、この蜘蛛は怖くない……なんか可哀想だ


『可哀想ね……傲慢だねニンゲンは

こいつは悪霊だよ

自分の意思じゃもうどうしようもないところまで来てる』


精霊のなり損ない?


『負のエネルギーが強すぎて悪霊になったのさ

こうなったらボクでも食べ尽くしてやることしかできないよ』


この間の鋼の精霊みたいには?


『できないね

言っただろ?食べ尽くしてやるしかできないって』


…………


『覚悟を決めなよ

キミが守りたいのはあの蜘蛛?それとも友達?』


……友達


『なら、やるしかないね』


「キャア!」


クイーンが蜘蛛に吹き飛ばされる!


『キミが守りたいものは何?』


私が守りたいものはアンやエイミーちゃんやセバスチャンやテオやメオだ

だから、ごめん……


「我は乞う 我は祈る 我が声に応えよ ファイアー!」


蜘蛛の目に炎を当て、身動きできなくなったところを


「おいで……クロ」


蜘蛛の顔面を闇の剣で刺した


ーわたしの おひめー


クロが闇を食べ尽くしている間

今回はちょこっとだけ映像が見えた


映像の中で女の子見た

エイミーちゃんと同じドリル髪の女の子が

同じドリル髪の人形を抱いている

女の子はだんだんと成長し大きくなる

赤ちゃんからアンぐらいの年頃になった時

女の子は戦争に巻き込まれて死んでしまった

どうして?どうして?わたしのおひめさまはどこ?

どうして?どうして?まもれなかったの?

さびしい……くるしい……かなしい


……ただ、悲しい感情だけが伝わって来た


クロが闇を食べ尽くした時

そこにあったのは

白骨化した骸骨が残っていた


「ボス、これは?」


「……蜘蛛の正体」


きっとあのドリル髪の女の子の母親だったのだろう……


「助けてくれたことは礼を言う

でも、あんたら何者なんだ?」


メオがそう言った


「私たちは通りすがりです

あなた達が見たのは夢……だから、おやすみなさい」


クロの力を使ってテオ、メオ、ウィルを眠らせる

そして、騎士団詰所に子ども達を置いた

とてもじゃないが今回は人数が多くてこれ以上運べなかった


「ボス、どうされましたか?」


「 蜘蛛、悪いやつじゃなかった……可哀想だった

でも、どうすることも……できなくて……」


「……お嬢様はその力で多くの子ども達を救いました」


「私もお嬢様に助けていただきました」


「でも……」


でも……なんか悲しい


「それも成長ですよ」


セバスチャンが頭を撫でた


『そうそう、あの程度で感傷的になってたら

ボクに食べられて終わるだけだよ

割り切りなよ』


そう簡単には割り切れないよ


『ならキミの守りたいものは何なのか自分の心に問えばいい

キミなら分かるはずだよ』


月の綺麗な夜だった

でも、とても悲しい夜だった


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