小さな恋のはじまり
やっぱりというかなんというかフィル様はアインの弟だった
「どこが引っ込み思案だよ!」
フィル様から送られて来た花束を見せながらアインに詰め寄る
「知るか!会ったことないって言っただろ!
だいたい、ゴンちゃんって誰だよ!」
「……2人とも落ち着けよ
オレ、セバスティアンの目が怖い」
そういえば、今はセバスチャンのお説教の真っ最中だった……
「お2人は反省が足りていないようですな」
「いや、ほんと反省してます」
「俺は反省しているが○△□は反省していない」
何故、バレた!?
いや……セバスチャンにバレなければ問題ない……はずだ
「貴族の令嬢や御令息に駆けっこをさせるなど一体何を考えておいでなのですか」
「いや、あれは彼等が自主参加したのであって……私が唆した訳では」
「初めになさったのはお嬢様では?」
……ハイ……そうです
「しかも、ヒューストン家のご令嬢を泣かせたとか……」
「泣かせたのはアイン!私、巻き込まれただけ!」
「はぁ?俺こそ巻き込まれただけだ!原因は○△□だ!」
「お2人とも本当に反省しておられますか?」
「心より反省しております」
「○△□、嘘くさいぞ……」
煩い、お前も頭を下げるんだよアイン
「お嬢様、ヒューストン家のお嬢様がお見えです」
アンがエイミーちゃんを連れてやってくる
そうだった!今日はエイミーちゃんと遊ぶ約束をしてたんだ!
「いらっしゃい!エイミーちゃん!」
窓から見えたヒューストン家の馬車に手を振る
今日も金髪のドリルが光ってるね!
「はぁ……お嬢様、お説教はまた後にいたしましょう」
やった!お説教は終わった!
「……お前、今日ヴォルフ達とも遊ぶ約束をしてただろうが!」
……そういえば……
……まさかのダブルブッキング!
「だ、大丈夫!エイミーちゃんも連れてヴォルフ達と遊べば問題ない!」
「……またセバスティアンに怒られても知らないぞ」
「なんで?」
「……いや、もういい……」
「あの、お邪魔しますわ……ってまたあなた方ですの?」
エイミーちゃんは部屋に私だけでなくアルとアインがいたことに驚いたようだ
「よお!」
「こんにちは」
「エイミーちゃん、いらっしゃい!
さ!遊びに行こう!」
「え?ちょっとどこに行くんですの?って、え?
どうして壁に階段が!?え?入るんですの!?」
エイミーちゃんの手を引いて隠し通路を開ける
「いいから、さっさと行けよ」
アイン……女の子には優しくしろよ……
そうじゃないと……モテないぞ……
「大丈夫、ここは薄暗いから転ばないようにね」
……アルのやつは猫かぶってるし……
アンとセバスチャンにバレないように認識の魔法で部屋で遊んでいる風に見せてっと
「この道、どこに続いてるんですの?」
「うん?外だよ」
「そっ外!?そんな困りますわ!お父様に許していただかないと!」
外に出るにも親御さんの許可がいるのか……?
そういえばうちも昔はそうだった……かな?
「もう遅い、ほら行くぞ」
「こら、アイン。強引でごめんね」
「街は楽しいよエイミーちゃん」
「……仕方ありませんわね」
隠し通路を出て、孤児院へ行くとヴォルフ達がいた
「よお!アル遅かったじゃねぇか!」
「ああ、ちょっと……な」
「アインお兄ちゃん!」
「アインお兄ちゃん、今日は何持って来てくれた?」
アルのところにはヴォルフがアインのところにはルノとタオが
あれ?私のところには?
「まあまあ、拗ねるな拗ねるな
俺たちが代わりにいてやるからさ
相変わらず可愛いなテイル」
テオとメオがいてくれた!と思いきや……目当てはテイルか!
テイルは喉を鳴らしてテオとメオに抱かれている
「ん?そっちのお嬢様は誰だよ?」
「エイミーちゃんだ!」
「……エイミー・ヒューストンですわ
どうぞ、お見知りおきを」
エイミーちゃんがお辞儀をする
「おお!お嬢様だ!」
「本物のお嬢様だ!」
「グリングリンのドリルだ!」
いや、テオ、本物のお嬢様って私も一応お嬢様だぞ
「ねえ、ネコのお姉ちゃん
ぼくね、泥団子上手になったんだよ」
タオがそう言ってなかなか立派な泥団子を見せてくれた
「やるじゃないか!タオ!」
「うん!ネコのお姉ちゃんに教えてもらってから
ぼく頑張ったんだ!」
「……それ、なんですの?お団子にしては茶色い……」
「泥団子だよドリルのお姉ちゃん
お姉ちゃんも作る?」
「泥団子……いえ、わたくしは結構ですわ」
「そっか……残念」
タオは本当に可愛いなあ
この間、あざとい可愛さのフィル様を見たせいか
自然な可愛さのタオが本当に可愛く見える
「えへへ、ネコのお姉ちゃんに撫でられるの好き」
もう、いくらでも撫でてやるともさ!
「……可愛い」
エイミーちゃんもタオの魅力にメロメロだ
うん、可愛いは正義だ
その時だ
頭上から大量の水が降って来たのは!
「キャア!」
「ブハッ!」
痛い……鼻に水が入った
こんなことが出来るのは
「アールー?」
「悪い、ちょっとコントロール間違った!」
いや、私はいいけどさ
「折角のお洋服が……お母様と一緒に選んだのに……」
……アウトだよねコレ
「ふぅぇえええ!」
あーあ、エイミーちゃん泣き出しちゃった
「エイミーちゃん、泣かないで
服なんて乾かせば大丈夫だよ」
「そうだよ!だから、泣くなって!」
「ごめんよ、泣かないで」
私とアイン、アルが慌てて泣き止まそうとする中
ヴォルフがヒョイとエイミーちゃんを抱き上げた
「服が濡れたぐらいで泣くなよ
シスターに乾かして貰えば大丈夫だからさ
それよりもっと楽しいことして遊ぼうぜ」
ヴォルフが小さい子をあやすようにエイミーちゃんの頭を撫でる
「……楽しいこと?」
「ああ、とっても楽しいことさ
このアルとちんちくりんがいればスゲェことが出来るんだぜ」
ちんちくりんって私か!?
……ま、まあ、エイミーちゃんが泣き止んでくれたならいいけどさ
エイミーちゃんはその後、汚してもいい服をシスターから借りた
私はいつでも汚れてもいい服だから問題ない!
「どうせなら、前に○△□が言ってたプールを作ろうぜ」
「いいよーよいっしょ!っと」
土を魔力で固めてプールを作る、大きいのと小さいのだ
勿論土が溶け出さないように魔力でしっかりコーティングした
そこにアルが水魔法で水を入れる
大きいのにはそこそこの深さで
小さいのには1番小さいルノの膝下ぐらいまでの深さのプールが出来た
……ルノやタオが溺れないように注意して見とかないと……
そんな中、年長組は水遊びを始めていた
わっはっは、遊ぶがいい!
こんな暑い日は水遊びが1番だ!
チビッコ組は水で濡れた土で泥遊びだ
エイミーちゃんはいえば
……ヴォルフの側に張り付いている
心なしか頬が赤いような……まさか!熱中症では!?
熱中症には何だったっけ?……えーと、塩分と水分だな
あー……塩分ないや
「きゃ!」
「大丈夫か?エイミー」
「はっはい、大丈夫ですヴォルフ様」
「ははっ!様付けなんてやめてくれよ
俺はただのヴォルフなんだからヴォルフでいいぜ」
「はっはい!ヴォルフ様!」
「ほら!エイミー高い高いしてやろう!」
「うっ嬉しいです!ヴォルフ様!」
「エイミーは素直で可愛いなあ」
「……ヴォルフ様」
……これは……もしや……熱中症ではなく……鯉じゃなくて恋!?
その証拠に帰り道で
「ヴォルフ様、お付き合いされている方とかいらっしゃるのかしら?」
「さ、さあ?」
「ねえ、○△□?ヴォルフ様はどんな女性が好みかしら?」
いや、私らまだ4歳ですよね?
「はぁ……ヴォルフ様」
エイミーちゃん……この間までフィル様フィル様言ってなかったかい?
「ちょっとそこのアインだったかしら!」
「……なんだよ」
「ヴォルフ様の好きな女性のタイプと
お付き合いしている女性がいないかどうか調べて頂戴!」
「なんで俺が!?○△□に頼めよ」
「嫌よ
○△□はこんなのでも女の子だもの
ヴォルフ様にわたくし以外の女の子が近づくなんてダメ!」
「じゃあ、アルに頼めよ!」
「アル様は王弟様のご子息だもの!」
「なんでだよ!?」
エイミーちゃん、それ一応この国の第2王子……
「いや、別にオレはいいよ
面白そうだし……他人の恋路って面白いよね」
アル……黒いよ
「随分、遅いおかえりで
孤児院は楽しめましたかな?」
隠し通路を開けるとそこには無表情のセバスチャンが……!!
「ひっ!」
「言い訳は後で聞くと致しましょう
エイミー様は今日はどうなされますか?夕食を食べていかれますか?」
「……いいの?」
「エイミーちゃんなら大歓迎だよ!」
こうしてエイミーちゃんは夕食を食べて帰っていった
今度はお泊まり会をしようね!と約束をして
その後、アインからの情報によると
エイミーちゃんは孤児院にヴォルフに会いに手作りのお菓子を持って通っているらしい
ああ見えて尽くすタイプなのかエイミーちゃん
「○△□、大事な話がある」
そんな時、父に呼び出された
珍しく顔が険しい
……最近はそんな怒られることはしていない……はず?
「○△□、よく聞いてほしい
アルフォンス、イアン、フィル、オリオン
この中で1番好きなのを選びなさい」
……なんか嫌な予感
「私が好きなのはシリウスです!」
「いや、この中で」
「シリウスです!」
抱っこする度に泣かれようと愛すべきは我が弟である!
同じくらい愛しているのがレイチェルでしょ
母でしょアンでしょ、セバスチャンでしょ
で、アルにアインに父にジュリアスにチャーリーにノーラにリンデだ
「さっきあげた4人よりシリウスが好きかい?」
「当然です!」
比べるまでもない!
「うーん、じゃあ、まだいいか
……本当はパパが好きって言って欲しかったんだけど……まあ、シリウスだしなぁ」
「実はお前に婚約の話が出てるんだ
とは言っても口約束程度のもので正式なものじゃないんだけど
いや、正式な婚約とか私が絶対させないし
私とセバスティアンを倒せるような男でないと
うちの可愛いマイエンジェルは渡せない、渡したくない!」
熱く語る父
……帰ってもいいかな?
「オリオンとイザークがどうしてもって言うから
○△□の意見を聞いたんだが、うん!断ろう!
呼び出して悪かったね○△□!」
満面の笑みでそういう父
「○△□には幸せになってもらいたいからね」
私にもいつか母にとっての父のように愛せる存在に出会えるのだろうか?




