ドリルは悪役令嬢の証
鋼の精霊のおかげかチャーリーの料理の腕がますます上がった
この間、うちに来たラビットさんも感激していた
その時に聞いたのだが、カキ氷が王都でも流行っているらしい
うん、流行るのはいいことだ
うちでは食べ過ぎるとお腹を壊すので週1回と決められている
父がカキ氷を気に入って食べ過ぎてお腹を壊した為だ
あれほど、私が止めたのに……まったく困った父だ
そんな父の為にプリンやゼリー、ミキサーを開発しておいた
これまた我が家で活躍してくれている
プリンやゼリーは喉越しが良く、父もだが特に母が気に入っている
そんな中、王宮から手紙が来たというかアインが持って来た
一応アインはイアンの侍従ってことになっているのに
そんな頻繁に遊びに来ていいのか?と1度問うと
「実家に帰って何に問題がある」
いや、お前の実家ここじゃないから
なんでも、城だとくしゃみが出るとイアンからアインになるので気が抜けないらしい
未だに時戻しの魔法の副作用は抜けないようだ
一生戻らなかったらイアンがおっさんになっても
くしゃみが出たらちびっ子になるんだなと笑ったら小突かれた
「それで、これはお前にだ」
王家の紋章の押された豪華な封筒を渡される
「なんで私に?」
「……俺の父上に側室がいるのは知っているか?」
「え?王様二股してるの?」
「二股じゃない、側室だ!お前仮にも王家に二股とか言うなよ!
っていうか、お前と話してると全然話が進まないじゃないか!」
「で、何しに来たの」
「その側室に娘と息子がいるんだ
……つまり、俺の妹と弟だな……っていってもほとんど会ったことないんだけどな……」
「会ったことないの?」
「ない……だって同じ王宮に住んでるっていっても住んでいる場所も違うしな
……母上に会うなと言われていたし……
……多分、実際の弟や妹よりレイチェルとシリウスに会いに来てる回数の方が多いからな
あいつら兄弟って感じがしないんだよな」
なんかアインにも色々あるらしい
「でだ、その弟がさ、引っ込み思案なんだそうだ
それで貴族の友達をって話になって
同じぐらいの年頃の貴族の子どもを王宮に招くってことになったらしい
で、お前にも招待状が届いたわけだ、分かったか?」
「えー、いらない
それならゼリー婆に引っ付いて診察についってた方が楽しいし」
最近、ゼリー婆の診察についていって助手というかマスコット?になって遊んでいる
ゼリー婆は容赦なく働かせるが
診察受けた人が「可愛いお孫さんね」とお菓子をくれることが多いので
私はよく出掛けている
勿論、アンやセバスチャンにバレないように認識の魔法も忘れない
今や、屋敷にいる方が少ないほどで街に遊びに出掛けている
「普通は王宮に行きたくても行けないものなんだぞ」
「…………」
「とりあえず、アルもオレも行くからお前も来いよ
っていうか、お前来ないと面白くないし」
「……なんで、アインも来るのさ
お兄ちゃんでしょ?」
「イアンとしてじゃなくアインとして招かれてるんだよ
そうじゃなきゃ、誰が行くか!
12歳になって4歳児の中に混じれとかありえないからな」
いや、よく私と遊んでるじゃん
「いいか、絶対来いよ!絶対だからな!」
そう捨て台詞を残すとアインは王宮に帰っていった
レイチェルとシリウスに頬擦りをすることは忘れなかったが
「お嬢様、もっと姿勢を正して!はい!ワンツー、ワンツー」
その日からお行儀のレッスンが追加された
講師は大公家のメイド、マイヤーさんだ
大公家はいいのか?ともお思ったが、アルもうちで一緒にレッスンを受けるし
オリオン様は王立図書館に篭りきりだそうで問題ないらしい
「○△□様!また右足と右手が一緒に出ておりますわよ!」
お行儀のレッスンは苦手だ
アルの奴は器用にこなして、レイチェルやシリウスと遊んでいるというのに
私はマイヤーさんとワンツーマンだ
「○△□様、背筋は真っ直ぐ!すぐ首を上げない!」
マイヤーさんのスパルタは続いた
そして夜になると……
「いいですか、お嬢様、王宮ではどうするんでしたかな?」
今度はセバスチャンとワンツーマンである
「えーと、走らない、木に登らない、泥団子を作らない、お菓子を食べすぎない?」
「魔力を使わない、剣を振り回さないも追加でございましたな」
「えー?そうだったっけ?」
毎回、この話をする度にいろいろ増えていってる気がする……
「いいですか?今度の王宮のお茶会では我々はついて行けないのです
勿論別室にて待機しておりますが……」
「大丈夫だって、木登りもドレスを汚さないようにするし
お菓子もアンとセバスチャンの分も持って帰るから!」
「○△□お嬢様!」
こうして夜も更けていった
当日の朝も
「いいですね、背筋を真っ直ぐですよ
右手が出たら左足ですよ。右手と右足を出してはいけませんよ」
マイヤーさんからお小言をもらい
セバスチャンからは分かってますな?と言わんばかりの無言の圧力をもらった
いつものドレスよりも数段フリルのついた薄紫色のドレスに
ちょっと靴底の高い靴
……走りにくいなと思いながら馬車に乗った
馬車の中ではアンから今日の注意事項を話される
……もう耳にタコだってば!
アンの膝にはテイルが乗っている
今日は頭も複雑に編み込みされているのでテイルが乗るとくずれる
なので、テイルはアンに預けている
本当は屋敷に置いておきたかったのだが威嚇して暴れて大変だった
一体どこの誰に似たのやら?
王宮に着くと庭園に通された
あのイアンにボコボコにされた庭園にである
……微妙な思い出とは裏腹に庭園は綺麗に飾り付けされていた
美味しそうなお菓子も沢山あった
よし!このチョコレートのついたお菓子とあっちの苺のお菓子を
アンとセバスチャンのお土産にしよう!……と考えていると
木の陰から視線を感じる
はっ!まさかアンが見張っているのか!?
最近、隠密行動に磨きがかかっているアンならあり得る話だ!
アンにバレないようにそうっと木の陰に近づく……そして飛びかかった!
「うわっ!」
……アンじゃなかった
どこかの貴族の坊っちゃまだ
……この坊っちゃま誰かに似てる気がする……けど誰だったっけ?
「すまない……人違いだ
それじゃ!」
そそくさと離れようとすると服を引っ張られた
「?」
「……」
「??」
「…………」
駄目だ、会話にならない……
相変わらず、服を離してくれないし……私はテレパシーはできないんだ!
「……こっち」
服から手を離したと思えば今度は手を引っ張られた
坊っちゃまと私は一緒に木の陰に隠れた
「フィル様ー、どこですのー?」
「フィル様、私達とお話ししましょう」
「フィル様、かくれんぼですの?捕まえちゃいますわ」
木の前を令嬢達が通り過ぎていく
察するにこの坊っちゃまがフィル様らしい
「えっと、フィル様?手を離していただけますか?」
そろそろお菓子を食べたいんだよ
それに顔を出しておかないとアインに何を言われるか
「……どうして?」
フィル様はコテンと首を傾げる
私より頭1つ分低い身長とくりんくりんとした天パに大きな目
……あざとい
「そろそろお菓子をですね
食べたいなーと思う次第で……はい」
「じゃあ、いっしょにたべよ」
いや、手を離してくれって遠回しに言ったんだよ
「これ……おいしいよ……あーん」
流石に顔が引きつる
いや、初対面の坊っちゃまにあーんされて食べるほど私図太くないよ
「いや、自分で食べれるんで……手を離してもらえると……」
「……いや」
何が!?
「……あーん」
「あーん」
フィル様にお菓子を口に入れてもらう
フィル様がオススメするだけあって甘くて美味しかった
「おいしい?」
「美味しいです!」
「よかった」
なんだろう?フィル様の周りにはお花が咲いてるというか
私の周りにはいなかったタイプだ
……あざとい
「つぎは……こっち」
フィル様に手を引かれるまま
次々にお菓子を口に入れられる
いや、美味しいからいいんだけどね
「いましたわ!フィル様探しましたわよ!」
おお!さっき木の前を通っていった令嬢だ
金色の髪をドリルみたいにクルクル巻いている
……あれ、なんか悪役っぽい……今度やってみたいな……なんて思っていると
フィル様は私を盾にして自分は後ろに隠れた
え?ちょ!?
「なんなんですの!あなた!わたくしはフィル様とお話ししてますのよ!」
「いや、私は……イテテ」
退こうとすると離れないフィル様
離れないどころかぎゅーっと抱きついてくる
いや……さっき食べたお菓子がだね……お腹を締めると……
「わたくしはエイミー・ヒューストン
侯爵家の娘です
そこをおどきなさい!」
エイミーちゃんはビシィっと手に持っていた扇を私に向ける
ヤバい!この子、私より悪役っぽい!
ときめく!
「……どいちゃ……や」
フィル様は抱きつく力をさらに強めるし
「私は○△□・フォンタナーと申します
どきたいのは山々なのですが……」
「むむむむ、あくまでわたくしの邪魔をしますのね!
許せませんわ!」
ヤバい、この子マジで可愛い!ぎゅってしたいお友達になりたい!
「……こわい」
いや、怖いのはさっきから人のお腹を締め付けてくるフィル様の方だからね
振りほどこうと腰を揺らすとクルクルと一緒に回ってくる
……いや、ダンスしたいんじゃないんだよ
「わたくしを無視するなんて許せませんわ!」
エイミーちゃんはレースの手袋を外すと私の顔に叩きつけた
「ぶっ!」
「けっとうを申し込みますわ!」
こうして決闘をすることになった
「……がんばって……」
いや、フィル様あなたが頑張ってよ……




