ダビット
最近、王都を賑わしていた切り裂き魔が捕まった
前々から後ろ暗い噂好きのあった伯爵家の次男坊だ
調書を取ろうにも正気じゃないのでとれやしない
被害者に話を聞きに行けば、これまた要領を得ない上に
黒い服の通りすがりにたすけられただと?
聞けば1人は黒づくめ、1人はボンテージ、1人はタキシード
んな通りすがりいるかよ
どこの仮装大会だ
そういえば……奴隷売買で捕まったバスサス家に囚われていたガキも
似たようなこと言ってたな
なんなんだ、その仮装連中は?
「隊長!難しい顔してどうしたんスか?」
「ああ、切り裂き魔の件だ」
「加害者、まだ正気に戻らないみたいっスね
被害者は10人でしたっけ10人も殺しておいてあれはないっスよ」
そうだ、10人もの人が犠牲になった
俺たち騎士は夜の見回りを強化したにもかかわらず何の手がかりも得られなかった
「あれっスよね
その加害者捕まえてくれた3人組っスか
なんか、正義の味方気取りのガキかなんかなんスかね?」
「王都の平和を守るのは俺らの仕事だ」
「そっスよね
そんな訳わかんない奴らに任せておけないっス」
「俺は今回の件を城に報告に行ってくる」
「行ってらっしゃいっス」
城に行くのは正直気が重い
が、責任者としてそんなことも言っておれん
城に着くと見知った顔が現れる
「ラビット!久しぶりだな」
「俺の名はダビットだ!お前こそなんでこんな所にいるロミオ」
「うん?ラビットがこっちに来るって聞いたからな
待ってたんだよ」
騎士団学校にいた時からの腐れ縁、ロミオが俺を待ち伏せていた
「だから、ダビットだっつってんだろうが?」
コイツは貴族で俺は平民だというのに何を思ったか絡んでくる
こんなふざけた性格で剣の腕は確かなんだから神は一体何を考えっているのか
「それで?今日は例の切り裂き魔の件か?」
「ああ……騎士団の失態だからな」
上層部から嫌味の1つ2つは覚悟しないと……な
「捕まったんだから、功績だろう?」
「んなわけあるか!俺は報告があるんだから行く」
「まあ、ちょっと待てって!
報告が終わったらうちに来いよ
たまには一緒に飲もうや」
「何を企んでいる」
「企んでいるなんてとんでもない!
ただ、久しぶりにあった友と一緒に飲みたいだけさ」
「……考えておく」
「そうか!じゃあ、仕事終わりに迎えに行くな!」
……俺は考えておくと言ったんだがな
アイツが人の話を聞かないのは今更か……
結局、仕事終わりにフォンタナー家に来ることになった
「邪魔をする」
「まあ!ダビットさん、お久しぶりね」
「ああ、マリアンヌ元気そうで何よりだ」
「うふふ、ゆっくりしていってくださいね」
相変わらずマリアンヌは美しい
コイツとマリアンヌが結婚すると決まった時は何人の男が泣いたものか
「はっはっは、マリアンヌは今日も美しいな
流石の俺のマイスイートハートだ!」
コイツのどこがいいんだろう?
じー
ふと視線を感じる
シャンデリアに人影が!!
「○△□、危ないからシャンデリアからぶら下がるのはやめなさい
うちの娘の○△□だ
○△□、パパの騎士団学校からの親友だ
ご挨拶なさい」
「……○△□・フォンタナーです」
マリアンヌに似て聡明な顔立ちをしているが
シャンデリアに登る行動を見るとロミオ似だな
「俺はダビット・ゴルドだ」
「ラビット・ゴルドさん?」
完全に中身はロミオ似だな
「ダビットな」
小さな頭の上に猫を乗っけている
猫の頭を撫でてやると嬉しいのか笑っている
「ラビットはな騎士団の第2騎士団の団長だ
○△□も街で何かあったら……例えば迷子になったらこのおじさんを頼るんだぞ」
いや、迷子ごときで頼るなよ
「はい!」
その後、生まれたばかりだという次女と長男も紹介された
レイチェルとシリウスだったか?
2人の赤ん坊を見せられてどっちがどっちか俺には分からんが
親であるロミオには分かるらしい
愛らしさを力説された
晩餐の時間になり、俺もご馳走になることになった
貴族の食事の作法など騎士団学校で習って依頼使っていない
まあ、ロミオとマリアンヌだから煩くは言わないと思うが
そこで出てきたのは食べたことのない食べ物だった
タコ焼きというらしい
……ちょっと待て、タコというのはあのグロテスクなあのタコか?
俺が食べるのを躊躇していると
あのマリアンヌが美味しそうに食べるではないか
ロミオはアイツは野草だろうがなんだろうが食べるだろうから気にするだけ無駄だが
あのマリアンヌがタコを食べているだと!?
「ラビットおじさん食べないの?美味しいよ」
○△□も当たり前のように食べている
意を決して口の中に入れると……なんだこれは!
口に入れた瞬間はカリカリとした食感が伝わるのだが
噛んだ途端、中がトロリと溢れ出す
そんななかコリコリした食感がが癖になる
これなら幾らでも食べられるな
次に出てきたのは焼きそばというらしい
パスタのような細い麺に独特のソースと野菜これは豚肉か?
フォークでパスタのように食べればいいのか?
貴族というのは変わったものを食べるんだな
最後にデザートとして出てきたのは最近王都で話題のカキゴオリだった
道具の店主がどこかの貴族の依頼で作り、自分用にと作ってみたことから流行りだした
カキゴオリではないか!!
俺も街で1度食べたが、あの口溶けの良さは忘れられない
それがフォンタナー家でたべられるとは!!
「カキゴオリは一気に食べるのが美味いんだ!」
ロミオがそう言った
そういうものなのかと駆け込むように口に入れると
キーンと頭に響く痛みが……ロミオ騙したな
食事が終わり、ロミオと2人酒を飲む
「で、結局なんで俺を呼んだんだ?」
「○△□がな
あの子は俺に似て落ち着きがないと言うか活動的というかな
これから先、王都に出すとトラブルに巻き込まれる可能性がかなり高い
ラビットには○△□を助けてやって欲しいんだ
親バカと蔑んでくれていい
あの子が王都で困っていたら手を貸してやって欲しいんだ」
「ダチの娘ぐらい助けるさ
俺はそんな薄情者にみられてんのかよ」
ロミオに軽口を返すが
アイツはマジな目でこう言った
「多分、あの子は天から愛された子なんだと思う
いつか俺たちには想像も出来ないようなことをしでかして……
いや、起こしてしまうそんな気がするんだ」
聞き捨てならないセリフがいくつかあるが……
「わかった
何かあったら力になると約束する」
「ありがとうなラビット」
こうして俺はフォンタナー家を後にした
帰りしな、窓から○△□が手を振っているのが見えたので振り返しておいた
正直、ロミオは大袈裟だと思う
俺はは親とはそんなものかと思っていたんだ
まさか○△□嬢が想像の上を行くじゃじゃ馬だと
この時の俺はまだ知らなかった




