ただの通りすがりです
最初に生まれたのがレイチェル
体に闇を残したまま生まれたのがシリウス
2人ともすくすくと大きくなってきている
ベットの中でもレイチェルはよく動いている
シリウスはじーっと何もない所を見ていたり笑ったりしている
2人とも食欲旺盛で健康には問題ないらしい
シリウスは私が抱っこする度に大泣きする
ちょっと……というかかなり寂しい
でも、父はレイチェルにもシリウスにも大泣きされているので
私だけじゃないという安心感がある
ちなみに父が泣かれるのは抱っこする度に頬擦りをしてヒゲが痛いのだ
私も赤ん坊の頃に抱かれて痛かった
教えてもいいのだが、教えたら私だけがシリウスから泣かれるので教えないことにしている
アルとアインはそれはもうレイチェルとシリウスを溺愛していて
毎日のようにやってくる
もう1日中レイチェルとシリウスに張り付いている勢いだ
この間はオリオン様も出産祝いを持ってお祝いに来てくれた
でも、今は出入り禁止となっている
「可愛いね、ねえ兄さん、レイチェルをアルフォンスのお嫁さんにくれない?」
なんて、空気の読めない一言を言ったが為にオリオン様は我が家に出入り禁止となった
「あはは、兄さんってば冗談だよ
親バカだなぁ」
なんてオリオン様は笑っていたが目がマジであったことはいうまでもない
母はそんな父とオリオン様のじゃれあいを楽しげに見ている
そうなると目下の問題は
今も足元で今は静かにしているクロである
あの後、セバスチャンにまたリストを用意してもらったのだが
気にいる相手がいなかったようで
大変ご機嫌ななめだ
奴隷売買の悪徳貴族より厄介な相手って……とも思わなくないが
約束は約束だ
……決して、ちょっと変装して忍び込むのが楽しかったわけではない
……いや、かなり楽しかった
「さて、今日の新聞は……
……またコイツか」
新聞の見出しには切り裂き魔現るの文字が
最近、王都を騒がしている殺人鬼だ
お陰で王都の夜は人が出歩かなくなってしまっている
前世でも、似たような事件があったな
あれは娼婦ばかりを襲う切り裂き魔だったけれど
今回のコイツは老若男女見境なしのようだ
クロが暴れ出す
え?まさか……
そして指したのは切り裂き魔の文字……
「いや、誰かもわからん相手をどうやって捕まえろと
……今回はチェンジで」
クロがブンブンと影を振る
ダメらしい
『やくそくしたよね?』
しましたねー、したけどさぁ
「ちょっとノーラ、今日の酒場での食事会どうする?」
あれは……噂好きのノーラとリンデじゃないか!
「どうするって行くに決まってるじゃない!今日来るのは大公家の執事達よ!」
「でも……最近、切り裂き魔が出るって新聞にも書いてあったでしょ……」
「切り裂き魔がなんぼのもんよ!それより婚活よ!」
夜に出かけるつもりなのか?
『チャンスじゃない?護衛がひつようでしょ?』
いや、それはうちのメイドに何かあったらと思うと必要だと思うけれど
『ボクはごはんをキミは彼女達を守れる
こういうの一石二鳥っていうんだろう?』
そういう訳でセバスチャンに相談すると
「勿論、反対でございます」
ですよねー
「でも、ノーラとリンデを放っておいて何かあってからでは遅くないか?」
「2人には今日出かけないようにきつく言い聞かせます」
「恐れながら……リンデはともかくノーラは聞かないと思います」
「ほら!セバスチャン!2人に何かあってからでは遅いだろう?」
渋るセバスチャンをどう説得しようかとすると
クロが影から出てきて首に巻きつく
『ねえねえ、ボクおなかへった』
可愛子ぶりっ子である
……思わず、サブイボが出てきた
「おのれ!闇の精霊!
……仕方ありません、参りましょう」
なんだかセバスチャンもやる気になったので今日決行だ!
『ふふふふ』
夜になりコスチュームに着替える
前回、テイルから不満が出たのでテイルにも仮面を作ってやった
仮面をつけてやると嬉しかったのかネコミミをはやしてきた
……いや、だからいらないって……
父と母にバレないように認識の魔法を使い
あたかも部屋にいるかのように偽装する
「よし!行くぞ!」
今回も気球に乗って出発だ!
「……ねえ、ノーラ……やっぱり止しましょうよ」
「あのねぇリンデ、こんな明るい道で誰が襲うってのよ!」
ノーラとリンデを発見!
ノーラのいう通り明るい道を選んで通っている
「ノーラとリンデは大丈夫そうですな」
「ボス、あちらを!」
クイーンが指差したのは裏路地を走っている獣人の子どもだ
何かから逃げている?
「怪我をしておるようですな」
え?あっちが本命!?
「いっいこう!」
「了解でございます」
「了解ですボス」
獣人の子どもの前に躍り出ると
「あれ?この間バスサスの屋敷にいた子!?」
あの時、私を引っかいてきた鳥の獣人の子どもがそこにはいた
「お前らは!?あの時の!?ッチ、こんな時に!」
獣人の子どもの背後が揺らぐ
キンッ!
獣人の子どもに向かってきた剣をクイーンのムチが払いのける
「ボス、どうやら当たりのようですわ」
クイーンのムチの先にはいかにも怪しげな風貌の男が立っていた
「……セ……セ……スワ……」
「目がいっちゃってるな」
目は血走り、口からは涎がダラダラと流れている
そんな中、手に持った剣だけが血を滴らせギラギラと輝いている
「ボス、後ろへおさがりください
ここは我々が行くぞ、クイーン」
「はい、お任せください」
男に向かって行くクイーンとルーク
あれ?私……また出番なし……?
「お前ら何なんだよ!?」
獣人の少年が喚くで手で口を押さえる
私たちが何か?
「ただの通りすがりです」
「嘘つけ!そんな変な格好の通りすがりがいるか!」
そう言われてもなぁ
本当に通りすがりだからなぁ……
正義の味方じゃないし……
「悪の味方?」
「悪ってことはアイツラの仲間かよ!?」
「違うよ!」
言葉って難しい!
『闇の精霊の使者は?厨二臭くてイイカンジじゃない?』
却下で
『チェ……』
そんなこんなで獣人の少年と漫才をしている間にクイーンのムチが男を取り押さえていた
クロを呼ぼうとしたその時だ
男の手に持っていた剣が蠢きだしたのは
「え?」
「危ない!クイーン!」
クイーンを庇い、ルークの肩に剣が突き刺さる
剣は剣自身が意識があるかのように男の手を離れ蠢いている
「ルーク!」
「ボス、心配ございません
かすり傷でございます」
『あーあ、目覚めちゃった
コイツはね鋼の精霊
ずっとこの剣に憑いてたみたいだけど負のエネルギーを吸いすぎて
闇に飲まれてるんだよ』
「つまりこの剣が主犯ってこと?」
『主犯はコイツを狂わせたニンゲン達
コイツは自我をなくして負のエネルギーに誘われるまま
血をもとめてるだけさ』
「せ、精霊相手なんてどうすればいいの!?」
『一緒だよ
取り押さえてボクをぶっ刺したらいいんだよ』
「ボス!闇の精霊は何と!?」
「とにかく取り押さえてって!」
鋼の精霊は辺り構わず剣を伸ばしてくる
「危ない!」
獣人の子を庇いながら魔力を動かす
鋼の精霊が剣を伸ばしてくるのなら魔力で押しつぶせば捕まえられるはず!
「ボス!」
「魔力で押しつぶす!」
全力で力を注ぎ込む
おりゃああああ!!
ペキッ ポキッ ボキギ
嫌な音が辺りに響く
もうちょっと……力を押し込む
体から力が抜けていくのが分かる
だからって負けてたまるかああ!!
バキィ
中から鋼の塊が割れる音がした
「……いでよっ!クロ!」
「ひっ!」
後ろで獣人の少年が悲鳴をあげてるけど無視だ無視
もう、疲れていてツッコム気力もない
割れた鋼の塊に闇の剣を刺す
鋼の精霊の最後の抵抗かなかなか刺さらない
「刺されぇえ!!」
ドゴッ!!
それからはいつものクロのお食事タイムだ
「疲れたぁ……」
闇の剣を手放すと尻餅をつく
今までで1番疲れた……
「ボス!」
「ルーク!怪我は!
さっき刺されたところは!?」
「心配には及びません
ボスの加護縫いのお陰でこの通りでございます」
刺されたと思った場所には穴1つ空いていなかった
「良かったぁ」
「ボス、この子は」
「クロ、眠らせてあげて」
『今、食べるのが忙しいから無理』
いや、サボるなよ
「あんた達何なんだよ!?なんで剣が暴れて!?」
獣人の少年が騒ぐから辺りに灯りがともり始める
「ボス、そろそろここを離れたほうが……」
「クロ、急いで!」
『もっとゆっくり味わいたいんだけどしょうがないね』
黒い靄が少年を包み、少年が眠ったのを確認して
私たちは気球にに飛び乗った
念のため剣に操られてた男も縛っておいた
『はい、コレ』
クロに渡されたのはキラキラした鋼の塊だ
「……これ何?」
『鋼の精霊
……弱ってるから何かに取り憑かせないと死ぬよ』
「取り憑かせたらさっきみたいに暴走するの?」
『もう闇は食べたからしない
それは残りカス……腐っても同胞だからね
殺すのは流石のボクでも忍びないよ』
鋼の精霊の取り憑き先かぁ
あ!!!
「お嬢様!お嬢様がプレゼントしてくださった包丁ですがとてもよく切れます!
切れ味だけでなく軽いんですよ!
こんないいものをありがとうございます」
今日も鋼の精霊は我が家の厨房で大活躍してくれている




