身近な理想
翌日も宣言通りオリオン様を散歩に誘いに行った
また、相変わらず正面は警備が厳重なので隠し通路を通っていくと
「…………」
アルが待ち受けていた
「あいつのところへ行くのか?」
「うん、オリオン様のところへ行くよ」
「あんな奴放っておけばいいだろう!?」
「そりゃ、アルの父さんじゃなければ放ってるよ」
「…………」
「ほら、アルも気になるんでしょ!行こう!」
アルの手を引いて隠し通路を通って行く
今日もマイヤーさんがオリオン様の部屋にいた
「朝食をお食べください」
「やっぱり食欲がないんだ
すまないね、マイヤー世話をかける」
「やはり昨日庭に出たからでは?」
「そうではないよ
久しぶりに庭に出て楽しかったからね
アルのあんな楽しそうな姿を久しぶりに見たよ
そう思わなかったかい?」
「……普通の6歳児のように見えましたね
大公家の跡取りとしては困ったものですが……」
「そうだね、だが子どもはあれくらい元気でなきゃね」
「そろそろお休みください
またお薬の時間にまいります」
マイヤーさんが出て行くと、昨日と同じように隠し通路から出てくる
アルはまだ隠し通路の中にいる
手を引いても首を振っている
えー、ここまで来て!?
ったく、しようがないなぁ
「御機嫌よう、オリオン様」
「やあ○△□嬢、今日も散歩かな?」
どうしようかな?
今日は昨日に比べて顔色が良くない
「今日はお話を聞かせてください」
「おはなし?」
「ええ、父の小さかった頃のこと教えてください」
「ふふ、ロミオ兄さんの小さかった頃の話かい?」
「はい!」
話なら隠し通路にいるアルにも聞こえるだろう
「僕らが子どもの頃のはね……よく伯父上のお屋敷で遊んだものだよ」
「お祖父様のお屋敷ですか?」
「ああ、私は体が弱く外であまり遊べなかったんだ
でもね、伯父上の屋敷でよくイザーク兄さんとロミオ兄さんとよく悪戯をしたものだよ
ふふふ、あの頃は楽しかったな
ロミオ兄さんが穴を掘って、私が認識の魔法を使って
イザーク兄さんを落とし穴に嵌めたりね
反対にイザーク兄さんと協力してロミオ兄さんを池に落としたりしたっけ?」
あまり遊べなかったんだという割に結構やってることはやんちゃだな
「他にも誰が1番女の子にモテるか競ったりね
ちなみに勝ったのは私だったんだけど兄さん達も譲らなくてね」
「……こういうことをアルとも話せばいいのに」
そうすればアルも誤解せずにすんだのに
「アルにはこういう話は出来ないかな」
「なんで?」
「カッコイイ父親でいたいじゃないか?」
「……大丈夫、今すっごく格好悪いから
これ以上ないってぐらい格好悪いから」
「……そんなに格好悪いかな?」
「うん」
「そうか、アルフォンスにもこんな風に話せばよかったんだね」
「とりあえず、ご飯一緒に食べられるようになろうよ
顔合わすことから始めなよ
アルが肉を減らして野菜を増やすように言ってくれたから
オリオン様も頑張れ」
「アルフォンスがそんなことを言ったのかい?
あの肉が大好きだったあの子が……」
「アルだって変わってる
お兄さんも変わっていけるよ」
「そうかな?」
……また泣いてる
「……泣くなよ」
アルが隠し通路から出て来てオリオン様にハンカチを渡す
「ありがとうってえ!?」
「…………」
「アルフォンス……」
さらに感激して泣き出した
「……オレも昔の話聞きたい」
「!!そうか!それじゃ、あれはロミオ兄さんの誕生日のことだ……」
2人だけにしてあげた方がいいかなと思ったのだが
アルが服の裾を掴んで来てたからその場にいた
昼前になってマイヤーさんが来るまでオリオン様は幼い頃の話をしてくれた
父も結構やんちゃをしていたようだ
部屋に戻ると
「どこに行っていたんだ!?」
と、アインに問い詰められたことは言うまでもない
昼食はオリオン様も部屋から出て来て食べた
食べる量は本当に少なかったが、顔を合わせることから始めたのだろう
アルも少し嬉しそうに見えた
昼食後もアルとオリオン様は昔の話で盛り上がったようで
私はアインの相手をしていたのだが途中で飽きたので
前から目をつけていた木の木登りを開始した
丁度いいところに子猫が木から降りられなくなっていたので言い訳もできた
「オオイ、大丈夫なのか?」
「これぐらいの木で私がどうにかなるわけないだろう?」
スルスルと猿のように登って行く
強いて言うなら家と違いズボンではないので
スカートのヒラヒラが邪魔だが……まあ、その程度だ
よし!捕まえた!っと
子猫を捕まえると丁度廊下を通っていたマイヤーさんと目が合った
にっこり笑って手を振っておく
すると、すごい勢いでこっちに向かって来た!
「○△□様!何をしておいでなのですか!?今すぐお降りください!」
無表情に凄い剣幕である
表情とのギャップが怖い
アインなんぞあまりの剣幕に震えている
あいつ……怒られ慣れてないからな……
日頃から怒られ慣れている私といえば全然平気だ
「はーい」
登った時と同じようにスルスルと下に降りる
「猫が降りられなくなっていたので……」
嘘である
登りたかった木に丁度子猫がいたから助けただけである
「だからといって!貴方は侯爵家の娘だと言う自覚がおありなのですか!?」
うーん、あまり侯爵家ということを自覚したことはないなぁ
「来たときから思っていたのです!淑女の嗜みをなんと心得るのです!」
おおー、なんかマイヤーさんがヒートアップしていく
「聞いているのですか!?キー!!」
その時の胸の高鳴りをなんと言っていいだろう
え?これってあれじゃ!
私の愛すべき○ロンジョ様が起こったときによくする仕草じゃないですか!
「マイヤーさん!」
「もう1回キーって言って!」
「は?」
「もう1回」
「何を言っているんですか!?もう!知りません!」
捨て台詞を吐くと言ってしまった
……こんな身近に理想がいたとは……いや、無表情なのはちょっと違うが
行動はすごく○ロンジョ様に似ている
「お前、よくあのおばさん怖くないな」
「怖い?素敵じゃないか!」
ナーと腕の中の子猫が鳴いた




