マイヤーさん登場!
やって来ました!大公家!
まさか、アルが大公家の跡継ぎだとは……
てっきり父がどこかで拾って来たんだろう?とは思っていたけれど
「…………」
アルはもうそれは気にくわないぞオーラを全開に出している
私は初めてのお泊りだ
もうワクワクしてしょうがないから
さっきから見えるもの全てが新鮮で
「アンあれは何?」
と、聞きまくっている
温度差のある馬車の中、唯一アインだけが気まずそうにおろおろしている
そんな面白い状況のまま、馬車は大公家に入って行く
大公家の庭はうちの庭と違って木や花が凄く整えられていた
うちは父の意向で良く言えば自然のまま、
悪く言えば、ぼうぼうだ
育ててるものも母の好きな花は別だが、野菜とかが育てられている
大公家の庭は色とりどりの花が咲いているが
これ踏んだらマズイよなぁという感じの庭だった
でも、木登りしやすい大きな木があったのは収穫だった
「お嬢様、私が言ったことを覚えておいでですか?」
セバスチャンが話しかてくる
「……木登りしません……泥遊びしません……物を壊しません」
何度言われたか、もう耳にタコができるほどだ!
泥遊びはこの庭ではできそうにないのでしないが木は登る!
「おかえりなさいませアルフォンス様」
屋敷に入るとキツそうなメガネのメイドさんが迎えてくれた
「……マイヤーだ」
アルが小声で教えてくれた
ほう、マイヤーさんというらしい
「○△□様、アイン様ようこそおいでくださいました」
言葉と裏腹に表情はちっとも動かない
まるで人形みたいだ
キツそうなメガネの人形……夢に出て来ても怖くないな
「………………」
アルは黙ったままだ
「えっと、オリオン様は?」
ここに来る前に父からあの幸薄そうなお兄さんの名前を教えてもらった
「臥せっております」
「お見舞いに」
「主人は只今臥せっておりますので
皆様におかれましては部屋へ案内させていただきます」
オウ!聞いてもらえない!
そこからはマイヤーさんのペースだった
アルは自分の部屋に帰され
私とアインは客間に通された
「夕食の時間になりましたら呼びに参ります」
さて、どうするか?
「なんか怖いメイドだったな」
「そうかな?」
「○△□はこれからどうするんだ?
俺はアルのところへ行こうと思うのだが」
「んー、まずは屋敷の散歩かな」
多分、ここの家にも隠し通路がありそうなんだよね
「そうか、それじゃあ後でな」
アインにはセバスチャンがついていく
私にはアンがついている
「さて、アン私たちも散歩をしよう」
扉を開けると、そこには無表情のマイヤーさんが
……ホラーか!?
「どこかへお出かけですか?」
「屋敷の中を散歩しようかと」
「屋敷には立ち入り禁止の場所も御座います」
「分かりました」
うちじゃないのでちょっとした猫を被っておく
さて、散歩という名の探検だ
当然といえば当然なのかもしれないが
オリオン様の部屋まで行ったけど会わせてもらえなかった
厨房もお客様にお見せするところではと追い返されてしまった
……仕様がない
隠し通路発見に努めるか!
「お嬢様、先ほどから壁を触られたり何かをお探しなのですか?」
「しー!」
もうちょっとっぽいんだよな
ゴンゴンコンゴンゴン
おっ!今音が違った!ってことは
ここを押すか引くか横にスライドさせると
ガゴン!
「ビンゴ!」
隠し通路の登場だ
「え?お嬢様、今何をってまさか入られるおつもりじゃ!?」
「入るに決まっているだろう」
「よそのお屋敷の隠し通路なんて出られなくなったらどうするおつもりなんですか!?」
「大丈夫、大丈夫
……そんなに心配ならアンはここにいてくれればいい
私はちょっと探検して来るだけだすぐ帰って来るさ」
「お嬢様ぁ、本当にやめましょう」
「それじゃ、行って来る」
スカートの中に隠し持っていたランプをつけて歩く
この家の構造だとこっちがオリオン様の部屋に繋がっているはずだ
「旦那様、アルフォンス様がお戻りになりました」
「……そう……か、あの子は今どうしている?」
「侯爵家のアイン様と庭で剣の稽古をされておいでです」
この声はマイヤーさんとオリオン様か!
「今日もこの様に昼食を残されて
食べなければ体力がつきませんよ」
「……食欲がないんだ
夕食も今日はいらない」
「……かしこまりました」
マイヤーさんが出て行ったのを確認して隠し通路から出る
「御機嫌ようオリオン様、ご機嫌はいかがですか?」
「!?」
「宣言通り、生活改善に参りましたわ
ええ、お見舞いもさせてもらえないほどの重病人とお聞きしましたが
随分、お元気そうで、安心いたしました」
顔色もこの間みたいに悪くないし
枕元には沢山の本が積まれている
「○△□嬢!?どうしてここに!?」
「秘密です。さあ、散歩に行きますよ」
「いや……私は……」
「アルの誤解を解きたいんだろう?
じゃあ、さっさと準備する」
「アルフォンス……そうだね
……○△□嬢、着替えるので外へ出て行ってくれるかな?」
「私のことはお気になさらず、どうぞお着替えください」
このお兄さんは着替えている最中に「いや、でも、やっぱり」とか言いだしかねない
オリオン様の着替えを待って部屋の外へ出た
「旦那様が外へ!?」
「まあまあ!」
凄い驚かれていた
庭まで手を引いていく
本当は走って行きたがったが、オリオン様にはまだ走るのは無理そうだ
「庭に出るのはいつ振りだろう?」
いや、庭ぐらい出ようよ
「ほら!アルとアインが打ち合いしてる!」
アインの中身はともかく体は小さいのでアルが手加減してではあるが
最近は打ち合いもしている
アルのやつ、アインには手加減するくせに私には手加減がない!
「本当だ、凄い
あのアルフォンスが大きくなって」
また泣き出した
……ハンカチをオリオン様に差し出す
加護縫い付きのとっておきだ
「ありがとう○△□嬢」
「あげます、健康の加護縫いが入ってるので持ってると元気になると思いますよ」
「その年で加護縫いができるのかい?」
「アルもできますよ」
「アルフォンスも?」
アインがこっちに気づいた様で
アルの手を引いてこっちにやって来る
「叔父上、ご無沙汰しております」
「え?君は……?」
アインのやつ、認識齟齬の魔法のことすっかり忘れてるな
セバスチャンが咳払いをしてアインに合図を送る
「あ……そうだった
……初めましてアインといいます」
「ああ……君が……」
「……………………」
アルは黙ったまま
オリオン様を無視してる
「アルフォンス」
「…………アル、行くぞ
稽古するんだろう?」
「アルフォンス、剣を習っているのかい?」
「…………あんたには関係ない」
「そ……そう……だね」
「いやいや、そう……だね……じゃないでしょ!
さっきまで凄いって言ってたじゃん!
感動して泣いてたじゃん!」
思わずつっこんでしまった!
「……○△□とは随分仲がいいんだな
アイン!行くぞ!」
それだけ言うとアルは走って言ってしまった
アインもアルを追いかけて行く
「アルフォンス……」
「嫉妬だな」
「え?」
「だから、オリオン様が私と仲良くしてるのが気に食わなかったんでしょう!
ほら!まだ諦めるのは早いってこと!」
「そっそうなのかい?」
「そう!」
「旦那様!?」
オウ!マイヤーさん
「○△□様!旦那様を庭に連れ出すなど!
さあ、旦那様、部屋へ戻りましょう
また熱が出てまいりますよ」
そういうとオリオン様を連れて言ってしまった
帰り際に睨まれた
あちゃー
私もアンのところへ戻ろう
「お嬢様ぁ、まだですか?」
「アン、ただいま」
「え?お嬢様?隠し通路にいらしてたんじゃ!」
「うん、まあ。そんな感じ
そろそろ部屋へ帰ろう」
「はい」
夕食の時間になりマイヤーさんが呼びに来た
……オウ……これは私でもキツいかも
肉……肉……肉料理ばっかり
野菜はちょこっと気持ち程度しかない
こりゃ、アルが太るわけだ
「明日からもっと野菜を増やしてくれ
……肉は少なくていい」
アルがマイヤーさんにそう言う
良いの?とアイコンタクトを送るといい!と返事が返ってきた
アルなりに考えがあるらしい
「かしこまりました……料理長に伝えてまいります」
なんでマイヤーさんは通るたびに私を睨んで行くんだ?
アインが眠った後、セバスチャンとアンに今日あったことを話した
アルとオリオン様を仲直りさせたいと言うことも
「またお嬢様は他のご家庭のことに首を突っ込むなんて!」
「アルは他人じゃない家族だぞ!」
「……それで、お嬢様はオリオン様を健康にしたいと」
「うん、いや、まあ健康にならなくてもアルと会話になればいいんだよ……本当は
ただ、あのお兄さん体が弱いことを理由にして、すぐ無理っていうからさぁ
それなら健康になればアルと話せるわけじゃん!」
「微力ながらこのセバスチャンお力になりましょう」
「セバスチャン様!?いいんですか?」
「ああ……
それでお嬢様、何をなさるつもりなんですか?」
「食事改善と散歩、運動不足解消をしたいんだけど
食事改善はよその家だから出来ないし、とりあえず毎日散歩に連れ出してみる」
「分かりました。それではそろそろお休みください」
「うん……寝る……お休み」
「いいのですか?セバスチャン様」
「散歩に誘うだけなら害にもなるまい」
「そうだといいんですけど……お嬢様ですから」
「…………」
こうして夜は更けて言った




