影
あの日以来、アルと上手く接することが出来ない
アルと会うとなんか気持ちがごちゃごちゃとして気持ちが悪い
だから、アルを避けた
初めはアルも戸惑いながら私に関わってきていたが
途中から腹を立てたのか関わってこなくなった
お互いがお互いを無視し合っている
アインがニヤニヤとこっちを笑って見ていたから、とりあえず小突いておいた
「うがー!なんかこんなの私じゃない気がしてイライラする!」
「なら、アル様にお謝りになればいいじゃありませんか?」
「それが出来るなら苦労していない!」
「はぁ……知りませんよ、後悔しても」
「……………………」
とうとうアルを無視している私の行動は父にも知られ部屋へ呼び出された
「○△□、アルと何かあったのか?」
脳裏に浮かんだのはアルに加護縫いのハンカチを貰って嬉しそうにお礼を言う母
「……別に」
「それじゃ、どうしてアルを無視するんだ?
マリアンヌも心配しているぞ、
○△□ももうお姉ちゃんになるんだから
いつまでもマリアンヌに心配を掛けていてはいけないよ」
「…………」
「○△□、黙っていたら分からないだろ?」
「……ない」
「?」
「私だって分からないんだ!だって、アルが!」
「……オレがなんだって?」
振り向くとアルがいた
今アルには会いたくなかった……
「私が呼んだ
アルもどうして○△□が無視するのか分からないと言っていたからな
1度2人で話し合いなさい」
「……っかり、……アルばっかり!」
もう気持ちがグチャグチャだ
「お前、最近どうしたんだよ?どっか悪いんじゃないのか?」
アルが私に手を伸ばす
「うるさい!」
その手を払いのけた
「っ!」
「○△□!」
父が私を呼ぶ
父もどうせ私を叱るんだ
「みんな、みんな、だいっきらい!」
そのまま隠し通路に突進して、家の外に出たと思わせて
隠し通路の奥にある隠し部屋に隠れた
だって、私だって母に加護縫いのハンカチを渡そうとしたんだ
徹夜でアドレナリンハイ状態になりながら頑張ったんだ
不恰好だし、布はヨレてるし刺繍は歪んでるけど一生懸命作ったんだ
でも、アルの作った綺麗な加護縫いを見たら
私の作ったのは何の価値もない失敗作に見えて、母に渡せなくて
でも、そんな私が嫌でそんな私を知られたくなくて……だから!
「本当だ、○△□ちゃんみーつけた」
「!!」
目の前には母がいた
「○△□ちゃんは隠れるのが上手ね
見つけるのにとっても時間がかかっちゃった」
「……何しにきたの」
「○△□ちゃんを抱きしめにきたのよ」
「いらない」
「○△□ちゃんの言うことは聞きませーん」
ぎゅっ!
とくん とくんと母の鼓動が聞こえる
「○△□ちゃんを抱っこするのも久しぶりね
うふふ、○△□ちゃん大きくなっているのね
……アンシェリーから聞いたわ
○△□ちゃんもハンカチを加護縫いしてくれたの?」
……あんなの見せられない
「……してない」
「布が破れても、針が爆発しても頑張ってくれたのよね」
「針は爆発してない……折れただけ」
「そう、一生懸命作ってくれたのよね
見せてくれる?」
恐る恐る、母にハンカチを差し出す
「カッコイイわんちゃんね」
「アンにはカバですかって言われた」
「まあ、こんな勇ましいわんちゃんを捕まえて失礼ね」
「犬は安産の守り神でもあるから」
「○△□ちゃんは赤ちゃんのことも心配してくれたのね
優しい子ね」
「……優しくなんかない」
「そう?」
「アルのこと無視した」
「どうして?」
「アルが……スミレの加護縫い渡してた
……アルの方が上手で……嬉しそうだったから……」
「?アルちゃんのスミレも嬉しかったけれど
○△□ちゃんのわんちゃんもとっても嬉しかったのよ」
「でも、私の不恰好だしカバに見えるし」
「私の○△□ちゃんが私と赤ちゃんの為に作ってくれた特別な1枚よ
貶すのは○△□ちゃんでも許さないわよ」
母は微笑みながら私の頬を撫でた
私は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら母に抱きついていた
母は私が落ち着くまで頭を撫でてくれていた
「ここに○△□ちゃんがいるって教えてくれたのはアルちゃんなのよ」
……なんでアイツ、ここに隠れてること分かったんだろう?
「戻ったらアルに謝る」
「そっか、出来たらパパにも謝ってあげてね
大嫌いって言われて凄くショックを受けていたから」
「うん、謝る」
「それじゃ、帰りましょう」
母と手を繋いで隠し通路を進む
その時、影が揺らめいた
『あなたの名前は?』
私の名前は○△□・フォンタナー
ロミオ・フォンタナーとマリアンヌ・フォンタナーの娘
アルとアインとセバスチャンとアンと
メイドのみんなと執事のみんなに愛されて今ここにいる
『別の名前を持っているのにその名を名乗るの?』
もう、私は前世の自分じゃない
私は○△□だ
『そう。ニンゲンは面白いね
いつも矛盾を抱えている』
『○△□、覚えたよ
また近いうちに会おう』
「○△□ちゃん?」
「なんでもない、行こう?」
もう影は揺らがない




