嫉妬
我が家にビックニュースが訪れた
マイルズ先生とゼリー婆によると母が妊娠しているのは双子らしい
今度こそ念願の弟か妹だ!それに2人もいっぺんに!!
あまりの嬉しさに久しぶりに新・喜びの舞!を舞った
相変わらずアンは感動のあまり俯いて肩を震わしているし
母も喜んでくれた
「○△□ちゃんの踊りは見ているとなんだか元気になるわ」
と褒めてもらった!
流石、母!アインとは大違いだ
アインときたら
「お前、前から思っていたけどセンスないな」
とのたまった
思わず小突いてやろうかと思ったが母の手前やめておいた
アインは最近部屋に篭もらなくなった
空いている時間は母の部屋にいることが多い
ははん!やっと母の魅力に気づいたのだな!遅いのだよ!
アルといえば口をぽかんと開けていた
面白いので思わず、マシュマロを放り込んでやったらむせていた
「珍妙な踊りのせいで話が逸れたが、双子ときいた
多胎妊娠は妊婦の負担が大きいと聞く……大丈夫なのか?」
オイ、アイン珍妙なとはなんだ!珍妙なって!
って、え?
「……あのアインがまともなことを言っているだと!?」
ありえない!
アレだ!これはアインの皮を被ったセバスチャンなのだ!きっと
「ちょ!なんだ!」
「アインの皮を被ったセバスチャンめ!正体を表せ!」
「いたたたた!頬をぴっぴゃるな!」
アレ?皮が剥がれないってことは本物?
「……○△□ちゃん」
「はい、お母様」
「めっ!小さい子には優しくしなさい!」
「……はい」
ちょっと赤くなった頬をさすりながらアインがこっちを睨みつける
私も負けじとあかんべー仕返してやった
「アインちゃんは難しい言葉をよく知っているのねぇ
でも、おばさんは大丈夫よ
ロミオおじさんがゼリオン様をつれてきてくれたし
マイルズ先生もついてくれてる
それに何よりこんな可愛い子達が心配してくれてるんだから、ね?」
「……だが、何かできることがあるなら俺も手を貸す」
「オレもお手伝いさせてください!」
「私も!」
早速、部屋に帰ると
母の為に何かできないか考えて見た
「お嬢様は何もせず大人しくしていていただけると
奥様も安心していられると思うのですが……」
はい!アンの意見は却下だ!
!!そういえば!!
加護縫いは込める魔力によって発揮する能力が変わると言っていた
安産祈願の思いを込めて加護縫いすれば
母の負担を少しでも減らせるのでは!
「お嬢様、何をするおつもりですか?」
「加護縫いだ!」
「ちょっと待ってください!
この間、針を爆発させてセバスチャン様に止められたばかりでしょう!」
「……この間、針を爆発させた時にセバスチャンは確か
『お嬢様1人で魔力を使うと何があるかわかりません。
いいですね、1人で使ってはいけませんよ』と言ったわけだ」
「覚えておいでではないですか!」
「つまり1人で使わなければいいということは
この部屋にアン!君がいるではないか!だから大丈夫だ!」
「どうしてそうなるんですか!」
さて、今度こそ加護縫いを成功させよう!
アンが落ち着かない様子でこっちを見ている
……もう、爆発させないってば!
「そうっと……そうっと!」
よっしゃ!針に糸が通った!
次に針と布を魔力で動かして……と
ビリィ!
しまった!布が破けた!
「アン!次の布だ!」
「はっはい!」
……そうっと……そうっと……
やっと1針通った……と思ったら今度は針が折れた!?
「アン、針をもう1本だ!」
「はっはい!」
今度こそ……!
それから黙々と魔力で刺繍をし続けた
『母が無事に赤ちゃんを出産できますように』
『母が元気でありますように』
『赤ちゃんが無事産まれてきますように』
思いを込めて1針1針縫い続けた
「お嬢様、そろそろお休みになられた方が……」
「問題ない!今、ちょうど上手くいっているところだ!」
アレだな、アドレナリンが出ている
今、私はノリにのっている!
そして翌朝、徹夜明けで屍になりかけながらヨロヨロと朝食を食べ
母に心配されたが、やり遂げるまで終わるわけにはいかないのだ!
昼までやり続け、なんとか完成までこぎつけた!
完成した足で母の部屋へ向かった
一刻も早くプレゼントしたかったのだ
……そこで見たのは
「マリアンヌ様、加護縫いで御守りを作りました。良かったら貰ってください」
母に綺麗に加護縫いが出来たハンカチをプレゼントしているアルの姿だった
私は思わず自分の作った魔力の込めすぎで歪な刺繍になってしまっているハンカチを隠した
「ありがとう、アルちゃん」
アルのハンカチは綺麗なスミレの刺繍だった
スミレは母の好きな花だ
母は嬉しそうに微笑んだ
……なんだか、モヤモヤする
いつもなら「これ私も作ったんだ!」と出しているのに
今日は出せなかった
トボトボと部屋へ戻るとアンが
「奥様は喜んでくださいましたでしょう?」
と笑顔で聞くからなんだか涙が止まらなくて
「ええ?お嬢様?どうしたんですか?」
その日、初めてアルに嫉妬した




