イアン
俺の名前はイアン・ウィンダム
このウィンダム王国の第2王子……だった
母上からの愛情を一心に浴び、望みはなんでも叶えて来たし、
それが当然だと思っていた
……だから、あの日もチェスで俺に勝ったことのあるアルフォンスを
前々から忌々しく思っていた
その上、英雄ロミオの稽古をうけているらしい
許せない、俺を差し置いてこの豚が!
木の剣で向かい合う、アイツは全然弱っちくてあの英雄ロミオに稽古をつけてもらって
これなのか?と思う反面やっぱり俺は優秀なのだと優越感に浸っていた
それを邪魔したのが、あの○△□だ
言うに事欠いて俺が弱いものいじめをしているだと?
はっ!俺は弱いものいじめなんかしていない。目の前にあるゴミを片付けてるだけだ
は?勝負?3歳児と?……適当に泣かせばいい
そうしたら俺に刃向かってくる気はなくなるだろうとその時はそう考えた
実際は剣は投げてくるわ、砂は目に入るわ、噛まれるわで
それどころでなく本気で叩いた
父上が現れて、俺は俺の無実を訴えた
俺が悪いんじゃない!悪いのは刃向かって来たこいつらだと!
母上なら、「そうか、そうかイアンは優秀なのじゃ」と褒めてくれる
でも、父上から帰って来たのは落胆と冷たい瞳だった
部屋に帰された俺は、何故俺がこんな仕打ちを受けなければならない!と
部屋中のものを壊して回った。壊せば少しはスッキリするかと思ったのに……
全然スッキリしなかった
それから父の命令で牢に連れていかれた
「牢など罪人が入るところではないか!?俺が何をした!!」
勿論、俺は暴れた
でも、近衛兵はビクともせず、俺を牢の中に入れた
これは後で聞いた話だが、この時○△□は死にかけていたらしい
父はもし○△□が死んでいたら俺にも毒薬を与えるつもりだったのだ
牢の中でも俺は暴れ続けた
喉は渇くし腹は減る
それでも暴れ続けた
王子であるこの俺がこんな仕打ちを受けていいわけがない!
そう思ったからだ
そんな時、母上が牢に現れた
これで出してもらえる!と俺は喜んだ
「ああ、イアン、なんという姿に!
待っていなさい。この母が今すぐ出してあげますからね」
「はい、母上」
「牢の中では満足に物も食べれぬでしょう
母が持って来ましたよ。お食べなさい」
「ありがとうございます母上」
「ええ、ええ、可愛いイアン」
そして、母上からの食事を食べた途端、眠気に襲われ
気がついた時には簀巻きでロミオ・フォンタナーに運ばれていた
「離せ!俺を誰だと!」
「はいはい、おっと暴れるな。落とすぞ
今日からお前はアインだからな」
「何がアインだ!俺はイアン!この国の王子でッイタ!」
「口を閉じとかないと舌噛むぞ
まあ、もう遅かったか」
フォンタナー家に連れてこられて
まず違和感を感じた
この屋敷、こんなにデカかったっけ?
それは鏡を見て解決した
鏡の中は2歳の頃の俺がいた
「は?何だよこれは!」
「時戻しの魔法だ
禁術とされているがな今回は使わせてもらった
お前は年下であるアルや○△□に暴力をふるい、あたかも自分が正しいかのようにふるまった
今度はお前が年下になるといい
年下の者にアルや○△□がどのように接するか学べ」
「ふざけるな!こんなこと許されていいはずがない!
そうだ!母上は!母上が黙っているはずがない!」
「王妃様なら何もできやしない
今回の事は王の決定だ
例え王妃様といえど覆す事はできない……覆せば、自分の立場が危うくなるからな」
「そ……そんな」
そんな訳はない
母上ならなんとかしてくれる
それから俺はアインとしてフォンタナー家の面々に紹介された
ただ、マリアンヌだけは体調不良で部屋で臥せっているらしい
俺の姿に顔を青くした○△□とアルフォンスには少し溜飲が下がる思いだったが
俺はなんとしても城に帰ってやる!城に帰りさえすればコイツラなんぞ!
そこからは耐える毎日だった
ロミオのいる間は大人しくしている
下手に逆らうと剣の稽古で笑いながら転ばしてくるのだ
俺が泣こうと御構い無しに稽古は続けられる
ロミオが出ると、俺は暴れた
城へ帰るために
この屋敷のやつはどいつもこいつも鈍感で俺を城に返せと言っても動かない
それどころか、俺が壊したものをさっさと片付けていく
ふざけるな!と片付けているメイドを蹴飛ばすと
執事がやって来て城に馬車を出すという
それでいいんだよ
もっと早くそうしていれば俺だってこんな暴れずにすんだのに
そうそう、城に帰るなら○△□とアルフォンスも連れていかないと
俺がされた仕打ちをこいつらにも味わわせてやる
城に着いて門番に門を開けろと言ったのに門をあけない
それどころか俺をガキあつかいしてくるではないか!
こいつらも母上に言いつけてやる!
母上が現れた時、これで助かるそう思った
でも、母上は俺を……扇で叩いた……
信じられなかった、生まれてこのかた誰にも叩かれたことなんてなかった
ましてやあの母上に叩かれるなんて夢にも思っていなかった
それでも縋る俺を俺だと分からないらしく母上はなおも叩こうとした
それを止めたのはロミオだった……
「……お前は捨てられたんだよ」
そう言ったのはアルフォンスだった
「俺も捨てられたからわかる……お前も一緒だ
このままじゃ、フォンタナー家にもいられなくなるぞ」
こいつと俺が一緒だと!冗談じゃない!俺は!
「ッツ!ふざけるな!俺を誰だと!」
「アインだろ?今のお前はアインなんだよ
さっきの王妃様の反応見ただろ?」
「……そんな……俺は……母上?」
俺はどうすればいいのですか……母上




