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目指せ!悪役令嬢物語!  作者: 真ん中
21/85

刺繍

我が家にやってきたゼリオン様、通称ゼリー婆は母の診察を終えると

我が家の主治医を呼んで何やら話し合いを始めた


私はというとその様子を庭から覗いていた


「おい、マリアンヌ様の具合はどうなんだ?」


「ちょっと待って!今いいとこ!」


踏み台になっているアルが声を上げる

主治医がゼリー婆に何か言っているようだが何を言っているか全然わからない


「俺も見る!次はお前が台になれよ」


「!こんなか弱い令嬢を踏み台にするなんて!」


「自分でか弱いっていうやつはか弱くない!」



「ほうほう、覗き見とはいい趣味だね」


「げ、ゼリー婆」

「ゼゼリオン様」


「母親が心配なのはわかるがね

覗き見は感心しないよ。ほら、そっちの坊の膝なんて泥だらけじゃないか」


「母の具合は!」

「マリアンヌ様の具合は!」


「人の話を聞かないガキンチョだねぇ」

「子どもは元気なのが1番ですからね」


ゼリー婆の隣には我が家の主治医マイルズ先生がいる

マイルズ先生は丸い顔に丸い体のサンタクロースみたいな先生だ

ただ、くれるのは苦い薬と注射となかなか鬼畜だが……


「ここん家のガキンチョはちょっと元気すぎる気もするがね」


「で、母は!?」

「マリアンヌ様の容体は!?」


「妊娠初期に起こる不調ですよ

ただ……」


「ただ……?」


何か深刻な事態なのかと固唾を飲む


「まだはっきりとしたことが分かったわけではないので」


「マイルズ先生!」

「はっきりと!」


ポカッ!ポカッ!


ゼリー婆の持っていた杖で叩かれる


「うるさいよガキンチョ!大人には大人の事情があるんだよ!

ほら、母親のことが心配なら静かにしときな

……ストレスが1番患者に影響するんだ」


?今、ストレスって言った?

ストレスはこの世界の言葉じゃない……


帰りがけのゼリー婆を捕まえて


「ゼリー婆、もちかして前世とかある?」


「あるよ」


「そっか、ないよね普通って……あるの!?」


「お前さんも前世持ちだろう?

そんな不気味な3歳児は普通いないからねぇ」


不気味って……こんな可愛い子を捕まえて


「あのアルってガキンチョもそうかと思ったが違うようだしね

で、わざわざ呼び止めてなんなんだい

母親の容体なら……もう少し待ちな

お前さんが考えているような深刻な状況ではないってことだけは伝えとくよ

それじゃあね」


前世持ちって意外に多い?


とりあえず深刻な状況でないことはアルにも伝えておいた


「じゃあ、あのマイルズ先生の『ただ……』の後は何だったんだ?」


「わかんない!

ところでアル、宿題どこまで進んだ?」


セバスチャンから出された加護縫いの宿題が一向に終わらないのである


「ああ、あれか……縫うだけなら出来るんだよ

でも、セバスチャンがやってたみたいに加護縫いにはならないな

そっちは?」


「針が爆発した」


「……マジか」


「マジです」


初めての宿題だというのに全然終わる気配がない


「○△□ちゃん、アルちゃん、裁縫をしているの?」


部屋から母がこちらを覗いていた


「お母様!」

「マリアンヌ様ご機嫌いかがですか?」


「うふふ、今日はだいぶ楽だわ

ありがとうアルちゃん

2人の話しが聞こえたものだから裁縫なら私も力になれるかもしれないわ

一緒にしてみない?」


話していたのは加護縫いだが母は裁縫の話だと思ったらしい

それでも久しぶりの母との時間だ!アルも私も頷いた!

そして、またいつものように部屋で引きこもっているアインも引っ張り出して

一緒に裁縫をすることになった


「今日は刺繍をしましょう」


「ほら、アルちゃんも、○△□ちゃんも、アインちゃんも好きな色を選んで」


「はっはい!」

「はーい」

「…………」


アルは青色を私は黄色をアインは赤色を選んだ

……見事に信号の色だ……この世界に信号はないけれど


「それじゃ、針に糸を通してね

あら、アルちゃん、アインちゃんも上手ね」


アルとアインはさっさと針に糸を通していく


「○△□ちゃんは針の穴をよく見てみてね」


ぐぬぅ、なかなか入らない


「お絵描きするみたいな気持ちで一針一針刺していくのよ」


それからは黙々と刺繍をした


「奥様、そろそろ休憩されては……

あまり根を詰めるとお体に触ります」


「そうね、みんなどんな風になった?」


「俺は花です」


アルは青い花が刺繍されていた


「まあ素敵!」


「マリアンヌ様に……貰っていただけますか?」


「私に?いいのかしら?ありがとうアルちゃん」


「○△□ちゃんは?」


「ライオン!」


自信満々で母に見せるとビックリした顔をされた


「……これのどこがライオンなんだよ

なんか夢に出てきそうなんだけど……」


「個性的なライオンさんね

アインちゃんは?」


「…………かった」


「?」


「……出来なかった

描きたいものはあるんだ……でも、どうやっていいか分からない」


「そっか

それならアインちゃん、次におばさんに会うときまでに完成させてきてくれる?」


「……俺にはできない」


「そんなことないわ

おばさんも頑張って完成させるから一緒に完成させましょう」


母がアインの手をとって微笑む


「……わかった」


「一緒に頑張ろうね」


「わっ私も!」


「俺も!」


「○△□様、アル様、お2人は私と魔法の練習でございますよ」


「げっ?セバスチャン!」

「しかし、母とだな!」


「ほら、魔法の勉強の時間が来ておりますよ」


「うふふ、行ってらっしゃい」


「……俺も部屋に帰る」


「また来てねアインちゃん」


「……ああ」

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