イアン大暴走!
我が家にきたアインはそれはそれは暴れた
朝食の前に父と私とアルと剣の稽古をし、朝食を食べる
ここまでは父がいるので大人しい
好き嫌いがうるさいがこれはアルも同じだったのであまり気にならない
ただ、父が出かけるとだ……
大暴れを始めるのだ!
「俺を城に返せ!」
「俺を誰だと思っている!」
「こんなものこうしてやる!」
近くにあるものをメイドや執事に投げつける
飾ってある飾ってある花瓶や置物を壊す
片付けようとするメイドを罵倒する
母は相変わらず体調を崩し自分の部屋にいることが多いので
幸い被害にあっていないが、あまりの惨状に私ですら言葉を失った
「……あいつこんなにしといてロミオにバレないとでも思ってるのかな?」
「そこまで考える頭があればこんなことしてないでしょ」
この現状に待った!をかけたのは我らがセバスチャンの息子
我が家の筆頭執事であるジュリアスである
「そんなに城に行きたいなら行っていただきましょう
馬車を用意いたします」
「フン!話のわかる奴がこの屋敷にもいたのか
最初から俺のいうことを聞け!ノロマ!」
ジュリアスの言葉に気を良くしたアインは意気揚々と部屋を出て行った
「城に行くって
これであいつ、この家から出て行ってくれるかな?」
「……ジュリアス、凄く怒ってた
絶対何かあると思う」
ジュリアスは怒ると笑顔になる
普段、無表情なのに怒っていればいるほど笑顔なのだ
ジュリアスを知らない人間は誤解するけれど私は知ってる
今のジュリアスは見たことないくらい怒っている
「オイ!アルフォンスに○△□とやら!
お前達も来い!俺を馬鹿にしやがって母上に突き出してやる!!」
アインの中では私たちが行くことも決定事項のようだ
「どうする?」
「行かないと………うるさいだろ?
それに城にはロミオがいる。いざとなったらなんとかしてくれるはずだ」
馬車に揺られながらガミガミとアインの父の悪口やいかに自分が優れているかを聞かされた
母の悪口なら怒るところだが父の悪口だとなんとなく怒る気にならないから不思議だ
私とアルといえば
アンが淹れてくれたお茶を飲みながら外の景色に意識を持っていていた
馬車にはアインとアルと私とアンがいる
セバスチャンは御者席に御者と共に座っている
城に着くとアインが飛び出した
城門の兵士に騒いでいる
「俺を誰だと思っている!俺はイアンだ!帰ってきたのだ!門を開けよ!!」
「おチビさん、悪いがここは許可がないと通れないんだ」
「親御さんと一緒かな?迷子なら詰所に行こうか?」
「セバスチャンあれは?」
「アイン様には認識齟齬の魔法がかけられています」
「認識齟齬……つまりアインがいても周りにはアインがいないかのように
感じられるってこと?」
「お嬢さま、そんな難しい言葉をどこで?
……今の兵士達にはアイン様がイアン様のように見えることはないのです
似ているとも思っていないでしょうね」
「私達は?」
「私共は屋敷から見ておりますから
屋敷にいる間は認識齟齬の魔法は発動しませんが、こうして外に出ると発動します」
「おチビさん、いい加減にしないとおじさん達も怒るぞ!」
「冗談にしても王族の名前を騙っていいものじゃない!」
「お前達不敬だぞ!俺はイアンだ!!母上に会わせろ!!母上ー!!」
「何事じゃ、騒々しい」
「はっ!イアン様を騙る子どもがおりまして!」
「すぐ、どかしますので、王妃様はお戻りを!」
「イアンを騙る子どもか…門を開けよ!」
「はっ!いえ、しかし!」
「私が開けよと申しておる」
門の前に現れたのは目がキツめな美人だった
「母上!私です!イアンです!!」
「……イアンだと?」
パンッ!
王妃様がアインの顔を扇で打つ
「気安く触れるでない!イアンの名前を騙るなど!
……ああ、イアン……今頃どうしているやら?」
「はっ母上!?何故、打つのですか!?私です!イアンです!!」
「しつこい!鞭を与えねば分からぬのか!!誰かこの不届き者を牢屋へ!!」
そんな時、父が現れた
「お待ちください、王妃様
この者は我がフォンタナー家のアイン様に御座います
何分にも幼いもので自分をイアン様だと思い込んだ次第に御座います
どうか、寛大な処置を」
「ロミオ・フォンタナーか……そなたに息子などおったか……?」
「お恥ずかしながら……子どものしたこととはいえ責は私にあります」
「……もうよい……疲れた……」
王妃様はそれだけ言うと城の中へ帰っていった
「母上……何故ですか……?」
「セバスチャン、○△□達を屋敷へ連れて帰ってくれ」
「はい、旦那様」
父が去ってもアインは門の前に座り込んだままだった
「アイン様、帰りましょう」
「いやだ……母上……」
「……お前は捨てられたんだよ」
「……アル?」
「俺も捨てられたからわかる……お前も一緒だ
このままじゃ、フォンタナー家にもいられなくなるぞ」
「ッツ!ふざけるな!俺を誰だと!」
「アインだろ?今のお前はアインなんだよ
さっきの王妃様の反応見ただろ?」
「……そんな……俺は……母上?」
帰りの馬車は重苦しい雰囲気に包まれていた
帰ってきてからは行くまでの暴れっぷりが嘘のようにアインは部屋に篭ってしまった
そして、アルもなんだか落ち込んで部屋に帰っていった
アインを懲らしめたかったが、今日起こった出来事はなんだか違う気がする
私は胸にモヤモヤしたものを抱えながら部屋に帰っていった




