第三十二話
残業なんてなくなれば良いんです……。
さて、気を取り直して
初の別視点、はっじまっるよー!
稚拙すぎるよぅ(遠い目
ここ最近、驚いてばかりだと自分でも思う。ある程度は慣れたつもりなのだが、私もまだまだということなんだろうか。
完全にルーナリアの興味に付き合う形になってしまったが、正直私も興奮を抑えることが出来ないようだ。
むしろこの状況に於いて興奮しない生物なんているものなら逆に聞きたい、異世界から来たとは言え、彼は世界最強。もちろんその実力をこの目で嫌という程に見てしまっているので今では一切疑っていない。
いや、疑えない。
初めは頭がおかしいのか、酒を飲み過ぎて記憶が無くなっているただの阿呆な若者だと思っていた。
だってそうだろう? 終わった後とは言えども、私は魔人と殺し合いをしていたのだ。冒険者ギルドからはなるべく森には近寄らないように、と注意喚起を発令していたはずだし、ただでさえ危険度Aランクの森。しかも森の最深部だ。
どれだけ酔っぱらった阿呆でも近寄らないだろう。というか森に足を踏み入れた時点でお陀仏だ。
さらに驚いたのは戦闘中だったとは言え、接近に気付かないレベルの気配を絶つ上手さ。自慢のようではあるが、魔力感知には自信があった。本音で言うと実力にも自信があった。周りも認めてくれていたし悪い気分ではなかった。
ギルドで言い寄ってくる男たちにはイライラしたが。
む、話が逸れたな。ヴァンの接近にやっと気付いた私は驚きをなんとか隠して何か用か、と伺ってみたんだ。すると彼は何も言わず、ずーっと私の顔を見ていたな。
魔人の返り血でも付着していたのかと思ったが違うようだった。なんでかよくわからないが謝罪された。今でもよくわからないな。
む、そういえばあの頃はまだ、人間に近い『魔人』を殺すのに抵抗があったが情けない顔はしていなかっただろうか……。
また話がずれたな。
ヴァンはその後に挨拶してきたんだ。暗い森の中で。律儀にもフルネームで。笑いそうだったぞ、あれは。
しかしそんなことも吹き飛ぶ内容を話してきたので、耳を疑ったんだ。
「気付いたらこの森に居た、どこだかすらわかってないんだ」と。いや、もう意味がわからない。
でもここで怒ってはいけない、もしかすると空気を和ませるためにわざとかもしれないと疑い、まずは同じように名前を伝えた。自分だけ教えないのは失礼だしな。そして苦笑いをしつつ子供を諭すように、冒険者だと身分を明かし、ゼイレクアの森だと教えてやった。
今度はヴァンが驚いていたな、確か。今となってはそりゃそうだ、と言えるが当時は違う。なんて言っても『ヘレビオンサ大陸』などと聞いたことのない大陸名を言ってきたからだ。からかってるのかと怒りそうだった。
次に言った冗談は『異世界から来た』だぞ。此処まで役に徹されると逆に乗るしかないだろう?
これが初めての出会いだ。ロマンも何もないな。
街に着いてからは信じるしか無くなった。冒険者ギルドを知らないし、はしゃぐし、ギルドカード壊すし。ランクはDからだったし意味がわからん。
ヴァンは規格外にも程がある。でもわかったことは、ギルドカードと言うものは最後に魔力を通す。これで世界に一枚だけのカードが出来上がり、二枚目は作れない仕様になっている。冒険者でないのは確実だった。
いつも眠たげなほんわかしたリリンのあんな顔は初めて見たしな。
その後は魔法の確認もしたのだが魔法使えないとか言っていたし私の知ってる人間とは違うんだろうな、うむ。この世界には今の所、魔法を使えない者はいないんだ。才能は別としてだが。
この時点で一生の半分くらいは驚いていたんだが、こんなのは序の口だった。
なんなのだ、あの『魔導書』とは。世の中に数える程度しか存在しない固有魔法と似たようなモノと彼は言っていたが、そんな可愛いものじゃないのは確かだ。
それから『使い魔召喚』だな。ここで初めて頭上でぷるぷるしっぱなしのクリムに出会うのだが、これを機に言っておこう。
頭から降ろして両手で抱え、胸元にギュッと抱く。
「……クリム。初めて出会った時なんだが、最弱の使い魔だと言ってすまなかった。あの時の自分を恥じている、許してくれるか?」
ピクっと反応し触手を伸ばすクリム。そのまま私の頭まで伸ばし、トントン、と叩いた。気にするなということなんだろうか?
「ありがとう」
おそらく許してくれた腕の中でぷるぷる震えるクリム。ふふ。愛らしいやつだ。
そういえばこのクリムも謎だらけだな。ヘタをするとヴァンよりも謎めいていると言っても過言ではないだろう。
この時にはもう殆ど『異世界人』であることを疑っていないんだが、もう一つ。『世界最強だった』という言葉までも信じることになったんだ。
Sランク下位に位置する魔物、ベヒモス。ギリギリ私でも倒せるかな、と言う魔物なので受けた依頼なんだが、到着すると私は戦慄した。
本来のベヒモスは堅牢な皮膚に包まれているが、鈍足なのだ。さらには温厚な性格で、草食系動物のような魔物なんだが、見てみると魔人化していた。ゆったりと寛いでいたので一瞬、その隙に逃げようかと思った程に恐怖したんだ。
でもヴァンは逃げるつもりもなさそうだった。自分を奮い立たせ、助太刀はいるか、なんて聞いてしまったが私程度では殺されるのがオチだ。
ヴァンは「あれくらいなら要らない」と言っていたのだが、正直、一方的に蹂躙させるかと思い、危なかったら一目散に連れ帰ろうと思惑していた。ちょっと力が入りすぎて渡されたクリムを押し潰しそうだったな、これもすまん……。
ヴァンが武器を発動し、凄まじい闘気を纏った瞬間、魔人からも殺気が溢れ汗が止まらなかった。目の前に居る二人は自分と次元が違うところに存在していると認識した。
魔力で発動する武器なんてものは魔王クラスの魔力量、精度、練度でしか顕現出来ないと言われる、伝説の魔法『魔装』を軽々しく操ってみせた。
それを形状の違う二つも具現化してみせたんだ、開いた口が塞がらなかったぞ、うん。
もちろん一方的だったのはヴァンだ。今ならわかる、あの時の力は一割にも満たないだろう。頼もしい相棒だな。
それからも弟子入りしたり、エンシェントドラゴンと戦ったりと、たかだか数ヶ月の付き合いだが、私はヴァンに頼りすぎているのかもしれん。昔はこんな性格じゃなかったのだが……。
そして極めつけは昨日だ。魔王が三体集まるようなちょっとのことでは驚かなくなった私だったんだが、ヴァンの口から語られた真実。
出会ってから今日という日まで、一度たりとも寂しそうな表情を見せず、泣き言も吐かず、私を育ててくれ、一緒に居続けてくれた相棒から聞いてしまった悲しき人生。
よく考えればヒントは幾つもあった。彼の口からは『元の世界に帰りたい』なんて聞いたことがない。家族の話も聞いたことがない。
どうして気付かなかったんだろう。どうして私は頼ってばかりなんだろう。悔しくて悲しくて情けなくて。ヴァンの目を見ていることしか出来なかった。
淡々と語る内容は非常に辛い出来事だった。八歳。わずか八歳で家族を失っている。さらには目の前で、残酷な殺害方法で。
満足に飲めず、食べられず、魔法も使えず、それでもひたすら力を求めた、と言ってみせるが、果たして私に同じことが出来るのだろうか?
生きていれば、隠し事なんてザラだ。もちろん私にもヴァンに隠していることがある。それは少し前までの出来事。封印していた記憶だが、私なんかよりも暗く、死にたくなるような内容を全て打ち明けてくれたヴァンに――相棒に隠していて良いんだろうか。
辛いのは自分なのに、泣いてしまう弱い私を優しく撫でてくれるヴァンに隠して良いのか。こんなんじゃダメだ。近いうちにきっと……。
ふとヴァンとの出会いや出来事を思い返していたが、そろそろ始まりそうな雰囲気だ。やはりどうしても前のめりになってしまうな。
もう家族と言っても間違いではない程に仲良くなった隣の魔王、エリスも
チラッと見た所、興奮気味だった。
何と言っても昨日出会った魔王二体。一人はアルバリオと言う男性。もう一人はレティと言う女性。魔王と最強の相棒の実戦なんだ、興奮しない方がおかしいだろう?
む、ルゥちゃん? 私とリリンでお話したからな、かなりヘロヘロだと思うぞ。
それにしても見れば見る程に思う。レティは女性の自分から見ても綺麗だ。王冠のような威厳を持つ金髪に美しい碧眼。人形のような整った容貌に、艶やかさまでも。スタイルも良いし魔王なので強いだろうし、もしかするとヴァンの隣にふさわしいのはレティなんじゃ……む? いかんな。よくわからんが胸がモヤモヤする。
久しぶりに馬車で度をしていた疲れだろうか、原因がよくわからないがそれは放っておこう。人生でもう二度と見ることが叶わないだろう模擬戦に集中しようか。
――ヴァン。私は強くなるぞ。君の隣に居ても恥ずかしくないくらいに。もっともっと私のことを頼ってくれるくらいに。ふふ、楽しみにしててくれよ? 私の認めた最強の相棒殿。
あれ、どれだけ推敲しても残念すぎる……。
いつか文章力が伸びたらきっと、きっと手直しをするんだ……!(白目




