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紫光の魔導書  作者: しぇりー
――第一章―― 初召喚と初戦闘と訓練と白龍
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第二十話


 連戦に次ぐ連戦。休む暇もなく徹底的に絞られること約二週間程。毎日朝から晩まで強化を施された凶悪な魔物たちと戦い続け、クレアは全身に『細胞強化』を纏える程にまで成長した。連日の身体強化や細胞強化の酷似により、クレアが保有する魔力総量は実に禁忌級魔法を何十発も連続で使用出来るレベル。練度や精度も相当な飛躍を見せている。


 クレアが訓練中の間、ヴァンはクリムの生態について調べてみたが、未だに不鮮明な所が多すぎる。間違いないのは、ずば抜けた『学習能力』であり、食事である魔力から魔法を覚えるようだ。

 現に考えてみると魔力を吸収した人物は四人。ヴァンはもちろん、クレア、魔人ベヒモス、ルーナリアもいる。


 おそらくヴァンの魔力を吸収した結果、完璧ではないが鉤爪や翼などの『創造』が出来るようになり、クレアの魔力からは『火、水、雷、闇、無』の五属性魔法。ベヒモスが使用した魔法黒災炎(フレイムディザスター)は性質を確認すると『混合魔法』で、最後のルーナリアは種族がエルフ。従って独自の魔法である『精霊魔法』が使用可能となっているデタラメな強さだ。

 さらに魔力総量はスライムの特性上、大気中に漂う魔力を自動で吸収する他、ヴァンやクレアの魔力を異常な程に食べているので底が見えない。


 此処までは調べてみて判明したのだが、やはりどんなスライムなのかはわからなかった。正直どんな種族であっても『クリム』に変わりはないため気にしないが。





 当初予定していた『底力』の底上げは完了し、残った時間で技術面の向上をヴァンとの模擬戦闘で昇華させた。


「よし、エンシェント討伐は明日。最後に全力をぶつけてきな」

「今日こそは君から参ったと言わせてみせる」


 クリムは巻き込まれないように頭上から降り、離れた所で観戦だ。


 二人は十メートル程距離を開け、戦闘のために準備する。クレアは白銀の鎧に黄金の剣。対してヴァンは――



「来い。――『不敗乃光剣(クラウソラス)』、『悪魔王乃左腕(ディアボロス)』」



 ざあっと風が吹き、両腕に紫光が絡みつく。ベヒモス戦以降、久しぶりに発現したヴァンの得物。


 右腕には紫光の魔力が螺旋状に絡みつき、二メートルを超える重厚長大な大剣が形を成し、左腕には右腕と同様、紫光の魔力が肩口から指先まで全てに絡み、腕全体を覆う赤黒い重厚な篭手と化した。


「む、装備するなんて本気だな」

「どこまでクレアが出来るようになったか見極めなきゃいけないしな!」


 それっきりお互いが口を塞ぎ、静寂が包む。クレアがスッと右足を一歩引き、腰を軽く落とした。

 以前とはまるで違う威圧感をヴァンはその身に受け、不思議と高揚感が湧いてくる。


 仕掛けたのはクレアだ。細胞強化を全身に淀みなく発動した状態の踏み込みは、大地を一部吹き飛ばし、常人には捉えられない速度で切り込んでくる。


 ヴァンは左腕を前に突き出すと渾身の斬り下しを篭手で受けきる。しかし凄まじい速度で振り下ろされた剣閃を受けると、ぶつかりあった余波だろうか、二人を中心に三百六十度へ衝撃が飛び、地面が捲り上がってしまった。


 さらにクレアが追撃。鋭い剣閃に風が舞い上がるが、突かれれば体を捻り、頭を狙われれば屈んで回避し、足元を狙われれば跳躍して、とヴァンはすべて捌き切る。


 全てが躱されるとは思ってなかったのか、クレアは一瞬だけ表情を驚愕に染めるがすぐさま後ろへと距離を取ると――





 姿が消えた。





「――後ろかッ」


 本能に従い、後ろと判断。すぐさま翻すとそこには横薙に剣を振るっている姿が見えた。慌てずに右の大剣をぶつけて防ぐ。数瞬だけ鍔迫り合いの形になるも、フッとヴァンが力を抜いた。


「な……ッ」


 力を抜くとクレアの重心が前屈みになり、隙が出来た胴体を『身体強化』の状態で蹴り上げる。軽いクレアの体は十メートル程度空中に放り出されてしまう。


 空中で重心を取り直し、クレアが着地。追撃が無かったため、ダメージは無い。が、


「――『神劔(シヴァ)』」


 着地のタイミングと同時にヴァンが魔導書(グリモア)を発動する。


 クレアの周りを紫光が包む。


 光が開けると、一つ一つが凄まじい魔力を孕む、無数の光剣が四方八方を包囲していた。


「ん、降参するか?」

「まだ始まったばかりだろうに」


 口角を上げながら問うヴァンに対し、まだまだ余裕とばかりに返答するクレア。


 ヴァンが左の拳をグッと握ると、残像を残すほどの速度で無数の光剣が飛来し、大量の砂煙が辺りを包んだ。

 それと同時にクレアから膨大な魔力が膨れ上がり、ヴァンは身構える。


「『復讐の鎧(ネメシスアーマー)』!」


 呟くように、しかししっかりと耳朶に響く声色でクレアが魔法を発動すると、無数の光剣はクレアへと吸収され、傷一つない状態で現れた。


「マジか」


 何でも創造することの出来る魔導書(グリモア)は、あくまでもヴァン本人の魔力を媒体とし、魔導書が現象を発動している。先程クレアが発動した魔法は手応えからして『魔力そのものを吸収』してしまうものだろう。

 おそらく吸収出来る範疇を超えた魔力はそのまま当たってしまうだろうが、効率的ではない。


「おらッ」


 そうと分かれば魔力を無駄遣いしないためにも接近戦が好ましい。距離を縮めるために不敗乃光剣(クラウソラス)を切り上げ、衝撃波を飛ばす。

 飛ばしたと同時に衝撃波で身を隠しながらクレアへと接近する。


「はあああッ」

「あららら……」


 ヴァンの予想通りとはならず、避けるかと思いきや黄金の剣を思い切り振るうと、衝撃波に衝撃波を当てて相殺された。


 振り切った状態のクレアへ爆発的な速度と共に肉薄し、直接薙ぎ払う。対してクレアは鋭い踏み込みで砂塵を巻き上げながらバックステップ。

 クレアの細胞強化によって飛躍している反射神経でも完璧に回避することは叶わなかったが、鎧に傷を付けるだけに終わった。


 さらにヴァンは接近し、左腕の篭手に『部分強化』を纏わせ殴りつける。風を切りながら迫る拳に驚愕するも、クレアは冷静に剣で去なすが、


「……しまった」


 それはヴァンが仕掛けた囮であり、本命は首元にちらつかせている不敗乃光剣(クラウソラス)だった。


「ま、今日のところはこんなもんかな」


 満足気に魔導書を解除するヴァンとは対照的に、クレアは心なしか落胆している様子だ。


「遂に一太刀も浴びせられなかった……」


 口に出すとクレアは唇を尖らせ、むくれる。大人びている彼女が、唯一年相応の態度になる瞬間だ。


「大丈夫、魔人ベヒモスくらいならクレア一人で片せるレベルに成ってるから」

「本当か!?」


 そう言ってヴァンは頭を撫でてやる。

 クレアは嬉しそうに目を細めていた。







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