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紫光の魔導書  作者: しぇりー
――第一章―― 初召喚と初戦闘と訓練と白龍
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第十話


「それで、だ。ヴァンにクレアで間違いないな?」


 確かめるようにルーナリアはヴァンとクレアの名前を呼ぶ。それに二人は首肯で答えた。最後に目線がクリムに向いた気がする。


「頭の上にいる大人しいのはレッドスライムか? 何か色の濃さとかが違う感じだが」

「確証はないですけどね。俺の使い魔、クリムです」


 感心したように頷き、クリムに向け柔和な笑みを浮かべた。呼応したのだろうか、クリムは身体をびよんと伸ばし、そのままお辞儀するように曲げた。満足したのだろうか、元の球体へ戻る。


「めちゃくちゃ賢いスライムだな……。それにしても最近の召喚者は、スライム等の低級であれば破棄が基本となりつつあるが……」


 ルーナリアが言った通り、スライムやゴブリン等の低級魔物が使い魔として召喚されれば、如何に主人の魔力を吸収するとしても強さに限界がある。主人をサポートするのが使い魔の本分なので、破棄することが多い。悲しいが仕方ないのだろう。


「ギルドマスター、私も同行したのは何故だろうか?」


 クレアが問う。


「おお、すまんな。二人を呼んだのはもちろん理由がある。前代未聞の最短記録でBランクへ昇格したヴァン。それに全ギルドの中でも上位と謳われるクレア。どうだ、パーティー組まないか?」

「パーティー……か?」


 再度クレアが聞き返す。ルーナリアはうむ、と頷きながら値踏みするかのようにヴァンとクレアを交互に見つめる。一旦目を逸らし、またすぐに見つめる。何度か繰り返し、溜め息を吐く。腹を括ったようだ。


「正直に話すとな、今後、ランクの基準が変わる」

「具体的に言いますとぉ、査定が厳しくなりますよお」

「あっ、勝手に言うんじゃない!」


 見かねたリリンが助け舟を出したのだろうか。ごめんなさいー、と謝りながらチロっと舌を出し、ルーナリアへウインクをしていた。


「今の基準はな、失礼だが『雑』だ。Sランクでも実質Aランクより弱い連中がごろごろ存在する。早急に見直さなければ、その内死者が出る事態になりかねん」


 ルーナリアは目を伏せ、静かに告げる。


「む、それと私たちパーティー云々に何の関係が?」

「最強のパーティーとして実力で先導して欲しい」


 吹っ切れたかのように、毅然と言った。


 最強のSランクを登場させ、基準を作る。そして冒険者の現ランクを見直す。大義名分が出来てしまえば、力のない者を楽に間引き出来るということだろう。要するに目立てって所か。


「俺は良いですけど……」


 ヴァンには特に目標がない。強いて言えば、クレアへの恩返し。次に楽しく生きる、程度のものだがクレアはどうだろうか、と思い言い淀んでしまう。


「私は最初からそうするつもりだったぞ?」

「あらあ? 今までに誰とも組んだことのないクレアさんがですかあ?」


 リリンのちょっかいに顔を赤くするクレア。反論できないようで、俯きながら無視を貫いている。


「はは、それなら話が早い」

「でも俺、まだBですよ?」


 ルーナリアはなんでもないかのように。


「大丈夫だ、軽くエンシェントドラゴン倒してくるだけでいいぞ」


 等と無理難題を吹っかけてくる。

 思わずヴァンとクレアは目を合わせてしまった。


「ランクは?」

「もちろんSだ」

「それをやらないと俺の昇格は?」

「もちろんなしだ」

「マジか」


 ヴァンが慌てて聞くも、ルーナリアは飄々と言って除けた。

 ドラゴンに勝利することで審査や手続きなしの問答無用にSランク付与する、それに堂々と実力を宣伝出来るからだろう。


「それに、な……。実はもうギルドカード、更新準備できているんだ」


 やけに神妙な面持ちで、自分勝手なことを言い放った。


「そうだ、リリン」

「持ってますよお。はい、ヴァンさん、クレアさん」


 リリンがいつの間にか手元に二枚のカードを準備していて、それをヴァンとクレアに手渡す。真っ黒なカードは金属製で厚さは薄め。ギルドカードと同程度のサイズだが、黒いだけで何も記載がない。


「これは……?」


 クレアが首を傾げ、頬に指を当てて呟いた。


「新しいギルドカードだ。世界初の持ち主だぞ! そこに血を一滴垂らしてみてくれ」

「お二人の個人情報は以前記載して頂いたものを引用済みですー」


 腰に手を当て、自慢げにルーナリアがにしし、と笑顔で言った。

 横に居るリリンがタイミングよくナイフを取り出し、ヴァンに渡す。

 今までのギルドカードは魔力を流し、氏名、年齢、得意魔法や得意武器等をインプット、さらに身分証明となる便利なモノ。ただし、相手に一旦渡し、情報を読み取って貰う必要があったのが玉に瑕だ。新しいカードは何が違うのだろうか。


「おおっ」


 言われた通りカードの表面へ血を垂らすと、個人情報が淡い青色の文字となって浮かび上がる。氏名、年齢は変わらず表記されている。さらに血液から読み取るのだろうか、種族も記載が増えている。


「む、ランクや初回に記載した得意魔法、得意武器の記載が無くなっているぞ?」


 確かにクレアが言う通り、記載があるのはそれだけだった。これではギルドカードの意味がない気がする。


「ランク、魔法、武器は念じれば表記されるよう改良されてますよー。さらに消えろー、と念じれば最初のように黒いカードへ戻りますー。そしてですねー、新しいカードは、戻れーって念じれば消えますし、出ろーって念じれば自動で出てきますー」


 身振り手振り付きでリリンに言われ、念じてみると登録した情報がすべて表記される。


「む、すごいな、便利だぞこれは」


 隣でクレアが感心したように何度も頷いている。何度も出したり消したりと確かめているようだ。


「んん、裏面の『0』とは?」

「おお、そこにも気づいたか! それは自分にしか見えない、使えない金庫のようなものだ。ギルドに貯金すればいつでも預けている分を引き出すことが出来る」


 良くぞ気づいた、とばかりにクレアを指差し、子供のようにルーナリアがはしゃいでいる。


「おい。なんだこれは」

「む、ヴァン、どうした?」


 訝しげにルーナリアを見ているヴァンが聞く。

 不思議そうなクレアがヴァンのカードを覗き見た。


「あ」

「なんでもう『S』ランクなんだよ」

「しまった、バレちゃった」


 目を見開き絶句するクレア。小さきギルドマスターはやっちまったとばかりに金髪をポリポリと掻いた。しかも黒のカードはSランク専用とまで暴露してくださった。


 どうやら最強Sランクを目指すこととドラゴン狩りは確定事項だったらしい。

 ヴァンは大きく溜め息を吐いた。




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