秋・誰?
フィラは、机から降りた少女を見る。
制服を着崩している。リボンは無くなっていて、スカートの丈が短い。足が沢山出ている。
「あ、あの…」
「さっきさ、やばかったじゃん」
「え?」
フィラは、少女に詰められてたじろいでいる。
「あたし、サクリ。サクリ・リュンカ」
「えっと、フィラ・セグレタ、です」
「セグレタ?」
「え、うん…」
「ふーん」
サクリという少女はフィラの顔を見つめる。フィラは何か居た堪れない気持ちになり目を逸らす。
「うわ……やましい何かあんの」
「ないし!」
「へぇー逸らした理由は?」
「人とあんまり目合わせないから」
サクリは適当な相槌をうち窓の外を見る。
机の上に乗ったり、言葉遣いが少し荒い。貴族には見えない。
「えっと……用がないならわたし、帰るから」
「おー、どこ行く感じ?」
「……アルバイト」
「へぇ!バイトって楽しい?」
「……楽しいよ」
サクリは机にかけてあったフィラの鞄を取る。フィラはそれを取り返そうとするが、机に立たれ取れない。
「返して!」
「えー。取り返してみなよ。貴族嫌いでしょ?」
「何か関係あるの⁉」
「嫌いな貴族から鞄を取り返してみなよ。上下関係をひっくり返してみなよ!」
「アルバイト遅れちゃうから!!返して!」
サクリは机を移動してフィラに鞄が行かないようにしている。動きは軽やかた。何か、見えない相手と踊っているようにも見える。
一方フィラはサクリから鞄を返してもらおうと必死だ。飛び上がっても、サクリはその間に隣の机に移っている。
「か、返して……」
「へぇー、可哀想に。仕方ない!返してしんぜよう!」
「どこのお国の言葉……」
フィラの鞄はサクリの手から離され、ボスっと言う音が響いた。フィラは鞄を回収し、サクリの方を見てから教室を出て行った。
♧♧♧
「もうっ!なんだったの!」
フィラはプンスカ怒りながら品出しをしていた。鞄の中身は無事だったが割れ物が入っていたらどうするつもりだったのだろう。
「フィラちゃーん。ごめん。ちょっとレース出してちょーだい」
「はーい」
マスターに言われ、フィラはレースの入った箱をマスターの方に持っていく。
この王国ではアルバイトを始める年齢は特に明確には決まっていないが、十五歳からの雰囲気が流れている。
そのため、フィラ自身が表に立ってレジ打ちをすることは無い。表に立ち、声を掛けられたらマスターの姪っ子という事にしてお店をあくまで手伝っている事にしている。
「マスターさん。どーぞ」
「うん。助かった!」
マスターはフィラからレースの箱を受け取るとそのままお店の方に戻っていく。
フィラはレースを頼んだお客さんのことが気になった。レースといえば上流階級、つまり貴族でもかなり貴族階級が高い人が買うイメージなのだ。もしかしたら、顧客になってくれるかも、と考えフィラはチョコンと少しだけお店を見た。
(……うわ!)
マスターがレジを売っている相手はフィラの鞄で遊んでいた相手、サクリだった。
(あの子……結構いい所のお貴族様なんだ…)
フィラのイメージのサクリは完全に変な人だ。鞄を振り回し、「ですわ」みたいな貴族の令嬢の言葉も使わない。
フィラがサクリをまじまじ眺めているとサクリと目が合った。
(!まずいっ)
フィラは大慌てでお店の裏に戻った。
(バレてないように……バレませんように!)
フィラは箱を元の場所に戻しながら、お店の方をチラチラ見る。今日はシルクはお休みだ。そのため、探りを入れてもらうこともできない。
「フィラちゃん、お客さんから落し物を渡したいって」
「え!?」
フィラは出来たら行きたくなかったが、もしかしたら本当に落し物をした可能性があるので考えた末行くことにした。
「は、はい…うぅ」
「なーにその呻き声。マジウケる」
やはりお客さんとはサクリの事だった。チャラチャラとしている。片手には何かを持っている。
「あ、あの……落し物って」
「え、無い」
「出てくるんじゃなかったぁ……」
「やっぱりここかぁ。あんたもあれ?アイツの婚約者候補になりたいの?」
「婚約者の候補?何それ」
「え、婚約者知らないの……。まいっか」
サクリは両手に大量の荷物を持っている。全部お店で売っているものだ。
「……お買上げありがとうございます」
「あ、はいはーい」
サクリはフィラの方をやはりジロジロと見る。フィラは睨み返す事にした。逸らしても、目が合い続けるのも嫌なのだ。
「見込んだとーり」
「は?」
「じゃ、まったねー。フィラお嬢ちゃん」
「何その言い方!馬鹿にしてるでしょ!」
「えー、じゃーねフィラ」
サクリはそれだけを告げるとお店から軽い足取りで出て行った。
「……なんだったの!」




