十九歳・男子会
「…本当にいい度胸してますよね。私、家に帰れてないんですよ?」
「いいだろ。お前だって家が嫌いなんだからさ」
レオとマリノはとある居酒屋に来ていた。レオがマリノを呼びつけたのだ。文句を言いながら来てくれる辺りが優しい。
「で、お前はどーせ夕飯食ってないだろ?俺もさ、しばらく減量してたからさ解禁祝い」
「何故減量…。騎士団でしょう?」
「脂肪を落として筋肉率を上げるー、みたいな?」
「一生分からない考えですね」
マリノはレオの向かいに腰を下ろした。レオが既に色々頼んでいたようた。色々な品が置かれてある。パンとチーズ、ワインが置いてあった。
「てか、お前家族と別居中って聞いたけどマジ?」
「どこで手に入れたんですか…まぁそうですけど」
「へぇ。別邸?」
「えぇ」
マリノは目の前にあるチーズを少し摘む。レオはウィスキーやソーセージ、煮込み料理を頼んでいる。
「で?フィラちゃんとはどうよ」
「たまに会ってはいますよ」
「へぇ。プロポーズはいつ?」
ふい、とマリノは分かりやすく反応した。これを見るにまだ行っていないようだ。
フィラといえば最近は酒屋でアルバイト中らしい。レオが先輩に連れてかた店に居たため二人して驚いた。先輩には彼女かぁ?とからかわれたが全力で拒否しておいた。あそこではいなんて言ったら今日マリノに殺されかけていたはずだ。
「まだなんだ…へぇ。いつやるんだよ」
「……そのうち」
「女のプロに任せろ!」
「頼んでません」
レオが頼んだウィスキーがやってきた。氷を大量に入れてウィスキーを注いでいる。
この王国では十九歳からが成人だ。お酒も煙草も十九歳から許可されている。レオはお酒の中でウィスキーがお気に入りのようだ。
「はぁ、貴方こそサクリさんの家からお見合い話が来てるそうですね」
「は!?なんで知ってんだよ!」
「社交界の情報通が同僚なので」
「……いやぁ、ちょっと悩んでる」
「意外ですね。断ってるかと」
「…まぁ、サクリならいいかもなぁ…とか思った事はあるからな」
サクリの家とレオの家は母親同士がライバル関係であったらしい。そのため、幼い頃からレオとサクリは面識があった。仲はさほど良くなかった。
「お前ワインとか飲む?」
「飲みますよ」
「お酌してあげましょー。ほら、出せ」
「それはどうも」
マリノは大人しくレオの方にグラスを傾ける。レオのお酌の方法は大胆だ。思わずマリノが引いてしまうほどに。
「はぁぁ、てかマジで親父がウザイ」
「そうですか」
「結婚しろしろってうるせぇんだよ。勝手にするからほっとけって感じだな」
「へぇ…」
「……お前興味ねぇだろ」
マリノは少し考えた後にこりと微笑んだ。世の女性を虜にしそうな笑みだ。
「当たり前でしょう?何故大して気にする相手ではない奴に時間を割く必要が?」
この男は、笑みを浮かべてそんなことを言い放つ。
もとより、マリノという人間は愛想がそこまで良くない。適切な対応をしてなるべく静かに場を収めるタイプだ。だが、たった一人の女の子相手にはそういかなかった。レオから見ても分かりやすかったのだ。
「親友に興味もてよぉ友よぉ」
「いつから親友とやらになったんですか」
「今、今だろ」
「…はぁ」
マリノはため息をついてワインに口をつけている。それもまた様になる。
一方レオはウィスキーを飲んでいる。そろそろ酔いそうだが、レオはお酒が強い。まだ酔う気配がない。
「てか、お前それ辛くないのか?」
「なにが」
「言葉綺麗にして、誰にでもニコニコしてんの」
愛想がよくないのは一時期だけだった。それも、中等部の中盤まで。後半からは無駄に愛想が良くなった。
それは、彼の立場にある。精神感応術筆頭とは常に平等の扱いをしなければならない。等しく感情を振りまくというのは難しい。
レオもちょっとした遊びのつもりでやってみたがやはり感情を等しくするのは難しかった。
マリノも、それは難しかった。
元々、遺伝が強い魔術なのに才能もないが目指そうとしたのだ。ここで無理で諦めるべきだったが成功させた。感情を等しくするのは無理、だったら誰にでも笑顔を振りまけばいいのか、と謎に結論つけ実行したらあの地位を手に入れてしまったのだ。
(……こいつも変人つうか……異常者だよな)
レオはなんとなく目の前でワインを傾けているマリノを見る。つるみ始めて何年か経つが未だにこうして交流があるのが謎だ。
「あー!!もう一件!!行くぞ!」
「は?今から私仕事ですが」
「何時まで仕事なんだよ!とにかく行くぞ!お前の話も聞いてねぇし」
「面白くないですよ」
「フィラちゃんの話なら絶対に面白い」
「フィラを引き合いに出さないでください…」
イラついた。ただただ、恋人を作り愛でているこの男にひたすらイラついたのだ。
♧♧♧
「あー、マジで女って腹立つ」
レオはウィスキーを飲みすぎて絶賛酔っ払っていた。そして、口を開けば愚痴しか出てこない。上の階の先輩が煩い、隣が女連れ込んでる、食堂のおっちゃんの料理上手すぎて太ったなどだ。マリノは完全に諦めてワインを傾けている。
「…帰りませんか」
「は?帰らねぇけど」
レオは完全に不貞腐れている。今は日勤らしいが来月からは夜勤の徘徊になるらしい。上司からの直々の命だ。
「いいなぁ、お前はさ。可愛い彼女がいてさ、愛されてるんだろ?」
「さぁ?」
「うわ…一種の惚気かよ…腹立つわぁぁ」
うわーとレオはバンバン机を叩き出した。マリノは今夜は長いと諦め、今日の仕事は明日の自分に頑張ってもらおうと決意した。




